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魔王なんですが実は、隣にいます。  作者: 夕凪
序章 そして魔王は勇者と出逢った。
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プロローグ1

その世界の名はアースベルク。


蔓延る魔のものどもと、それに対抗する光のものたちが熾烈な戦いを繰り広げ、その歴史は遠く長きに渡った。

ある魔王が討伐されれば、別の大陸で新たな魔王が出現し、またそれが倒れれば他の平穏だった大陸が闇に覆われる。

その繰り返しの末に光のものたちは疲弊しその勢力を減らしていった。

やがて完成を迎える、闇が支配する絶望の世界アースベルク。

もはや原型を留めなくなったそれは大いに乱れ果て、世界の終末という限界を迎えていた。


そこで、困り果てた創造神はとある決断を下すが…。



---***----


ついに俺達勇者パーティーは魔王城の最深部までやって来た。

そこに待ち受けるは世界を混沌の闇で呑み込んだ災厄である魔王、サタン。

奴を倒せばこの世界は再び光を取り戻す。

決戦の時は刻一刻と近づいていた。


「いよいよだな」

「あぁ!腕が鳴るぜ!」「…はい」「ふあぁ…ねむ」


三者三様の返答を受け、俺は小さく頷いて言った。


「皆、あと一息だ。絶対に勝とう!」

「へへ、言われるまでもねえ!!」

「きっと上手くいきますよ、勇者様」

「しょうがないわねぇ、今回ばかりは本気出しちゃおうかしら」


「よし、行くぞ!」


重々しい音が鳴り響き玉座の間の扉が開いた。


***


「サタン…!覚悟しろ!」

「…来たか勇者ども。矮小なる人間風情が…、我ら魔族に逆らった事を後悔し、此処に朽ち果てるが良い」


俺達は武器を構え、それぞれの戦闘位置についた。

前衛である俺が魔王の正面、ファイターのカイがその側面から攻める。

ウィザードであるアンネとプリーストのリュカは後方から俺達をサポートする。

状況によっては前衛は正面と側面をスイッチし、大魔法発動までの時間を稼ぐ。

後衛のアンネは攻撃魔法だけでなくランクは落ちるが回復魔法を使う事もできる。

そしてリュカはいざとなればアンネを庇うくらいはお手のものだ。

これは今まで数々のモンスターを相手取り、勝利してきた絶対的な布陣だ。


「せいっ!」


まず俺が先陣を切り、携えた聖剣とともに魔王へと飛び掛る。これが決戦開始の合図となった。

ワンテンポ置いてカイが側面攻撃の構え、それと同時にリュカが俺とカイに補助魔法を掛け、アンネは攻撃魔法の詠唱を開始。

ちょうどカイの攻撃が入る直前のタイミングで、アンネの詠唱が終わり発動する。

「彼の物を食い千切れ、ダークネス」

アンネのルーンロッドより生み出された三匹の黒龍が、魔王目掛けて喰らい付くように命中した。

刹那、魔王を纏う防護壁がパリンと音を立てて砕け散る。


「フレアスラッシュ!」


その隙を見逃さず俺は追撃を加える。炎の力を纏わせた聖剣を袈裟斬りの要領で振り抜いた。

この魔法剣は相手の防御力を低下させる効果を持った特殊なものだ。

それを見計らい、すかさず後方から氷の槍が飛んで来る。


「いっただきぃ~」


声の主はアンネだ。

ちょうどフローズンランスの発動を終えた彼女はテンションが上がっている。

アンネは少々変わり者ではあるが実力自体は確かなウィザードだ。

彼女は魔法学校を主席で卒業し、その名を出せば知らない者はいないとされる魔法学のエキスパート。

そしてこの放たれた氷の槍にはとある魔法が掛かっている。

発動済みの魔法の威力を跳ね上げる、ヒートインパクトと呼ばれるリュカの補助魔法だ。

聖職者である彼女は本来争いを好まない。

