拝啓、お兄様早く迎えにきてください
拝啓、お兄様 いかがお過ごしでしょうか?
私、いえ僕は今日も煌高生活を謳歌しています
嘘です
もう限界です
早く、迎えにきてください
そう、そもそもの始まりは何だっただろうか?
兄が受けた依頼から全ては始まった
兄は分かりやすく言えば『何でも屋』をやっている
本人は探偵業だと言い張るが……いや、今それはいい
その何でも屋に奇妙な依頼者が現れたのは3月のことだったか
その客は言った
「娘が男子校に行く
護衛、及び監視を頼みたい」と
何故、女子が男子校に行くのかというと
娘さんが暴漢に襲わせた際に煌輝高校の男子生徒が助けたらしい
その男子生徒はその時におった怪我が元で少しグレているらしい
それを知った娘さんは彼の為に何かしたいと
でも、怪我を負わせた自分では何もする資格がない
なら、男になって仕舞えばいいんだ!と謎思考で
男子校である煌輝高校に転校したそうだ
娘さんが女であることは煌輝高校の理事長のみが知っているらしい
理事長は娘さんに煌輝高校が共学になることを想定としたモデルケースとして
受け入れることを決めたそうだ
焦ったのは父親の依頼人だ
諦めると思っていた娘が勝手にどんどん話を進め、
気づいた時には男子校に転校することになっているではないか
しかも全寮制の!
それで兄が経営する何でも屋を思い出したらしい
普通ならここで断る
こんなあやしい上にややこしい依頼など受けるはずもない
だが、頭のネジが1本や2本緩んでいるうちの兄は引き受けたのだ
護衛には私の双子の弟を着かせればいいと勝手に決めて……
人の良い弟は兄からの頼みに渋々だが頷き転校手続きをとった
ここまではよかった
が、
依頼人がまたやって来たのだ
「護衛者は誰か?」と
兄は馬鹿正直に答えた
「うちの弟です」と
依頼人は激怒した
「うちの娘に男の護衛をつける気か!」と
依頼人の中では護衛は同性である女性であったようだ
「男の護衛ならば取り消す」と依頼人は言った
慌てたのはうちの兄だ
すでに前金として受け取ったお金を使い果たしていたのである
主にパチンコや競馬でだ
そして焦った兄はこう言った
「分かりました、妹を行かせましょう」
こうして何故か、私が男子校 煌輝高校に行くことになったのである
私が男子校に通っていることは兄と弟以外知らない
学校には協力者もいない……
そんな状況でどうしろと……
「兄さんにはお前しかいないんだ
今日からお前は翔だ!いいか何があってもヒナタ様をお守りするのだ!」
とりあえず思いっきり蹴飛ばしておいた
「姉さん、大丈夫?
無理しちゃダメだよ
力じゃそんじょそこらの男には負けないと思うけど油断は禁物だよ」
優しく気遣ってくれる弟の頭を撫でておいた
こうして、私は煌輝高校 通称煌高の敷居をまたぐことになったのである
煌高の日常は大して前までいた高校とそんな変わりはない
ただ、女子がいるという遠慮がないだけで……
教室エロ本を広げている奴もいれば何故かパンイチの奴もいる
ズリパンしすぎてもうパンツ見えてんじゃん!という奴もいる
そんな中、私の護衛観察対象であるヒナタさんは顔を赤くしたりしながらも
男子達とよい関係を築いている
例のヒナタさんを助けたとかいう男子とは同室になったそうで
その男子は何かとヒナタさんの世話をやいているオカン系男子と化している
ヒナタさんに惚れているだろうと思われる男子も何人かいる
その度に私はいや僕は個人情報を洗い出し、性格に問題はないか
ヒナタさんに近づけて問題はないか兄に報告し兄からの情報次第では排除している
今もヒナタさんの行動をメモしている最中だ
「しょー、またヒナタのストーカーしてるのか?
お前も懲りないねえ」
その途中でヒナタさんのストーカーと噂されることになったのも仕方のないことだった
いつもそんな影からなど守れるか!
忍者じゃあるまいし!
「やめろ!離せ!今はメモに忙しい」
「いや、目の前にいるんだから離せば良いよな?な、ヒナタ?」
「そうだよ、翔くん」
にっこりと笑顔を見せるヒナタさん
その笑顔に顔を赤くする周囲の男子諸君
「翔くん、今日一緒に昼食べよう……ぜ」
言い慣れてない言い方で一生懸命伝えてくるヒナタさん
正直、同性でも可愛いと思います!……が
「ああ、悪い
今日は無理なんだ
ごめん」
「そっか、こっちこそごめんな
それじゃ、また今度」
折角のヒナタさんの誘いを断るのは心苦しいが今日は害虫駆除の日だ
昼休みになり
ヒナタさんとオカン系男子、そしてヒナタさんに惚れてる男子諸君が去り
人が疎らになる
そんな時、誰もいない寮では
害虫が現れる
「ヒ、ヒナタくん、ヒナタくんが悪いんだからね
ボ、ボクの気持ちを無視するから!」
害虫は寮の部屋の鍵を勝手に開け入って行く
僕の役目は害虫駆除だ
なんのためらいもなく害虫にちょっと電気が流れる危ないモノを押し当てる
気を失った害虫を……大抵重いのだが引きずって身ぐるみ剥いで適当な場所に転がしておく
もちろん、合鍵は没収しておく
寮長と学校側に報告し鍵を変えてもらうことも忘れない
こうして日常は過ぎていく……はずだった
「!お前、なんで!」
オカン系男子!?何故、ここに!?
「ヒナタが最近物がなくなるって気味悪がってたから……
さっきの奴だったのか?
お前がいつもヒナタを守っていたのか?
……そうだとも知らず、お前のこと俺誤解してた」
いや、してたままでいいんです
むしろ誤解しててください
寮長に絡まれるようになったり
「お前はいつもヒナタを守っているな
影のナイトのつもりか?
それではいつまでたっても思いは通じないぞ
よし!俺が一肌脱いでやろう!」
いや、本当に服を脱ぐのはやめてください
それにそうっとしておくのも優しさです
女好きの保健室の先生に絡まれたり
「ねえ、お前本当に男なの?
なんか男にしては良い匂いするんだけど……」
気のせいです
俺より乙女系男子くんの方がメチャクチャ良い匂いします
お花の香りです
サシェ持ってるって言ってました
乙女系男子くんに懐かれたり
「翔くん、お弁当作ってみたんだ
よかったら、一緒に食べないかな?」
乙女系男子くんのお弁当美味しいです
いつもありがとうございます
わんこ系男子にまとわりつかれたり
「あー、翔だけズリィ!
俺も俺も!あ!あと翔!勝負な!」
会うたびに勝負を挑むのはやめてください
我らがヒロイン、ヒナタさんと過ごしたり
「オレも一緒に食べて良いかな?
えへへ、翔くんと一緒に食べれるなんて嬉しいな」
今日も笑顔が可愛いです
でも、貴方、僕の観察対象なんです
お兄様、もうキャパオーバーです
一刻も早く迎えに来てください
ヒナタさんは僕などいなくてもこの煌高で立派にやっていけます
は・や・く・迎えに来てください
敬具
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煌高の生活なかなか上手くやれているようで安心しました
その調子でヒナタ様を守りつつ青春を謳歌してください
ついでに、お金がなくなりそうなので
おこずかいをください
愛しの兄貴より