兄弟
逃げる前に目が合ってしまったので、さり気なく第二王子から視線を逸らしつつ長椅子の端へと移動していたら「おい!」と第二王子が吼えた。
驚いて肩が跳ねた私に、第二王子が「いや、違うんだ!」ともごもご口を動かし。
「違う、危害を加えようとは思っていない。そう、エルヴィスに用があっただけだ。だから、偶然会えただけで、いや、本当に偶然だ!もしかしたら居るかもしれないとは……違う、そうではなくてだな!会いたかったというわけではない!そう、確かめに、あ、不自由な思いをしているんじゃないか!だから、私が……だな……その……」
よくわからない言い訳を始めた……。
危害を加えない云々はわかったのだけれど、そのあとの偶然からの居たかもしれないとはどういうことかと……え、ツッコミ待ち?会いたかったのですか?とか聞いた覚えはない。
だって私は一言も口を開いてないのだから。
第二王子が独白している間に私の前にカル、後ろにフランという人間盾を作り、彼の視線から逃れるように長椅子の端に座っている。
出会いも最悪なら、そのあともひたすら最悪。我慢強いと自負している私が思わず手を上げようとするくらいこの国ではベストオブ最低な人。
そんな人とは会話すらしたくないし、下手に何か言って身元がバレても困る。カミラにも極力関わらない、エルヴィス王子に迷惑をかけない!と約束したばかりなのだから黙っているのが正しい。
だから。
「……馬鹿だとは思っていたけど、心の声がダダ洩れよエドル」
「いだっ!?」
エルヴィス王子に丸投げした。
薔薇園に居る筈のエルヴィス王子が玄関から顔を覗かせ第二王子の姿を認めると、眉間に皺を寄せながら第二王子の背後に立ちそのまま頭部に手刀を落とした。
「護衛もつけずになにしに来たのよ」
「お前っ!いきなり後ろからとは卑怯だぞ!いだっ、おい、やめろ!」
何度も頭をパシパシ叩かれ第二王子が抗議の声を上げるが、エルヴィス王子はどこ吹く風だ。
「どうせセドア兄様にチクられて怒られたんでしょ?」
「怒られてなど……いない……」
「だったらなんで護衛を置いて来たのよ」
「護衛など居なくても私は大丈夫だ。それに、あいつらがいると兄上にすべて報告されてしまうだろうが!」
「やっぱりチクられたんじゃない。末の邪魔な弟と手駒の次男が手を組んで王位を狙ってるなんて報告されたら、大激怒よ?暫くは自室に謹慎くらいさせると思っていたのに使えないわね」
「お前……兄上が怒るとわかっていてあのようなことを言ったのか!?」
「当たり前じゃない。エドルにくっついてる護衛騎士なんてセドア兄様の間諜なんだから」
「呼び出されてお叱りを受けるのは私なんだぞ!」
「知ってるわよ。態とだもの」
「このっ……!」
「そもそも、エドルが港でジェイに絡まなければセドア兄様に目をつけられることがなかったのよ。窃盗くらいなら許してあげたけど、その子に関しては駄目よ。他をあたりなさい」
「その子……」
「見るのも禁止よ」
「私に譲ると言っていただろ!」
「王位と引き換えだと言ったでしょ?エドルじゃ一生かかっても無理だもの。だから、その子も無理。一生無理。はい、お終い」
「……」
エルヴィス王子は王位が欲しかったわけじゃない……?
王太子である第一王子に報告されるとわかっていて「王位」という言葉を出した。それによって第一王子と第二王子が仲違いするのを狙ったということだろうか?