しかし、生まれ育った孤児院の危機を察し共に魔王討伐へ赴く事を決めた、心優しき女性だ。


「ほう、少しはやるようだな」


魔王はダメージを受けつつも余裕綽々と言った表情を見せた。


「そろそろ本気でも出しといた方がいいぜ?」


素早いステップから、魔王の正面に躍り出たカイが怒涛のラッシュを繰り出した。

両手のナックルダスターから、交互に左右から放つ強撃を連続して見舞う。

彼は並みのモンスターでは太刀打ちができないほどの驚異的なパワーとスピードを有している。

昔から力勝負で勝てた試しはなく、正直幼馴染の俺でも手のつけられない相手だ。

おあつらえ向きにシールドの破壊された魔王にとっては、大きな脅威となるのは間違いないだろう。

そのカイを起点として俺達は順調にダメージを与えていく。


「…小癪な」


魔王が詠唱を展開した。…カイに向けて大きな攻撃が来る。

攻撃型のカイの防御能力はそれほど高くはなく、攻撃を受け続けている余裕はない。

ならば、ここは俺の出番だ。


「カイ!」「おうよ!」


俺は咄嗟にカイに合図を送る。

その直後、既に詠唱を終えていた魔王がアーススパイクを発動。

瞬間的にカイと位置を入れ替わった俺は、防護魔法の掛けられた盾を構え、放たれた無数の土の楔と正面から相対する。

後退るほどの強い衝撃が俺を襲うが、さすがに膝を折るまでには至らなかった。


「正しき者を救い給え、セイントヒール」


柔らかく眩いリュカの治癒魔法が俺の周囲を包み、先刻受けた体の傷を癒していく。

俺達はこうして魔王との戦闘を危なげなく進めていった。

この完璧な連携さえあれば魔王ですら敵ではないはずだ。


***


「温い、温すぎるぞ勇者よ」

「何だとっ!?」

「暫く様子を見ていたが…貴様らの力はその程度か?これでは余興にもならぬぞ」


突如として魔王の魔力が著しく増幅していく。

これまでの戦闘のダメージを微塵も感じさせないほど膨大なそれに、俺は初めて戦慄した。

勇者の固有能力『直感』によって、この場の全員の死が近づいてきているのが分かったからだ。

だがこの展開だけは何としても避けなければ。


「三人とも下がれ、ここは俺が引きつける!その隙に出来るだけ遠くへ逃げるんだ!」

「もう一度言ってみろ!いくらお前でもぶっ飛ばす!!」

「私は皆さんを守ると決めました。申し訳ありませんが、その命だけは聞くことができません」

「ふふ、ようやく楽しくなってきたのに逃げろっての?アンタだけにいいカッコ、させる気はないわよ」


三人は、今起きつつある()()()()()事態をすぐに察したようだ。

しかしながら誰一人として退くつもりはなかった。

……ああ、そうだな。俺も覚悟を決めるしかないな。


「魔王の詠唱を止めるんだ!きっと活路はそこにある!」


俺達は力の限り戦った。

持てるすべて、これまでの知識経験すべてを以って。

例え負けると分かっていても全力で足掻いていたかった。

人の力はこんなものじゃない、それだけは信じていたかったんだ。


***


「深淵よ、すべての光を喰らい尽くせ」


次の瞬間、城内を深い闇が包み込む。

前が、見えない。奴は何処にいる?何も、聞こえない。仲間達は何処だ?

もはやそこには希望など微塵もありはしなかった。

このまま俺は成す術なく闇に押し潰されるだろう。

まさか、魔王に挑んだ事自体が間違いだったとでも言うのか?

王、妃……姫…お許しを…。

…皆すまない。本当にすまない、俺なんかを信じてついて来たばっかりに…。



その日、世界は滅んだ。

タイトルは変わるかもしれません。

長編処女作です。稚拙な文章ですがどうかお付き合いを。

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