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『8/6 ノベルstory07 発売』私は悪役王妃様  作者:


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内密の会談


「まだ見つからないのか……?国境を通過した形跡もなく、港に停泊していた船の中にも居ない?捕らえた者達は口を割らず……っ……全ての騎士を動かして、手掛かりひとつないだと!?だったら、セリーヌとフランは何処に消えた!」

「セリーヌ様とフランの捜索は直ぐに行われました。現在もクライヴが騎士団を動かしていますが、後宮が襲われた時刻が深夜だったことから捜索は難航するかと……」

「後宮の警備をしていた騎士は!?何か見ていないのか!」

「後宮内で倒れていた騎士と同じように、意識を奪われ人目につかない場所に隠されていました」

「くそっ……!」


ジレスからの進展しない報告を聞き、アーチボルトは怒りのあまり大声で叫び、机の上に広げていた各種の報告書を手で払いのけた。

室内には宰相であるジレスとベディング伯爵。

先程までは此処にラバン国の王太子であるレイトン・フォーサイスの部下二名も居たが、現在は主が王都へ入ったと連絡を受け迎えに席を外している。


「もうレイトン・フォーサイスが到着したのだぞ!ベディングの方は何かないのか!」

「……落ち着いてください、アーチボルト様。グエンとブレアでしたかな……?彼等の方でもいくつか手掛かりを得ているようですが、私の方でも数点は捕らえた貴族から情報を得ています」

「本当か!?」

「はい。王太子殿下が来られたら進展しますでしょうから、アーチボルト様は騎士団を動かす準備を」

「わかっている……」


癇癪を起したアーチボルトがベディング伯爵に宥められるというこの光景は、少し前まで皆が良く目にしていたものだ。

最近はベディング伯爵が爵位を落としたこともあり、二人には距離があったが今回のこの騒動でまた繋がりをもってしまっている。

ジレスはそのことに頭を痛めつつ、侍従も補佐も部屋の外に出してしまったので自ら床に散らばった書類をせっせと集めていた。


「ラバン国、王太子殿下がご到着されました」


ノックと共に王太子が到着したことを告げられ、室内に緊張が走る。

大国の王妃が襲撃され、更に拉致されたことは重大な問題であるが、本来であればその身内とはいえ他国の王族が、しかも王太子が足を運ぶようなことはない。

襲撃から一日も経たずに部下を送ってきたことにも驚いたが、部屋に入ってきた王太子の姿には皆息を呑んだ。


「……遅れてすまないね」


暗い色のマントを身に着け、普段であれば完璧に整えられている髪はかなり乱れている。

額には汗が滲み、急いで来たのか呼吸が荒い。

帝国のセオフィラス・アディソンに次いで、完全無欠と民の間で有名な王太子が形振り構わず駆け付けた。

大切にしていると公言している妹が危険に晒されているのだ。怒鳴られることは勿論、最悪殴られることも覚悟しておかなければいけないと、アーチボルトは姿勢を正し無意識に唾を飲み込んだ。