というか、報告されるとわかっていて迂闊過ぎやしないだろうか第二王子は。あの場でハッキリと断っておかなければ後々それがどうなるとわからなかったのだろうかこの人。
「いつものように怒鳴って手を上げないのね?」
「……それは、その、あれだ。き、嫌われるじゃないか」
「……誰に?」
「そこの、侍女だ……侍女なんだろ?そうだな?今なら私に偽りを口にしたことを許してやるぞ!おい、カル、そこをどけ!さっきから邪魔だ!見えないだろ!」
目の前に立っているカルがさっきから何度も左右に動いているのは第二王子がこちらを覗こうと動いているから、らしい。
背後に居るフランが「リア様のこと気にしているようです」と教えてくれた。
そう……見えないって、私のことなのね。うん、頑張ってカル。
「あんた、なに言ってるの……気持ち悪い」
「どういうことだ!」
「あのエドルの口から、嫌われるって……やだ、鳥肌が立ってきたじゃない」
腕を摩りながらカルを下がらせたエルヴィス王子が私の隣に腰を下ろした。
え、大丈夫なの?と内心焦りながらエルヴィス王子を窺うが、返答が返ってくる前に第二王子もちゃっかりと対面の長椅子に腰を下ろしていた……。
「で、用件は?この子に会いに来たわけじゃないんでしょ」
「……」
「リア」ではなく「この子」と呼ぶエルヴィス王子は不要な情報を与えたくないのだろう。
余計な情報を此方から与えるのは損だものね。
しかし、エルヴィス王子ならまだしも実の弟を監視して行動を把握しているなんて、第一王子は弟を使ってエルヴィス王子を監視しているのか、もしくは牽制しているつもりなのか。
どちらにしてもあまり良い性格をしているとは思えない。
「……これを、渡して来いと言われた」
暫く無言の状態が続き、急かすようにエルヴィス王子がトントン……とテーブルを爪で叩くと、第二王子が胸元から銀色の四角い封筒を取り出した。
……なにこれ、物凄いデジャヴ。
テーブルに置かれた封筒は、誰がどう見ても招待状という名の召喚状。これを出した人にもよるが、国王陛下、又は第一王子だったら絶対に断れないもの。
「これ……」
エルヴィス王子が封筒を開け中身を確認し言葉に詰まった。
あぁ、やっぱり……見なくてもわかる。それと似たような物を城で何度も目にしていたのだから。
「式典後の夜会の招待状じゃない……」
「お前宛てじゃない」
「そんなの見ればわかるわよ!ジェイとそのパートナー同伴って……なに考えてるのよ」
夜会の招待状に書かれているパートナーとは伴侶か婚約者、それ以外だと家族になる。
ジェイは王子の護衛騎士だが、元は戦争捕虜という奴隷だから家族が居るわけがない。彼からもそう聞いている。港でのことやこの屋敷でのエルヴィス王子と第二王子の遣り取りを知られているのだから、招待状に記載されているジェイのパートナーとは……私のことだ。
「この子は出られないわ。用があって明日にでもこの国を出るの」
「そうなのか?」
返事はせずに軽く頷く。
公の場に出て顔を晒すわけにはいかない。早急にこの国を出た方が良い。兄との連絡手段さえ用意してもらえればフランと二人でなんとかなるかもしれない。
いや、なんとかしなくてはならない。第二王子をお使いに出すくらいだから差出人は必然的に彼より上位の人間……王族だわ。
招待されたからには夜会で挨拶をするのは常識で、このままでは私はオルソン国の国王や第一王子と対面することになってしまう。
それに、他国とはいえ私の顔を知っている者がいないとは限らない。
「何処かへ行くのか?式典までには戻って来られないのか?」
「無理よ。かなり距離があるもの」
「……まさか、海を越えるのか!?」
「エドルには関係のないことよ」
「いや、船が使えないことを知っているのかと、そう思ってな……」
長椅子から腰を浮かせ前のめりになった第二王子は「関係ない」とエルヴィス王子にぶった切られ肩を落とし身体を小さくさせながら船が使えないと呟いた。
――そう、船が使えないと……。
「え」
「嘘でしょ!?」
