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魔王なんですが実は、隣にいます。  作者: 夕凪
第二章 新たな魔王、降臨
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森を抜けてⅢ

「リュカちゃん!」

「レミアーん!やっほー!」

リュカとレミアは小躍り…できなかった。

「再会を喜ぶのは後だ!」

俺はようやく立ち上がり、二人に呼びかける。

直後、鈍い痛みが走り苦痛に顔を歪める。先程のダメージが残っているようだ。

「だ、だいじょうぶですか!?」

リュカが心配そうに駆け寄ってきた。

「この程度なんともない。それよりも…」

コボルドが消し飛んだ今、次は誰を狙うべきか。

トロールは体力の高さから判断して、後に回すのがいいだろう。

となると今のところの脅威…雷の魔法を撃って来たやつがいるはずだ。


「あの五匹のうちで術師がどいつか。リュカならわかるか?」

「反応感知しています。ええと、魔力の高さから言って…たぶん」

リュカが指差したそれは巨大な蜘蛛のような魔物だった。

まさに不気味といった風貌でわなわなと八本の足が蠢いている。

「あいつで本当に間違いはないのか?」

俺の問い掛けに彼女はビシッと親指を立ててのウィンク。

それを横目で視認すると俺は八本足へと駆け寄っていく。


宙に浮かんだ雷の玉のようなものが炸裂し、拡散を見せる。

これには回避はあたわず、防御して凌ぐしかないようだ。

単純にダメージとしてそこまでのものではない。

ただこの雷玉の数は多く、すべてを受け切らなければならないと考えると

非常に厄介な魔法であると言える。

付与(エンチャント)――大地の槍(アーススピア)」「力を分け与えよ。グランドパワー」

聖剣が眩しく光り出す。この感覚はあの時の付与に似ている。

恐らくこれは蜘蛛に有効な魔法なのだろう。

それと同時に内に高まる力を感じながら、一気に詰め寄る。

勢いをつけた高速突き。さらに連続して突く。

―グギャアアアアア

不気味な叫び声をあげたそれに対しては、かなり効果があったと言っていいだろう。

続けて振り下ろし、薙ぐ。さらに返す刀での一刀。この時点で大分弱っている。


「少し離れてくださーい!おおきいのいきますよ!」

その声をきいてバックステップで魔物達から一旦距離を置く。

「爆ぜよ―ラウンドエクスプロード」

蜘蛛の周りの大地を砕き浮かせ繋ぎ止めると、炎がすべての敵を巻き込んで焼き付ける。

既に蜘蛛は焼け焦げて絶命していた。そしてトロールをはじめとした敵も炎に巻かれている。

しかしこれは…。

「す、すごい…!これってどういう術式なの!?」

レミアもまた驚きを隠せない様子だ。

「やりました!これで残り四匹ですっ!」

一方で魔法の主はぴょんぴょん飛び跳ね喜んでいる。

「ああ、ちょっとリュカちゃん、油断しちゃだめ!」

喜びも束の間、生き残った魔物達の視線がリュカに向かっていた。

―脅威となり得る者を優先して狙う。

どうやら、ここの魔物の知能はそれなりに高いようだ。

「ひゃ、ひゃあー!!たすけてえ!」

「この俺が易々と見逃がすとでも?こっちだ!」

挑発姿勢を見せると再びこちらに向かってくる。

待てよ…このまま何匹かまとめて落とせないだろうか。

もし読みが外れても危険は自分にしか及ばない。これはむしろ分の良い賭けだ。

「レミア、例の魔法を頼む!リュカは何でもいい、俺のあとに続け!」

「展開します―バリアブレイク!」

残りの敵すべてに弱体魔法が掛かる。

「うおおおおおっ!」

間髪入れずに俺は群れに目掛けてありったけの力で振り抜き、叩き込む。

あの時の(洞窟での)、とまではいかなかったが悪くない手応えを感じる。

「頭を垂れよ―サンダーストーム」

注文通り以上の追撃の魔法が周囲一帯に降り注ぐ。


「反応を感知。大きなのだけ残ってます、気をつけてください!」

リュカの報告を受ける。これでも(たお)れないとは…。

やはりあのトロールは異常な体力を誇っているようだ。

だが残りは一体、ここまで来れば小細工は不要。思わず剣を握る手に力が入る。

「後はこいつだけだ。油断せずに行くぞ!」

「はい、サポートはお任せを!」「わかりましたあ!」


二人の支援を受けて再度トロールと対峙する。

しかし無尽蔵とも言えるタフネスを何とかする算段を立てなければ、勝機はない。

何かが発端となって、あのダメージをものともしない体力を賄っているのだろうか。

何でもいい、手掛かりが必要だ。その為には…。

「提案なのですが、追いかけっこをしてみると言うのは…」「え、えぇ…?」

「リュカ、今はふざけている場合じゃないんだ。真面目に考えてくれ」

「あ、あのぉ…私はこれでもまじめなんですよ。そうです、まじめに言っています」

俺は両手を広げ、首を竦めてやれやれといったジェスチャーを見せる。

「そんな策でどうにかなるとでも言うのか?ふざけている以外の何者でもないぞ」

「さすがに、ね?リュカちゃんはちょっと疲れているんじゃないかな、って思うの。

 ほら、ついさっき元気になったばっかりだし?でもねわたし、言いたい事は本当にわかる!わかるんだけどね…?」

レミアも理解がついていかなかったようで、リュカを優しい口調で宥める。

「二対一だな。では多数決によりその案は却下という事で」

「ひ、ひどいです…うらぎりものどもです!」

あえなく反対意見に敗れた魔術師は、ぷくうっと子リスのように頬を膨らませた。

やっぱりこいつは小動物だ。


ひとまずここは正攻法での打ち合いで行く事になった。

幸い素早さはこちらに分がある。それに加えて補助魔法も万全だ。

攻略への手掛かりはその間に見つかるかもしれない。

―ウオオオオオオオオオォ!

奴の雄叫びを合図に俺達は戦闘を再開する――

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