「いや……手間をかけさせてすまない。此度のことは、私の落ち度だ」

「誰の責任かと追及している時間が惜しい……すまないが、直ぐに何があったのか簡潔に説明を。それと、各自の情報の擦り合わせをしてしまおう」

「わかった。今クライヴを呼びに行かせる」

「なら、その間に状況報告を」

「こちらに纏めたものがあります。枚数が多いですが、目を通されておいた方が良いかと」

「ありがとう。あぁ、報告書だけでは不十分だから、セリーヌの専属護衛騎士も呼んでおいてくれないかな」


当事者から話が聞きたいということはとても理解出来る。

が、クライヴのついでに呼べと言われた騎士達は現在牢の中にいるなどと、一体誰が言えようか……。

妙な空気の中、レイトンが物凄い速さで読み進めている報告書を捲る音だけが聞こえる。

何と言って良いものなのか……とヴィアン側が目配せをしている間、その妙な空気をぶった切ったのはやはりレイトンだった。


「アーチボルト王……時間がないと言ったよね?なにかあるなら黙るより口を開いてくれないかな」

「王太子殿下、その物言いはどうかと……」


自国の王に冷たく言い放たれた言葉に対して抗議したベディングは、レイトンの背後に控えているギーに睨まれ口を噤んだ。

トン、トン、トン……とレイトンが指で紙を叩く音に精神的に追い詰められたアーチボルトは、腹を括り「あの者達は、牢に入れた」と暴露した。


「……何故?」

「私の、待機せよという命令に背いたからだ。それに、セリーヌを護りきれず敵を逃した騎士など役には立たない……」

「そう……でも、時間がないと言ったよね?そちらの事に口を出すつもりはないけれど、罰を与えるのならセリーヌを取り戻してからにしてくれるかな」

「だが……」

「近衛隊や騎士団を動かすと目立つ。それに場所が場所だけに少人数で動くことになる。だから、腕の立つ身軽な立場の者達が欲しい」

「場所とは……?」

「セリーヌとフランという騎士は、オルソン国にいるよ」


レイトンの口から突然飛び出したセリーヌ達の居場所について、アーチボルトとベディング伯爵は目を見開き、外に指示を出していたジレスはガバッと振り返った。


「オルソン……?」

「そう。確認するけど……襲撃後、宰相が騎士を連れ後宮へ入るまでの間にセリーヌと騎士一名が連れ去られている。合っているかな?」

「あぁ……私がジレスに起こされたときにはもう二人の姿はなかった」

「短時間ではあるが、国境を越えて他国へ出ることも、港から船を使って移動することも可能。だからこそ、直ぐに国境の封鎖と港に停泊している船の船内の捜索、出港した船の確認をしなければならなかった。これに関しては……あぁ、ここに書いてある通り国境を越えた可能性は低いのかな?とすれば、船内の捜索も手掛かりがなかったのだから既に船に乗せられ移動している可能性はある。又は、一旦何処かへ隠した後の移動、もしくは捜索されることを前提とし国内のどこかに監禁している可能性もあったが……これだけ騎士を動かしている中での移動はまず難しいし、国内のどこかにというのも、この捕らえたと書かれている貴族を調べれば直ぐに発覚することだ」

「私がセリーヌの元へ向かったのは、妙な手紙を受け取ったからだ。それを指示した者達は我が国の貴族だった。ベディング、そちらの方は尋問を終えているな?」

「はい。伯爵家と男爵家の者達が金で雇った者達を使っていたようです。傷つけるつもりはなく、少々痛い目に合わせ大人しくさせようとしただけ……と言っていましたが、雇った者達に攫わせたセリーヌ様の行方は知らないそうです。彼等の屋敷、領地、親族、その他繋がりがある者、全て調べましたがセリーヌ様のお姿はありませんでした」

「随分と稚拙な計画だね。協力した教会関係者の方も金を貰っていたことは調べがついているし、襲撃者の方も口を割らなかったがある程度有益な情報は取れている。隠す気があるのかと問い詰めたくなるほど穴だらけだよ。よくこれで襲撃など出来たものだね」

