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『8/6 ノベルstory07 発売』私は悪役王妃様  作者:


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78/113

対応


後宮の一室、王妃であるセリーヌの部屋が何者かに襲撃されてから数刻後。

後宮へセリーヌの安否を確認しに行ったアーチボルトの代わりに、各部署に指示を出していたジレスは護衛を連れ後宮へと訪れた。

本来であれば国王であるアーチボルト以外の男性は後宮内へ足を踏み入れられないが、緊急時のみ国王の許可を得ていれば可能となる。

後宮の門を潜ったジレスと数名の近衛騎士が最初に目にしたものは、通路で倒れ伏している騎士だった。急いで駆け寄り、倒れている騎士に何度か呼び掛けるが、意識が無く答えることはない。

訝し気に顔を上げ開かれたままの扉が目に入り、嫌な予感を感じ室内へと足を踏み入れたジレスは室内の光景に「アーチボルト様!」と思わず叫び声を上げていた。

部屋の中央に置かれているソファーの直ぐ横に転がるように倒れていた国王、その手前には王妃専属の護衛騎士達と侍女達がばらばらに倒れている。


「アーチボルト様!おいっ、アーチボルト!」


ジレスは抱き起こしたアーチボルトの身体に視線を巡らせ、傷が無い事を確認し強めに頬を叩いた。微かに震える瞼が開かれ「……ジレス?」と声を出した事に安堵し、背後で周囲を警戒していた近衛騎士隊に倒れている者達の対処を任せ、甘ったるい不快な匂いが漂う室内に眉を顰め、アーチボルトをソファーに寝かせた後中途半端に開かれた窓を全開にした。

