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『8/6 ノベルstory07 発売』私は悪役王妃様  作者:


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焦がれていたもの


「何をなさっているのですか?」

「……アデル」


昨夜借りた本を読みながら、私だけが分かるようにメモ書きしていたら、いつの間にか背後にアデルが立っていた。

だから、ちょいちょいと手招きし本を指差すと、アデルは私の背後から覗き込み、稀にページを自ら捲りニヤリとあくどい笑みを浮かべた。


「これは、昨夜の方からですか?」

「えぇ」

「これはまた、大層な土産ですね。余程セリーヌ様を気に入っていらっしゃるようで」

「お詫びだと、そう言っていたわよ」

「お詫びにしては……いや、セリーヌ様の身分と不随する価値を考えれば、相殺されるのでしょうが」


顎に手を当て思案する姿は前世で良く目にした透君の癖。若さが感じられないと姉さんがからかっていたことがある。

姿形が変わっても、中身はあのままなのだと……三人で過ごした日々を懐かしい。


「ウィルス達は?」

「ウィルス様とクライヴ様は、騎士団長のエルバート様に引きずられて訓練所へ。テディは部屋の周辺を探りに、私は机にかじりついて離れないセリーヌ様を心配したアネリに頼まれて様子を窺いに」

「……」

「もう数刻同じ体勢でしたが?」


思っていたよりも時間が経っていたらしい。

アデルの口調は柔らかく口元は弧を描いているのに、目が笑っていない……。これはかなり怒っている。


「返す前に、写してしまわないと……って」

「適度な運動と休憩は必要ですよ」


恐々と言い訳を口にしてみたが、アデルは一層笑みを深くしゆっくりと、言い聞かせるように言葉を紡ぐ。

助けを求めようと部屋の隅に控えているアネリに目を向けるが笑顔で首を振られ、帝国の侍女達は普段あれだけ美形な皇帝様を目にしているというのに、瞳をとろんと溶かしアデルに見惚れている。

駄目だわ……助けてくれる人が見当たらない。


「……気を付けます」

「えぇ、是非、そうして頂けると助かります」


侍女達に物申したい!これのどこに見惚れる要素があると!?

(ふざけんなよ?あぁ?)という副音声と共に笑顔で凄まれ、プルプルと震えているのに!

私の手元にある本をパタンと閉じ、手でアネリに何か指示を出すアデルを見つめながら、先程アデルが口にしたウィルスとクライヴが騎士団長に……という言葉を思い出した。


「エルバート……って、確か皇帝直属の騎士団長よね」

「皇帝陛下の乳母である方の息子だそうです。ある程度の年齢までは兄弟のように育ったと聞きましたから、信頼のおける側近でしょうね」

「どこでそれを?」

「宮殿内にも、口の軽い者はいますから」


本人は曖昧にぼかしたつもりだろうが、色香を含ませた声音で台無しだわ。

宮殿内で私から一時も離れていないアデルが接触出来る人物など侍女しかいない。敵国の王妃の側に付ける侍女の口が軽いわけがない。

ナニをしたのよ?と、胡乱な目を向けるとアデルが顔を顰めた。


「……なんですか、その目は」

「いいえ、別に?」

「別に、という顔はしていませんが……」

「百戦錬磨だと、言っていた人がいたのを思い出しただけよ?」

「誰がって、あいつか……」


幅広い年齢層の女性とお付き合いをしていた透君を、姉さんは【色魔】だの【百戦錬磨】だのと例えていた。本人も心当たりがあったのか、最後の方は唸るように声を出していた。

女性を弄ぶような付き合い方はどうかと思うが、それでも良いと相手が納得していたというのだから凄い。姉さんだってあの姿になってからは女性の影は無かったが、それ以前は酷いものだったと義理父が言っていたし。