「……何故、セリーヌはオルソンという国に?」

「海を渡った向こうの大陸にある国だよ。海を統べる国と言えばわかるかな?」

「聞いたことはあるが……」


アーチボルトの曖昧な返事にレイトンが眉を顰めたとき、セリーヌの護衛騎士であるウィルス、テディ、アデルの到着が告げられアーチボルトは難を逃れた。



「牢から出たばかりで悪いけれど、君達三名には直ぐにセリーヌを迎えに行ってもらう」


レイトンが来たときど同様に三人にもこれまでの報告書が渡され、それを彼等が読み終えるのと同時にレイトンから指示が飛ぶ。

護衛騎士の代表として一歩前に出ていたウィルスは、軽く周囲を見渡しこの場に居る王族二人に発言の許可を得た。


「準備が出来次第直ぐに王都を出ますが……その前に、ベディング伯爵には退出を願えますか」

「何を勝手なことを言っている、ウィルス!」


が、その直後に発せられたウィルスの立場を弁えない言葉にアーチボルトは激高し声を荒げた。


「……この首謀者である貴族はベディング伯爵の派閥の者達であると記憶しています」

「確かに私の派閥の者達だったが、爵位を落としたあとは離れていた」

「であったとしても、騎士である私に貴族の事情は関係ありません。現在の関係がどのようなことになっていても、疑わしいと思われる人物をこの場から排除するだけです」

「ベディングはそやつらの捕縛に協力したのだぞ!」

「自身が疑われないよう、仲間を生贄にする者もいますので」


一歩も引かずシレッと返すウィルスに、アーチボルトは益々顔を赤らめ怒りを露わにするが、ウィルスの視線はレイトンに固定されている。

それもまた火に油を注ぐ結果となるのだが、相手にしていないのか……それとも態とそういった態度を取っているのか……。

わかりにくいウィルスの行動に、背後に立つテディは顔を引き攣らせ、アデルは(後者だな……)と苦笑した。


「すまないけど、ベディング伯爵は退出を。私も身内に裏切り者がいた者を同席させることは遠慮したいからね」

「……っ、だがっ!」

「アーチボルト様、私は構いません。では、何かあればまた。協力は惜しみませんので」


ウィルスの言い分はもっともで、信用出来ない者をこの場に同席させるべきではないとジレスも思っていた。

最近のアーチボルトはジレスやクライヴという身近な者達の進言にすら耳を貸さず、頑なに意地を張り強行してしまっている。

唇を噛み締めながらウィルスを睨むアーチボルトを横目に、ジレスはホッと息をついた。


「アーチボルト王。ベディング伯爵はあまり信用しない方が良いよ」

「ベディングは爵位を落とされている」

「だからといって、彼が大人しくなったということはないよ。今回の事に関与していないというのは真実かも知れないけれど、彼には他に隠していることもあるだろうしね」

「隠していること……?」

「金で雇ったその辺の者達が騎士や影を昏倒させる手段を持っていること、ウィルス・ルガードや私の影達と互角程度に戦えること、可笑しな点は多々あるんだよ。まぁ、それはあとで良い。では、セリーヌの護衛騎士達には準備する時間や移動手段、その他、手短に説明するから、質問や確認事項はその都度発言を」

「はっ」

「現在セリーヌとフランはオルソン国にいる」

「それは、どなたからもたらされた情報でしょうか?」

「オルソン国第三王子エルヴィス・ボルネオからだ。彼から知らせが届いた」

「王子だと!?その者も関与していたのか?」

「いや、偶然保護したようだね」

「偶然だと……そんな都合の良い言い分があるか!それに何故私にではなく、そちらに知らせが届くのだ」

「私とエルヴィスは知り合いなんだよ。彼は幼い頃一度ラバンを訪れているし、セリーヌのことも可愛がっていたから」

「……保護したと言うことは、やはり港でしたか」

「そう。グエンからの報告では深夜に港から出る船が目撃されているし、捕えた襲撃者達の持ち物から向こうの国の物であることも確認が取れている。別大陸となると、流石に伝手などないと難しいからね。エルヴィスに連絡を取ろうとしたら向こうの方が早かった」

「では、私達はオルソン国にセリーヌ様を迎えに行けば良いのですか」

「……それがね、色々と問題があるんだ」

「問題とは?」

「第三王子であるエルヴィスはね、正妃の子ではなく平民の側室の子だ。正妃とその子である王子達からは疎まれている。だから、彼の持つ権力は微々たるものなんだ。保護しているとは言ってもそれは本当に言葉通りで、セリーヌの安全は確保出来ていない」