背後で起き上がりながら頭を振っているアーチボルトに静かに近づき、頭に響かぬようそっと声を掛け事態の把握に動いたのだが……。



「頭が、痛い……」

「何があったのですか」

「分からん……セリーヌの護衛騎士が騒ぎ、急に意識が無くなった」

「アーチボルト様。セリーヌ様は何処に?」

「何処だと?何を言って……」


ジレスの問いにノロノロと顔を上げたアーチボルトは室内を見渡しながら目を見開いた。

自身と同じ様に意識を失っていたのか、セリーヌの護衛騎士達が近衛に起こされている。侍女もまた同様だ。

けれど、先程までアーチボルトの腕の中に居たセリーヌと、一緒にこの部屋へと来ていたフランがこの場には居ない。


「セリーヌとフランはどうした……?」

「フランもこの場に居たのですか?」

「あぁ……」

「セリーヌ様とフランの姿は見ていません」

「どういう事だ?先程まで、確かに此処にいたのだぞ!」

「直ぐにセリーヌ様の護衛騎士と侍女を起こしなさい!それと、近衛騎士隊隊長を呼んで来なさい!」


アーチボルトは倦怠感のある身体で立ち上がり、ふらついた身体を支えようと差し出されたジレスの手を払い覚束ない足取りでゆっくりと歩いて行く。

アーチボルトが真っ直ぐ向かった先は、騎士に支えられ身を起こそうとしていたウィルスだった。


「何をしていた……お前たちは何をしていたのだ!」

「……」


ウィルスの前まで来ると崩れ落ちるように床に膝を突き、狼狽えている王とは違い平静を保っているウィルスに腹が立ったアーチボルトは黒い隊服の胸倉を掴み上げた。


「聞こえているのか……?お前はセリーヌの護衛騎士だろう!主を守らずに何をしていたというのだ!」


目の前に居る男に苛立ちをぶつけるかのように、掴んでいるウィルスの胸倉を引き、間近で目を合わせながら叫んだ。

欠点などなく、完全無欠と認識されていた英雄は地に倒れ守るべき主を見失った。ならばもっと狼狽えて見せろ。焦り、苛立ち、屈辱だと顔を歪めるべきだ。

そう願うようにウィルスの胸倉を掴んでいたアーチボルトの手は「失礼致します」と言うウィルスの言葉と共にあっさりと外されていた。


「アデル、テディは……無事なようだな」

「……はい」

「平気です」

「テディ、意識を失う前までの記憶は?」

「部屋へ入って来た者達との戦闘中に意識を失いました」

「アデルは?」

「襲撃者がセリーヌ様を抱え上げた所までです」

「そうか……。ジレス様、何者かが複数人部屋へと押し入り、セリーヌ様を拉致しました。その際、事前に甘い匂いが室内に充満し、皆意識が朦朧とした状態でした」

「……この不快な匂いですね」

「聞いていた通りテディは戦闘中、アデルと私はセリーヌ様が抱え上げられた所までの記憶しかありません。襲撃者は全員黒い衣服を纏い、顔を妙な面で隠していました」

「正確な人数も顔も分からないということですか……」

「近衛騎士隊長は?」

「あの手紙を受け取って直ぐに近衛騎士隊、第一騎士団に指示を出していたので此処へは来ていません。今呼びに行かせています」

「では直ぐに国境の封鎖、現在港に停滞している船全てへの取り調べ許可を。第二騎士団も動かしそちらは王都へ。念の為、城の中を第三騎士団に捜索させてください」

「そうですね、書類等は直ぐにでも用意しておきます」

「近衛騎士隊長が来たらジレス様からお話を。私達は先に港へ向かいます」


状況を整理しながら指示を出すウィルスに周囲の者達は何も言わない。

王妃が何者かに攫われたという一刻を争う状態の中、本来指示を出す者が取り乱しているのだから仕方がない事だったのだが、ただ一人、アーチボルトだけは納得がいかなかった。


「勝手なことを……!お前達が捜索へ出る事を誰が許可した!」


まだ回復していない身体で立ち上がり、咄嗟に壁に手をついた王へ皆が意識を向けた瞬間、アーチボルトは側にあった花瓶をウィルスへと投げつけていた。

避けることもせずに肩に花瓶を受けたウィルスに再度苛立ち、尚も何か言い募ろうとしたアーチボルトはウィルスの握り締めている左手から血が滴っているのを目にし、一瞬怯んだが(何が、英雄だ……)皮肉な笑みを浮かべた。


「セリーヌの専属護衛騎士であるウィルス、テディ、アデルの三名は城を出ることを禁ずる」

「アーチボルト様!」

「黙れ、ジレス。国王である私を危険に晒し、主であるセリーヌを奪われた騎士など役に立たん。どうやらそこの英雄などと自惚れている者は怪我もしているようだしな」

「ですが、襲撃者を追うのであれば彼等を捜索に向かわせるべきです」

「必要無い。セリーヌとフランの捜索はクライヴに指揮を取らせる」


溜息を吐くジレス、黙ったまま動かないウィルス、唇を噛み締めるテディ。どうすれば良いのかと視線を彷徨わせる近衛騎士達。この場で自国の王の言葉に逆らえる者など居ない。

その筈だった。


「お言葉ですが」


逆らえば自身の立場が危うくなると分かっていて、それでも行動に移したのはセリーヌと前世からの絆を持つアデルだった。


「私達はセリーヌ様の専属護衛騎士です。主であるセリーヌ様を無残に奪われたのなら取り返すのも私達の役目かと」

「……お前、誰に向かって言っているのか分かっているのか!」

「誰に、とは?私の目の前におられるのは我が国の王のみですが」

「職務を全う出来ず、尚且つ王である私の言葉に逆らうと言っているのか!」

「実際に襲撃者を目にし、剣を合わせたのは私達のみです。それと、失礼ですが何も知らないクライヴ様に指揮を取らせるよりも、ウィルス様に指示を仰いだ方が確実にセリーヌ様に近づくかと」