私とエルヴィス王子が同時に声を発したことに驚いたのか、第二王子がきょとんとした顔をしているが可愛くもなんともない。
これがテディやウィルスならうちの子可愛い!とか思えたけれど、第二王子は招待状を顔面にぶつけられても文句は言えないと思う。
「何も聞いていないわよ!」
「私も昨夜聞いたばかりだ」
「聞いたばかりって……式典まで幾日もないのに。使える船は残っていないの?」
「し、知らない」
「知らないって……軍を動かしているはずでしょ?港には部隊をどの程度置いているの?」
「だから、私も兄上から聞いただけだと言っただろ!」
「軍部のトップはあんたでしょ!」
「私は飾りだ!実際に指示を出すのは全て兄上だ!」
「……っ、だから何度も言ったじゃない。軍部だけは掌握しておきなさいって」
「元々軍部はお前のものだっただろ!それをお前がそのような不愉快な恰好などするからっ!丸投げされた者の気持ちも考えろ!」
「そのあんたが言う不愉快な恰好じゃなければ、私は今頃死んでいたわよ」
「……」
「目障りだった側室の子を海の向こうへ追いやる王妃。それを止めもしないで見ているだけの国王。セドア兄様なんて母親は違えど血の繋がりがある弟を軍部に放り込んだのよ?」
「それは、お前が平民の子だからだ!」
「病弱な幼子を海に出して、後ろ盾もない使えない王子を身分主義者ばかりの軍部に放り込むのは側室の子だから?平民の子だから?嫌がらせで任された仕事をしれっとそつなくこなしていたら不興を買って、逆に大人しくしていれば暗殺者を送りつけてくるような奴等よ?だったら頭が可笑しくなったと思わせるしかないじゃない。私はこの恰好のお陰でそこそこ平和に生き永らえているの」
平民が王族に嫁ぐシンデレラストーリーは産まれてきた子供に大きな弊害をもたらす。
それがどのくらい厳しいものなのか、身分が高い者ほど嫌でも知ることになる。
身分主義で当たり前。だってその身分によって得るものがあり、守られている者達がいるのだから。
けれど、平民だからといって国王が選んだ女性を退けることも出来ない。
政略結婚という対等な互助関係ではなく、愛しているからという感情論だけで動いているのだから、冷静な判断力や理性などあったものではない。
その状態の人に何を言っても無駄で、逆らおうものならなにをするかわからない。無駄に権力を持っている人ほど質が悪い。
例えるならば、ヴィアン国王アーチボルト……頭が痛いわ、本当に。
「私はまだ死ぬわけにはいかないのよ……」
エルヴィス王子は国王の火遊びで出来た子かとも思えたが、だとしたら執拗に王妃や第一王子がエルヴィス王子に攻撃する意味がない。放っておけばよいのだから。
でも、国王が愛した人との子供を守ろうと行動しているようにも思えない。
『今のエルヴィス様のお姿は、あの方なりの精一杯の自衛なのです』
王子が女装なんて、確かに人前に出せるようなものではない。
舞い手のときは城に入り込む為に女装をしていたのかと思っていたけれど、このお屋敷で見たエルヴィス王子は男性の恰好をしていたが口調は女性そのものだった。
死ぬわけにはいかないと呟いたエルヴィス王子は、とても言葉では表せないほどの苦労をしてきたのだろう……。
「私のことはどうでも良いわ。船が出せない理由は?こっちはあんたの不満なんて聞いている場合じゃないの」
「お前はっ……!」
「良いから、早く」
「普段王城で開かれている夜会には上級貴族である公爵から男爵までの貴族が招待されていることは知っているだろ。だが、三日行われる即位式典の夜会初日はそれに加え他国の王族、上級貴族の他にも自国の準貴族的な準男爵や、中流階級である軍士官や上級官史、資本家も招待されているらしい。それと、二日目は同盟国の者達、三日目は属国の者達も同じように招待されている」
「……入れ替わりで下級の者達を夜会に呼ぶのね」
「人脈を広げ、社会的地位の向上を狙う絶好の機会でもあり、まだ婚約者のいない結婚適齢期の貴族の子息や息女の見合いの場所とするようだ」