前世の私は男性全般を避けて過ごしていたから経験値以前の問題で……。

そこでハッと気づき勢いよく顔を上げ、一瞬たじろいだアデルに囁くように「ねぇ」と声をかけた。

ずっともやもやしながら気になっていたことがあったのだ。

声のトーンを落としたからか、周囲に聞かれたくないことなのだと察してくれたアデルは目の前に膝をつき、なるべく近くに来てくれた。


「答えてほしいことがあるの」

「ものによりますが……何かありましたか?ウィルス様とテディも呼びましょうか?」

「緊急性のあることではなくて……」


アデルの真剣な物言いに躊躇いながら、どう言えば良いのかと悩む。

私は男性が苦手、なんて生易しいものではなく、憎んでいると言った方が正しい。些細な接触でさえ震え、過度に距離を取らなければ話すことさえ不快に感じる。

何も悪いことはしていない男性からしてみれば不愉快なことだろうが、自分ではどうすることも出来ない。セリーヌの身内であるレイトン相手ですら自覚は無かったが震えていたみたいだし。

それなのに……。


「皇帝陛下のことなのだけれど」

「はい」

「触れられても、嫌悪感が無いのよ……」

「……」

「私が男嫌いだと知っているでしょ?セリーヌになってからもそれは変わっていないのに……アデル?」


相槌もなく黙ったままのアデルに下げていた視線を向けると、今迄向けられたことのない冷たい瞳が私を見据えていた。

思わず背を逸らし距離を開けると、何かを耐えるかのようにきつく目を閉じたアデルは消え入りそうな声で「それは……」と発した。


「それは、アデルとしてでしょうか?それとも、俺ですか?」

「透君よ……」

「なら……」


スッと目を開けたアデルは、普段の気取った王子様風でも、先程見せた冷たいものでもなく、あの幸せだった日々を過ごした透君そのものだった。

目を細め、どこか人を小馬鹿にしたように笑う彼に胸が熱くなり、伸ばしかけた手は彼の一言でピタリと止まった。


「父親だ」

「……は?」


その訳の分からない一言で……。


「綾は、年上の包容力のある男に弱いからな」

「年上って」

「楓の親父とか、もろ弱いだろ?」

「弱いって……それは、義理でも父親だし、あんな私にも優しくしてくれて」

「楓もそうだったしな。身内ってのもあったかもしれないが、その二人は嫌ではなかっただろ?」

「家族だし」

「あと、俺とか」

「……」

「最初は滅茶苦茶避けてくれたよな?俺は変質者か!って、何度思ったか」

「それは……」

「どれだけ俺が貢いだかっ……あの手この手でおびき寄せ、立ちはだかる壁に何度も殴られっ……」


顔を覆い「ううっ」と泣く真似をするアデルに侍女達から微かに悲鳴が上がった。何を話しているのかは聞こえていないだろうが、物凄くこの絵面は不味い。絶対、態とだわ!