「クライヴはこの国の近衛騎士隊長だ。僻地に居た者よりも城の事も城下の事も熟知している」

「……そのお偉い隊長様が指示していた警備を潜り抜けてこの場に辿り着いたんだろうが」

「なんだと……!」

「時間が無いので私はこれで失礼致します。命令違反の罰ならセリーヌ様を取り戻したあとにお受けいたします」

「そこの者を牢に入れろ!いや、セリーヌの護衛騎士は全員牢に入れておけ!良いか?フランに何かあってみろ……この場に居た者達は皆処罰する!」

「……正気かよ!フランに何かあれば……?王妃であるセリーヌ様よりもフランなどと本気で言っているのかよ、あんた!」

「何が悪い!狙われたのはセリーヌだ。それを、何の関係もないフランはアレを助ける為に巻き添えになっただけだ。フランは私の、この国の未来の正妃だと言うのに」


ベディングの手の中から少しずつ自由を手にし、歪んでいたものが正されてきていたと思っていた。それがまた可笑しな方向へと歪んできている。


「アーチボルト様……」


ジレスは唖然としアーチボルトの名を呼ぶが、幼馴染でもある見知った王が見知らぬ別な者に見えていた。

一方、冷めた瞳でアーチボルトを見つめていたアデルは、話しにならないとばかりに踵を返そうとし周りを近衛騎士隊に取り囲まれていた。舌打ちをし、剣に手を掛けた所でウィルスがアデルを手で制した。


「牢に入れとおっしゃるのであれば、否はありません。ですので、直ぐにセリーヌ様の捜索を」

「お前は、またそうやって……!」

「このような時に揉めている場合ではありません。お早く」

「近衛騎士隊!その者達を牢に連れて行け!」


困惑した騎士達に促されながらウィルス達は部屋を出て、重い足取りで廊下を進んで行く。


「すみませんでした」

「……いや、アデルは悪くない」


隣を歩きながら謝罪するアデルにウィルスは苦笑した。

護衛でありながら守りきれずに、捜索することすら禁止されれば誰でもアデルのように不満をぶつけてしまうだろう……相手が悪かったのでこうなってしまっただけで。

そう思ったのはウィルスだけでなくテディも同じだったのか、ブンブン首を縦に振って同意している。


「その左手は」

「あぁ……うん、役に立たなかったな」


ウィルスが握っていた手を開くとまだ傷が乾いていないのか、じわっと血が出ている。

隊服が黒いので分かりにくいが、実は手の平よりも腕の傷の方が深いのだ。

朦朧とする意識を繋ぎ止める為に己で利き腕でない方の手の平を傷つけ、それでも足りなく態と致命傷にならない程度に左腕で剣を受けていた。

けれど、最後は目の前で何も出来ずにセリーヌを奪われてしまった。

ウィルスは見ている事しか出来なかった自身を恥、当然の報いとばかりにアーチボルトの投げた花瓶を避けずにいた。


「利き腕と足さえ無事なら構わなかったから」

「……左腕一本敵に差し出す気なのかと驚きましたけどね」


何でもない事のように言うウィルスに胡乱な目を向けながらアデルは布を差し出した。

垂れてきている血の量からして軽傷ではないと判断し、実際に戦闘中にちらっと目にした頭の痛い光景を思い出した結果が止血しろということだった。

その二人の遣り取りを聞いていたテディはアデルの脇腹を強く押した。


「いだっ!」

「アデルだって傷だらけじゃないか。僕は何も出来ずに意識を失っただけだよ……」

「襲撃者に一番早く気づいて足止めしていただろ」

「そうそうに脱落していたら意味がないよ……」

「大丈夫。次に脱落したのは俺だ」

「胸張って言うことじゃないから」


直ぐにでもセリーヌの捜索に出たい気持ちは皆同じだ。逸る気持ちを押さえながら、不安を軽口で誤魔化すしかない。

先程アデルが王に逆らったのも、ウィルスが大人しく牢に入ると言ったのも全てセリーヌの為。

今ここで近衛騎士を倒し、城を抜け出し捜索に当たることも可能だが、手掛かり一つない状態では何も出来ずに時間だけが過ぎてしまう。それならば暫く大人しくしていて情報が入り次第動く方が得策だ。