「国が保護をしていないのでしたら、内密に第三王子と繋ぎを取る必要がありますね」

「何故だ?セリーヌのことをオルソン国の王に伝えれば良いだけではないか」

「……オルソン国はね、こちらでいうところの帝国のようなものなんだよ。面識もなく友好的な関係を築いてない大国に、王妃がそちらにいるので保護してくれなどと言って素直にそれをするとでも?」

「我が国と繋がりができ、貸しを与えることも出来る。あちらには得がある筈だ」

「セリーヌを使って何を要求されるかわからないし、それを拒否すればセリーヌの命の補償はない。戦争になったとして、海上での戦闘を得意とするオルソン国相手にどのように戦うつもりだい?寧ろ、この国は王妃一人の為に戦争を起こす気はあるのかい?」

「……」

「それと、オルソン国では国王の即位記念式典が行われる。祝い事の為、各国から使者や贈り物が届くからオルソン国への出入りは問題ないと思っていたのだけれど……今朝、港で待機していたクレイから連絡が入った。オルソン国は式典を終えるまでの間、港を封鎖したらしい」

「港を……。此方を警戒してのことであるなら、セリーヌ様の存在が向こうに知られているということでしょうか?」

「エルヴィスとのやり取りには日数がかかるからね……もしかしたら、私に知らせを出したあとに何かあった可能性もある。だから君達にはそれも踏まえて行動してほしい」

「船が使えないというのであれば、どのような手段を?」

「船は使えるよ。ルーティア大司教が式典に参加表明を出した。ルーティア大司教は次代の教会最高位と言われている者だから、彼が参加することによっての利益は計り知れない。入国を断ることもしなければ、乗員を調べるようなこともしないだろう。君達にはルーティア大司教が使う船に乗ってもらう」

「では、私達はルーティア大司教の護衛という形でオルソン国へ入国、その後教会関係者を装い行動します」

「港にいるクレイは君達と一緒に行かせる。彼女にはエルヴィスとの連絡手段を教えてあるし、女性が一人居た方が良いからね」

「セリーヌ様の護衛騎士隊長をされていた方ですね」


ウィルスはクレイと直接顔を合わせたことはないが、テディとアデルは別だ。

あの、セリーヌ盲信者筆頭騎士が自分達と行動する。それは頼もしいことでもあるが、天然腹黒疑惑のあるウィルスと掛け合わせるとどんな作用を引き起こすのか不安もある。

もしものときは自分達が止めるしかない……と、テディとアデルは顔を見合わせ頷いた。


「ラバン国王からある程度の権限は貰っているけれど、王太子である私が向こうへ行くことは出来ない。それは私の影であるギー達も同様だ」

「王太子殿下は有名な方ですから顔を知られているでしょう。向こうに警戒させない為にもそれが正しいかと」

「……でもね、私はセリーヌの兄でもあるんだ」


レイトンは座っていたソファーから立ち上がると、ウィルス、テディ、アデルに向かって頭を下げた。

その行動に対して周囲にいる者達が何かを言う前に、言葉を続ける。


「セリーヌを、無事に連れ帰って来てくれ……」


大国の王族であり、王太子という地位にいる者が、たかが護衛騎士に頭を下げ願うことがどれほどのことか。

罵倒もせず、みだりに力を振るうこともなく、ただひたすらセリーヌを救うことだけに意識を向けている。

それを間近で見せつけられたアーチボルトは、些細なプライドを守る為だけに取った行動を振り返り、己の小ささを感じ打ちのめされていた。



※※※※



一方――。


「さぁ、リア。服を脱ぎなさい」

「……はい?」


オルソン国にいるセリーヌにも問題が発生していた……。


コミカライズに続き、小説も電子書籍化されることになりました。

詳細は活動報告の方へ。

応援ありがとうございます。

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[一言] アーチボルトのクズっぷりと無能っぷりが面白いです。 高いプライドが現場を混乱させているだけのように思います。 アーチボルトいらないですね。 いつもどこかで反省はしてるけど繰り返すのなら意味が…
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