「かなりの人数に加え、普段顔を合わせることがない下級の者達に混ざって可笑しな動きをされないようにってとこかしら。海の向こうを警戒して港を封鎖したわね」
「……夜会に、行くのか?」
「招待状を持って来たのはエドルでしょ。しかもこれセドア兄様からの招待状よ。船が使えないならどこに行っても同じだし、寧ろこれ以上目を付けられないように大人しくしているのが得策よ」
「だが、兄上は既にその、そ、その女性を気にしていた」
「ジェイの所為ね……まぁ、その辺はどうとでも誤魔化すから良いわ。下手に隠して執着されるわけにもいかないし、これからも清く正しく生きていきたいなら行かないわけにはいかないでしょ。ねぇ?ジェイ」
「んっ!?」
ラバン国と交流があるくらいなのだから、オルソン国もそれなりの大国なのだろう。
王女は政治的な教育を受けないし、王妃教育も嫁ぐ国と周辺国くらいしか学ばないから海を挟んだオルソン国がどの程度影響力がある国なのかわからない。
と、式典の話を聞く限りではかなり大きな国なのだろうと色々考え込んでいたからエルヴィス王子が突然ジェイの名前を呼んで変な声が出た……。
「行きたくねぇがなぁ……」
ジェイの声が真後ろから聞こえるような……。
そっと斜め上を向くと、そこにはボサボサ頭の髭騎士が立っていて、直ぐに顔を戻した。
心臓がバクバクして、嫌な汗が止まらない。
「私も出席するわ」
「お前も行くのか!?」
「えぇ。ジェイは私の護衛騎士よ?側から離すわけがないってわかっていての嫌がらせよねぇ、コレ」
「ついでに俺への嫌がらせでもあるんだろ」
「おい!パ、パートナー同伴だと書いてあるだろ?誰を連れて行くつもりだ!」
「あぁ?誰って……」
「ひぇ!?」
若干パニックになっていた私は急に頭を掴まれ、そのまま顔を上に向かされ又もや変な声が口から零れていた……。
「俺の奥さんと。なぁ?」
「……」
口角を上げ意地の悪そうな笑みを浮かべるジェイは揶揄っているのだろう。
誰をって、私と第二王子を。
こっちは生きた心地がしないというのに……悪魔か、この男は。
自分の命を狙っている男の妻の振りして王城で開かれる夜会に出ろと?なんの罰ゲームよ、それ。
――シュンッ!
あー、もう、どこまで運が悪いのだろう……とジェイではなく天井を見つめていた私の視界の中を鈍く光る切っ先が恐ろしい速さで通り過ぎていった。
「危ねぇだろうが!」
「お黙り!」
直後に頭から手を離して飛びのいたジェイと、長椅子から身体を乗り上げ手にナイフを持つエルヴィス王子。
そっと顔を戻し、手を伸ばした状態で固まっている第二王子を見て溜息を吐いた。
※※※※※※※※
「んっ、結構情報が得られた。もうそれ要らないから片付けておいてくださいブレア」
「はい」
ギギッ……と鳴る扉を閉めて壁に寄りかかりながら手の中にある紙に書き込んでいく。
主が来る前に報告書を作っておかなければならない。
それにしても……戦闘能力的に中間層とはいえ黒服隊が苦戦するような相手だからどんなものかと思っていたのに、案外呆気なかった。
後宮を襲撃したのは恐らく二十名前後。
前以て騒ぎを起こしそちらに目を向けさせその隙に手薄な後宮を襲撃するという手筈で動いていたのだろう。
実際アーチボルト王は近衛騎士隊長を動かし、自身がセリーヌ様の安否確認の為に後宮の方へと足を運んでいた。
セリーヌ様のお部屋の外で黒服隊は交戦、室内では護衛騎士、後宮の廊下では近衛騎士隊が交戦。
その際、黒服隊二名を残し皆負傷……。
「甘い匂い?」
ふむ……と口元にペンを当て、宰相であるジレスから報告されたことを反芻する。
毒ではなく、人を昏倒させる類のもので吸い込むと体の自由が奪われ意識を失う。
ジレスが辿り着いたときにもまだ室内に甘い匂いが漂っていたのに、彼は意識を失わなかった。
「少量なら問題ない?」
意識を失わせる方法ならいくつかある。
けれど、今回の手法はそのどれにも当てはまらない。
「どうして襲撃者達は倒れなかったのか……」
