表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王なんですが実は、隣にいます。  作者: 夕凪
第一章 消えた魔王とはじめての仲間
8/22

ギルドからの依頼Ⅱ

俺達は更に洞窟の深部を目指す。

リュカによると魔法の反応が近付きつつあるとのことだ。

つまり、魔法鉱石の発掘場が近いという事だろう。

それと同時にリザードも数多く出てくるのは間違いない。

単体としては弱くとも、一斉に襲われるようなことがあると危険だ。

おまけに今は単独行動ではない。リュカを守りつつ、慎重に歩みを進めなくては。


「……で、何でこうなっている?」

「躓いて転んだはずみで…てへっ」


今まさにリザードの群れに取り囲まれている。

リュカは本当に大した魔術師だ。敵を纏めておびき寄せる魔法まで使うとはな。

それどころか、彼女はペロっと舌を出して俺に向けて左目でウインクをしてみせた。このやろう。

…さてと、どうしたものかな。


「私に考えがあります!」


リュカは何かを閃いたらしく、こちらに提案をしてきた。


「よし、分かった。俺は何をすればいい?」

「少しだけ時間を稼いでもらえればっ!」


そう言い終わると彼女は詠唱を開始した。

まさか、魔法攻撃でもするつもりか?あいつは一体何を考えている。

しかしながら少々不安ではあるが、ここは背に腹は変えられない状況だ。

こうなれば出たとこ勝負だ、お嬢様のご注文に応えてみようか。


「ほら、こっちだ!」


俺は僅かに空いていた突破口を強引に開くと、そのままリザードの群れを挑発し注意を引きつける。

そして洞窟の奥の方へと駆けて誘導を試みた。

これは術師を守るときの手段であり俺がとっくの昔に捨てたものだ。

まさかこんな所で役立つとはな…。


「「「グオオオオオオッ!!」」」


すべてのリザードが俺に向かって突撃を仕掛けて来る。

だがここは個別に相対している余裕などはない。

神経を研ぎ澄ませ、すべての攻撃をかわしてみせる。

そう決意した次の瞬間、俺は目を疑う。

リザード達の動きが止まった。どういうことだ?

じっと目を凝らしてみると、足元には蔦のようなものが生えており、リザードを縛っている。

そしてその縛られた魔物達がある一点に引きずられていく。

これはまさか、先程言っていた?


「今ですっ!」


彼女の声が響く。

この瞬間を待っていたと思わざるを得ないほどに、直感的に体が反応した。

()()()()()()()()()()()()()()()()

俺はリザードの群れに向けて、全力で斬り付ける。

空間ごと引き裂くような強烈な一閃。

そこにはすでにリザードの死骸のみが転がっていた。

俺を包むこの高揚感は何だ?こんなにも胸が高鳴るのは初めてのことだ。


「やりましたね!」


気づくとリュカが目の前に立っており、小躍りして喜びを表現していた。

そんな彼女に俺は思わず先程の魔法について尋ねていた。


「あの魔法は一体?リザードが勝手に集まっていったように見えたのだが」

「あれは、まずはじめに足を蔦でとめます。

 それから、重力を操ってまとめます。

 空間をこうしてああしていじっちゃうわけですよ!」


??

何を言っているのかはやはり分からない。

だが、あれは意図されたものだったという事だけは理解できた。


「しかしすごいな。あんな攻撃魔法じゃないものまで使えるのか」

「えへへ…。

 でも、あれは発動までに時間がかかりますし。しっかり時間を稼いでくれたおかげなんです」


真意はともかく褒められると言うのは悪い気はしないな。

……いや、今のはお世辞と言うかそういった類の物だろう。

そしてリュカが何かに気づいたのか口を開いた。


「あの、大きい反応がひとつあります!たぶんですけど、これは…」

「ああ、大物がいるってことだな!」

「何が来るかわかりません、気をつけて!

 …ってあれ?待って!待ってくださーい!」


恐らく、リザードの親玉ってところだろうか。

こいつを倒せば、依頼は晴れて解決を迎える事が出来る。

だが、何よりもそれ以上に敵と戦いたい。そんな気持ちが勝っていた。

俺は駆け出しの冒険者(ルーキー)のような逸る気持ちを抑えきれず、最奥へと駆け出していた。


「グオオオオオオオォッッ!!」


これまで相手取ってきたものと比べて2倍はあろうかと言う体躯。

その雄叫びの大きさもかなりのもので、並みの冒険者ならそれだけで怯んでしまうだろうか。

こちらからすれば相手にとって不足はない。俺は剣を構え、ぐっと力を入れる。

だがその刹那――。


「くっ!」


あの巨体から繰り出される剣撃を受け止める。

素早くそして重たい一撃。鈍い痺れが腕に残る。

俺はふうっと一呼吸を置き距離を置いた。

落ち着いて考えろ、まずはどこから攻めるかだ。


「グオオオッ!」

「させるか!」


こちらに考える隙を与えないつもりか。リザードは次の一手を打ってきた。

手加減一切なしの振り下ろし攻撃(フルブレイク)

俺は瞬間的に相手の左側面を取るようして体をかわす。

続けて横一文字(セカンドインパクト)

相手から離れないように咄嗟にしゃがみやり過ごす。

そして立ち上がるのと同時にその勢いを利用し、俺は斬り上げ(ブレイバー)を放った。


「ぐっ、浅いか?」


今の攻撃は完全に直撃した。

はずなのだが、いまひとつ手応えがない。

硬い鱗に覆われていると思しきこのリザードには効き目が薄いように思える。

だが魔法は効かないとなると、幾らかは効果的な武器攻撃でなんとかする他はない。


***


「グオオオアアッ!」

「はああああっ!」


俺たちの攻防は未だ続いていた。

リザードの攻撃は絶え間なく続き、

一方の俺はというとその猛攻に対し防戦に徹していた。

リュカはリュカで何か動いているようだが、決定的なものはこれまでにはない。


「だ、だいじょうぶですかぁ!?」

「今のところはな。ただ、いつまで持つかだな…」


リュカが心配そうに尋ねて来た。

このままでは押し切られる可能性が高く、彼女にまで被害が及びかねない。

ここは早急に奴の弱点を看破し、短期間で決着をつけるしかない。


「あの鱗さえ何とかできればな…」

「うろこですか…はい、手段はあるのですが」

「……時間を稼げばいいのか?」

「いえ、発動自体はすぐです。

この魔法は武器自体に付与(エンチャント)をします。

その時にかなり負担が掛かるかもしれないので、危険なのです」


リュカは俺を心配しているようだった。

まったく、何を躊躇う必要がある。

可能性があるのなら進むしかないだろう。


「しかしそれで決定打を与えられるのなら、試してみる価値は十分にある。

俺の事は気にせず頼む、やってくれ」

「で、でも…!」

「大丈夫だ、俺はこんなところではやられない!」


少々大げさではあったが彼女がするようにビシッと親指を立てた。

『任せろ』のサイン。


「!!…わ、わかりました!」


リュカが詠唱を開始し、その直後眩しい光が俺を包み込む―――

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