「百戦錬磨とか、俺じゃなくて綾のことだよな?」

「もうわかったから、顔を上げてちょうだい」


手を外し、ニヤリと笑うアデルに頭が痛くなる。


「根に持っていたわね……」

「とんでもない」


心外だとばかりに首を振るアデルに「で?」と、続きを促してみたが首を傾げられイラっとした。

そう、透君ってこういう感じの人だった……。いつだって何を考えているのか読めなくて、あの姉さんですら手の平で転がしていたこともあったくらいだし。


「父親って、どういう事よ」

「あぁ?そのままだよ」

「だから、意味が分からない」

「綾は、皇帝陛下と父親を重ねているってことだよ」

「父親……」

「はい、終わり」


父親、父親と。そればかり口にし、あろうことか勝手に話を終わらせ立ち上がってしまった。


「これ以上の相談は有料になります」

「えっ、まだ答えをもらっていないじゃない」

「答えただろ。あとは、自分で考えろ」

「……それなら、アデルの答えをちょうだい」

「残念。初めにどっち?って聞いただろうが。アデル君の方はもう受付時間を終了しました」

「もう……」

「まぁ、綾としてじゃなく、セリーヌとしてここで生きていくんだったら……俺じゃなくアデルの答えを聞くべきだったよ」

「アデル……?」


音もなく近づいて来たアデルに両耳を塞がれ、私を見つめたまま口をパクパクと開くアデルを眺めていた。何か話しているが、この状態では何も聞こえない。

満足したのか、微笑みながら手を離した透君は数歩後ろに下がり、完璧にアデルに戻ってしまった。


「何て言ったの?」

「大したことではありません」

「なら、教えてちょうだい」

「これ以上はアネリに叱られてしまいます。夜会の準備をされなくては」


ほら、とアデルが身体をずらした先には何度も頷いているアネリ達が見え、かなり時間が押しているのか、準備万端で私が来るのを待っている。


「行ってくるわ」


誤魔化され、腑に落ちないまま、私は夜会の支度をする為に別室へと移動した。


「俺は……あいつと違って敵に塩を送るような人間じゃないんだよ」

『気づかないで。側にいさせて。俺から、また奪っていかないでくれ』


アデルが微笑みの裏で何を想い、私に聞かせないよう口にした言葉の重みに気づくこともなく、知らぬうちに大切な人を傷つけていた。

愚かな私は後に後悔することになる。

気付いたときには、焦燥と絶望の中、大切な人を二人も失うことになったのだから。



※※※※※※※※



アネリと侍女達の気合の賜物か……本日の装いも凄いことになっている。

アネリだけではなく、帝国側の侍女達からも熱烈な賛辞を受けた私は引き攣った笑みを浮かべていたことだろう。彼女達は私が敵国の王妃だとちゃんと認識できているのだろうか……。

肩紐がなく、デコルテと背中を大胆に見せるドレスはウエスト位置が高く、そこから裾にかけて徐々にボトムが広がっている。真っ白なドレスの長い裾には赤い刺繍が施されているのだが、これ、どこぞの皇帝陛下のマントで同じようなものを見た気がする……。

結い上げた髪に引っ掛からないよう装飾品をアネリに付けてもらいながら、鏡越しに見える自身の姿にげんなりした。


「サイズがピッタリね……」

「憎らしいほど、セリーヌ様に似合う物を誂えてきましたわ」


当初は兄から贈られたドレスで夜会に臨むつもりだったのだが、全身を磨き上げられいざドレスを!と、浴室から出た私の前に差し出されたのがこのドレスと装飾品だった。

「皇帝陛下からです」と言われて、突っ返して来いとは言えなかった。

アネリと顔を見合わせ、一度袖を通してサイズ云々と理由をつけてお断りしようとしたが、ドレスは見事にピッタリ……。


「お兄様かしら……」

「恐らく、レイトン様かと」


情報を漏洩した犯人は直ぐに見つかった。ヴィアン国でもドレスを作ったのだからそこの可能性もあるのだけれど、そんな面倒な事をするくらいならセオフィラスは兄に聞いた方が早い。あの兄が私を紹介するくらいなのだから、サイズぐらい教えてあげるだろう。


「では、向いましょうか」


静かに頭を下げたアネリ率いる侍女達、黒い隊服を身に纏った専属護衛、エスコート役の為に着飾ったクライヴ。

周囲を見渡し、不敵な笑みを浮かべ、尊大に言い放った私はクライヴに手を差し出した。



※※※※※※※※



帝国の、皇帝陛下の戴冠式後の二度目の夜会。

部屋を出た私達は迎えに来た侍女に案内されながら宮殿内を進み、夜会の会場である広間へと辿り着いたのだが、「此処で暫くお待ちください」と侍女は広間へと入って行った。

恐らく、私が到着したことをセオフィラスに知らせに行ったのだろう。

周囲に人の気配が無いことから、既に夜会は始まっていると思っても良い。

でも……可笑しいわね、指定された時間前なのに。

まさか、とは思うが……遅れて登場とかの演出だったら遠慮したい。あのお出迎えの所為で各方面に顔を覚えられてしまったのだから。

若干緊張しながらも(さり気なく。目立ちませんように!)と、祈るように扇子を握り締めながら目の前を睨んでいたとき、静かに扉が開かれた……のだが……。


「ヴィアン国王妃、セリーヌ様」


という、余計な紹介と共に私の希望は見事に砕け散った。

入り口から皇帝であるセオフィラスが座っている玉座まで真っ直ぐに赤い絨毯が敷かれ、その左右に帝国の貴族達が並び立っている。

これ、初日にも同じ光景を見たわよね……。なに?再現?何なの?


