手掛かりを追って
相変わらず俺はこのアイザスの街を彷徨っていた。
もう三、四日にはなるだろうか…一向に手掛かりを掴めそうにない。
ないのだが、ただ一つ
『確実な物はない。その上徒労に終わるかも知れないが
アレクシアンの魔術師ギルドに行ってみてはどうか』
と言われていた事を思い出した。
…こうなったら背に腹は変えられない。
俺はここを諦めてアレクシアンを目指す事にした。
ここからだとかなりの遠出になるが仕方が無いな。
[魔法都市アレクシアン]
魔法を志す者なら必ずと言っていいほど訪れる事になる、浮遊の都市。
ここでは魔法に関するほぼすべての道具、触媒などが一通り揃う。
都市内の魔術師ギルドには多くの魔法使いが所属しており
長年に渡りギルドで研究を進めるものや、都市を出て独自の理論を展開するものなど
一口に魔法使いと言っても多岐に渡る。
***
ここにはエキスパートも大勢居るだろう。
だが、実際に現地まで連れて行き見てもらう必要があるわけだ。
よって正直気乗りはしないのだが…
「それで…いつまでついて来るつもりだ?」
「つ、ついて行ってるわけじゃないです。わたしもここに用があるだけです」
いかにも魔法使いといった出で立ちをした少女―肩まである金髪を靡かせた背の低い―が、俺の行く後を歩いている。
正しくは、この少女は俺がアレクシアンに到着する前からつけて来ている。
はじめは気のせいだと思っていたのだが、それとなく立ち止まると同じ様に歩みを止める。
これを幾度も繰り返すうちに俺は彼女に疑惑の目を向ける様になった。
***
「ふう……」
俺は奴を引き離そうと咄嗟に大地を蹴り、全力で駆け出した。
悪いが飯事に付き合っている暇はない。
「あっ!?」
今、確かに感嘆の声が聞こえた。
…この疑いは確信へと変わる。やっぱりあいつはこの俺を追ってきている。
しかし走り続けるものの、一向に撒ける気配がない。
むしろ残念な事に徐々に差を詰められている。人は見かけによらないものだな。
小さな追跡者の想像を越えた脚力に俺は諦めて歩き出した。
「何故…先を…行かない?」
「え?えーとわたし、極度の方向音痴でして…」
「…アレクシアンのどこが目的地だ?」
「ま、魔法ギルド?です」
「はぁ、分かったよ」
わかりやすく挙動不審な受け答えを、息を切らさずに言ってのける。
この娘は言うならば怪しさを凝縮して出来上がったような存在だ。
だが俺は面倒事だけを避けたい一心で、そのままギルドまで案内する事にした。
正直、評価なんてなくても完走してみせる、と最初は強がってはいましたが
実際大きな励みになりつつあります。
評価を入れて頂いた方、ありがとうございました。