ウィルスはセリーヌの影が動いていたことを気配で確認していた。室内ではなく外で気配を感じたということは相当な人数が今夜後宮を襲撃したと分かる。

影も護衛騎士も簡単にあしらった敵にクライヴ率いる部隊がどれほど遣り合えるのか。セリーヌとフランの居場所さえ掴めていない中、アーチボルトはそれをどうやって特定しようと言うのか……。

心配事は多々あるが、セリーヌの護衛騎士は皆動くことが出来ない。

だが、セリーヌに何かあり、護衛が動けなくなった場合の事は前以て侍女達と話し合っていた。部屋に居るあの黒い鳥に手紙の入った筒を括りラバンに送り出せば良いだけ。

セリーヌの兄であり、黒服隊を持つレイトン・フォーサイスならばきっと何をしてでもセリーヌの居場所を探し出すだろうから、動くのはそれからでも良い。

三名とも自身の不甲斐なさを嘆くことなく、来るべき時に備えるかのように瞳の奥をギラつかせていた。



※※※※※※※※



夜明けと共に、ラバン国の城門にはセリーヌに付けていた影が、レイトンの寝室には黒い鳥が同時に姿を見せた。

愛する妹から何時手紙が届いて良いように開かれている小窓から入って来た黒い鳥、レイトンの愛称から名付けられたレイは寝ている飼い主の頭を鋭い嘴で突いた。


「痛い……レイ……?」


気配に敏感なレイトンも信頼している部下や可愛がっている鳥には甘く、無防備でもある。

レイの首元に付けられている筒を取り、何時もより早い時間に手紙が届いた事で首を傾げた。

早く中身を見ろと急かすかのように何度も羽でレイトンの顔を叩くレイに不安を覚え、乱暴に筒の中から紙を取り出し、開いたときに見覚えの無い字とその内容に顔色を変えた。


身支度もせず、薄手の寝間着を着たままレイトンは執務室のソファーに座っていた。

其処には侍従兼黒服隊であるギーと、セリーヌの元護衛騎士であるクレイとブレア夫妻。

そして、レイとほぼ同時に城に到着したセリーヌに付けていた影の内の一人。

手紙を受け取り直ぐに行動に移したレイトンは、影から聞かされている報告の内容に怒りを露わにすることもなく、厳しく叱咤しているわけでもない。

ただただ無表情のまま、床に膝を突く影を見下ろしたまま一言も発していない。

それなのに、部屋の気温が徐々に下がっているかのように錯覚してしまう。

黙ったままだったレイトンが口を開いたのは影が知りうる限りの全ての状況報告を済ませた後だった。


「セリーヌを守るようにと、影を付けたんだ。その采配は……ギーに任せてあったよね」


背後に立つギーに振り返ることもなく問いかけたレイトンの表情は相変わらず無のまま。

任務に失敗した影ではなく矛先がギーにきたことにも動じず「はい」と本人は軽く返事を返した。


「付けられる数が少ないから、より良い者をと、そう指示を出してあった筈だよ」

「はい」

「クレイやブレアを……そう言った僕に反対し、そこの者達でセリーヌを守れると言っていたよね?」

「失敗したみたいです」


可笑しいな?と又もや軽く返す黒服隊の長に、レイトンの前で膝を突いている影の青年は冷や汗が止まらない。

主であるレイトンの地雷が妹であるセリーヌだと誰もが知っている。最愛の妹の為に本来であれば王や王太子にしか付けない影を数名とはいえ他国に嫁いだ妹に譲った。

だからこそセリーヌの影として送られた三名の青年達は、未婚の者が妹の側に居ることを許せない主の為にその名の通り影ながら最大限の配慮をし任務に当たっていた。

けれど、主の言う通り三名はこの場に居る誰よりも弱いのだ。黒服隊の中でも能力は中間層であり、長であるギーから話が来た時には一度断ってもいる。

ゴクッと唾を飲み込み、顔を上げられないまま耳をそばだてるしかなかった。


「ギー……」

「黒服隊の一番は主様です。クレイはヴィアンとの国境に待機させて置きたいですし、ブレアは元々主様のものです。我も、グエンも駄目ですし、あとは上から除外していったらその子達くらいしかいませんよ?最善の人選でした!」