セリーヌ様の侍女は襲撃者達が妙な仮面を付けていたと言っていたらしい。仮面と言っても見たことのない形の物だったとも。
紙に書き込みながら宙を見上げていると、コツン、コツン……と離れた場所から音が鳴った。それを目視し、ブレアが居る牢の扉を拳で数度叩きさっさと出てくるよう促した。
死なない程度に執拗に甚振るのは後でも出来るのに困った部下だ、と肩を竦め先程音がした方へと歩いて行く。
音の出所も、それを鳴らしている者達もわかっている。ジレスから報告は受けているのだから。
「こんばんは。牢屋暮らしはいかがですか?」
廊下を進み一番奥にある牢屋の扉窓に向かってそう声をかけた。
此処に入っているのはセリーヌ様の護衛騎士三人。
アーチボルト王の逆鱗に触れ捜索隊に入れてもらえなかったらしい。
「中々快適ですよ、グエン殿」
「そうですか」
中が薄暗くて良く見えないけど、扉近くに立っているのがウィルスで、その奥にアデルとテディかな?三人共怪我の手当はされているようだ。
「では、お待ちかねの情報を。港と国境封鎖は依然そのまま。停滞している全ての船への取り調べは終え、そのどれにもセリーヌ様は居ませんでした。あ、大丈夫です。ヴィアン国とは別に忍ばせてある番犬を使って確認していますから。大分改善されたとはいえ、後宮へと手引きをするような輩がいる国の人達は信じていません」
「助かります」
「いえいえ。ヴィアン国の為ではなくて、主の為に動いているだけです」
そう、ヴィアン国なんてどうでも良い。
「今わかっていることはアーチボルト王がやっぱり馬鹿だってことと、襲撃者達の服の布の素材、暗器、あとは奥歯に仕込まれていた毒、肌の色、番犬から報告のあった夜間に停泊していた船の形に船員の特徴と……面白いほど沢山あります」
「ある程度は絞り込めたのだろうか?」
「はい。予想があっていれば、数日中には何処の国と繋がっているのかまでわかりますよ」
「後宮へ手引きした者達は?」
「そっちは貴族が宰相さん、教会がルーティア大司教の管轄なので。もう捕縛は完了していると思うんですけど。教会の方は……生きているかなぁ」
一応まだ背後も洗いたいから生かしておいてくださいって言っておいたけど……うーん、ルーティア大司教だから駄目かもしれない。
貴族の方は手が出せないけど、教会関係はやりたい放題だからあの人。
「今回の黒幕はあまり頭が良い方ではないみたいです。狸さんじゃないのが残念ですね」
「ベディンク伯爵の手駒だった者かな……」
「そうですね……狸も率先してセリーヌ様の捜索に動いているみたいですから、とっくに切られた人達だと思います」
「レイトン様は?」
「明日か明後日には到着すると思います。アーチボルト王との会談である程度の情報の擦り合わせと、その後の動きについて細かくお話すると……あ、主が来たらそこから出られますよ」
「どうだろう……かなり怒らせてしまったようだから。でも、会談の席には同席しておきたいかな。まぁ、それが叶わないなら勝手に此処を抜け出すことにするよ」
「その場合は主の指揮下に入ってくださいね。勝手に動かれると迷惑なので」
「了解した」
……勿体ない。
セリーヌ様の今の状況がわからないからこそ早く動かなければならないのに、有能な者を牢に入れておくなんて、アーチボルト王はやっぱり無能だ。
港から海を越えて一番早く着くのがオルソン国の領土。内密に入国するとしたら向こうの協力が必須だけれど…主が連絡を取れる相手の身分が王族とはいえ権力などない人だから難しいかな。
セリーヌ様大丈夫かな……素性が知られているから、危害は加えられていないかもしれないけど、万が一、傷が一つでもついているようなことがあれば主が泣いてしまう。
「お怪我をされていなければ良いなぁ……」
「……」
黙ったまま殺気を滲ませるセリーヌ様の護衛騎士に手を振り、まだ牢から出て来ない部下を力尽くで引っ張り出す為に剣を抜いてグエンは深く溜息を吐いた。
活動報告の方に子話をのせました。
かなり短いですが、覗いてみてください。




