オートロック魔王城(無人)
魔王なんだけど、部下が家出したまま帰ってきません。
なんで?何で?私逃げ出すような事とかした?
おまけに勇者様もあれから一切訪ねて来ないし…一体どうなってるの?
信じられます?今ここ、私以外誰もいない魔王城。
「うぅ、さびし…寂しくなんてないよーだ!!」
城内に『よーだ』が虚しく木霊する。
うん、知ってた。
はいっ!魔王、今嘘つきました!寂しい嘘つき大魔王です!だって一人だと魔王死んじゃいますよ!
うん、だからね、魔王も家出する事にします。
ただこの姿だと大騒ぎになると思うから、人間の姿になろうと思います。
人の姿になるのは別に抵抗はありません。むしろ、人間の方が自由に動けて羨ましいくらいです。
正直、先代から魔王の座を引き継いだだけだし、
私あんまり人間の事嫌いとかそういうのが分からないんだよね。
ただ年配の部下達がああしろ、こうしろうるさいから、仕方なく従ってただけだし。
私が色々顔を立ててあげないと、あの人たちお家で立場なくなりそうだしね。
***
「よしっ、完璧!」
今日はボーケンシャスタイルで決めてみました!これが人間の間では流行っているらしいんだよ。
マジカルハット、月明かりのケープ、そしてルーンロッドのコーデ。
やっぱり魔王としては魔法使いの格好がしっくり来るね。
でね、今お城に誰もいないわけだし、私が出て行ってもこれは家出じゃないはず。
そう、これはただのお出かけ。その間に皆帰ってくるでしょどうせ。
それではしゅっぱーつ!
……勇者様にも運良く会えるといいんだけどな。
魔王は開け放してあった城内の窓をすべて閉め、何処かへ消えていく。
オートロックの掛かったままの魔王城は、ついに完璧な密室と化した。