「分かってはいたけれど、やはりブレアだけでも行かせるべきだったよ……」

「駄目です。影は国王様と王太子様を守る為に存在していて、今回の事も国王様に内緒にして動いているんですよ。我が主様の命令だから仕方なくそこの子達を貸してあげているんです。ばれたら国王様にお仕置きされちゃいますよぉ」

「仕方なく……」

「はい。何度でも言います。黒服隊は主様の犬です。でも、他国へ嫁がれたセリーヌ様よりも、次期王であり大好きな主様の方が大切なんです。だから、戦力は削れません」


以上!と説明しきったギーの言葉に、レイトンの無表情だった顔は冷笑へと変わった。


「僕の一番は、国でも民でもなくセリーヌだよ。あの子が傷つけば僕も傷つく。あの子が泣けば、僕も泣く。あの子の手足が無くなれば、僕も自身の手足を切り落す。あの子に万が一の事が起こり、命を失えば……僕も後を追うよ」

「主様……」

「それはクレイとブレアも一緒かな」

「はい」

「はい」

「主様ー」


憎しみの籠もった目でクレイとブレアに睨まれ、大好きなレイトンはギーの方を見もしない事にギーは今にも泣きそうな顔をして情けない声を上げた。

その時、ノックの音と共にカオスな執務室にギーと双子であるグエンが入って来た。

「ううっ……」と唸っているギーを見てある程度予想したグエンは肩を竦め、朝早くから走り回り取り付けた許可書をテーブルに並べた。


「国王様からあちらの国に渡されるお手紙と、ラバン国の所持している船を使う許可書。一応兵を動かす許可も頂いて来ました。これに関しては、有事の際という限定されたもので国王様がそう判断された時のみです」

「……全権僕に渡せば良いものを」

「主に全権渡すと国が一つか二つ潰れるので駄目だとおっしゃっていました。それと、黒服隊とヴィアン国に潜り込ませている者達に関しては、国王様は関与しないそうです。好きにして良いと言うことです」

「その代わり責任は全て僕にと言う事かな」

「勿論、主の行動は認められていません」

「……」

「睨んでもそこは変わりません。主は他国の使者との会談と、教会に与する聖女とやらの面会が控えていますから、それを終えるまで大人しくしていて下さい」

「その後は好きにしても良いのかな」

「恐らく縁談の一つや二つと引き換えになると思いますが」

「……」

「城下の街に居る者達にはレイをお借りして手紙を届けさせましたから、今頃どんなに些細な情報でも確実に集めていると思います。国境付近で待機している騎士達にも同様に手紙で知らせてあります」

「そう、ありがとう」

「取り敢えず、私とブレアでヴィアン国に参ります。目で見て確認したい事もありますし」

「やり過ぎないようにね」


「ブレアは主様のものなのにー」と嘆く双子を無視し、ブレアに支度するよう促したグエンはレイトンの言葉にキョトンとしたあと、にっこり微笑んだ。

ギーと双子であるグエンを穏やかで優しい天使だとセリーヌは思っているが、彼は黒服隊の情報処理を一手に引き受け、黒服隊の新人の躾も任されている紛うことなきあの黒服隊のナンバー2。

そして、ギーが危ないと称しているブレアの直属の上司でもある。


――その天使グエンが最も得意としているものは。


「肉片にしないように頑張ります」


拷問であった。



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