「セリーヌ様」

「……」


侍女に中へ入るよう促されるまま一歩広間へと進むが、私に一斉に向けられた視線に怯みそうなる。

こんな見世物のような、興味やら悪意やらと様々な視線を浴びてこの中を通って来いと、そういうことですか……?

何の嫌がらせかは知らないが、コレも皇帝陛下の御厚意だとでも言うのだろうか。わぁ、嬉しい……。

エスコート役のクライヴの腕から手を離し、汗ばんだ手で扇子を握り直した。


「着いてきなさい」


微笑みを浮かべていた顔を無に変え、毅然とした態度で護衛を連れ進んで行く。

本来であれば女性は男性にエスコートされるものなのだが、もう知った事ではない。

見たければ見れば良い。当主や子息、婦人方の好奇な視線も、令嬢方の隠すことなくさらけだした悪意も、可愛いものよ。

押し静まった広間の中、上段に座っているセオフィラスまでもう少しのところで、彼は立ち上がり私の元へと下りて来た。


「流石だな」


誇らし気な、それでいてどこか安堵した表情で手を差し出すセオフィラスに無表情で対応する。ごめんなさいね。怒りのあまり、表情筋が仕事を放棄いたしましたの。

手を取られ階段を上がり、セオフィラスの隣に立たされたが愛想笑いすらしてやらない。

目立ちたくないと言っていた数分前の私に今の状況を教えてあげられたら、多分その場で崩れ落ちるだろう。


「今宵の、私の戴冠祝いの夜会に、ヴィアン国の王妃であり、ラバン国の至宝であるセリーヌを招待した。彼女は私の大切な、客人だ。セリーヌを侮り、危害を加えるような者がこの場には居ないとは思うが……もし、そのような事があれば、帝国の皇帝である私を侮り、剣を向ける行為だと肝に銘じておくが良い」


前言撤回。今、崩れ落ちても良いでしょうか……。

今のセオフィラスの発言で一層強くなった視線を浴びながら、皇帝の玉座の横に用意されていた椅子に座らされた。

そして、急遽用意した物とは思えないほど素敵な椅子で、代わる代わる訪れる皇帝陛下への挨拶を、何故か一緒に受けるという気の遠くなる時間が始まっていた。


「踊るか?」

「お断りいたします」


ある程度捌いた所でやっと終わりを迎え、向けられていた好奇の視線は無くなっていた。

皇帝陛下への挨拶の序に、当たり障りのない会話をしたことで満足したのだろう。元々彼等から悪意は感じなかったし。

残るはこちらを睨み続けている一部の令嬢方だけだろう。本当に、面倒くさい。


「踊らないのか?」

「皇帝陛下の手厚い歓迎を受けて、心身共に気力がありませんの」

「……怒っているな」

「えぇ。怒っています」


私はセオフィラスの臣下でもなんでもないのだから、お断りしても構わない筈。

それに、この無表情を見て怒っていると察することが出来ないのなんてアーチボルトぐらいだわ。


「なら、機嫌を損ねた詫びをしなくてはならないな。次は何が欲しい?」

「軽々しくそういった事をおっしゃると、図に乗りますわよ」

「そうだな、次からは気を付ける」


ひとすじ垂らしてある髪を手に取り、弄ぶようにクルクルと指に巻き付けながら穏やかな笑みを向けられては、その手を払うことも出来ない。

……そもそも、手が触れる距離にいて嫌ではないということが可笑しいことで。

テディは庇護欲を掻き立てられて、男性というよりも弟みたいなものだし。アデルは透君で、ウィルスは声をかけると瞳が輝き、耳とブンブン揺れる尻尾が見えるのでついつい自分から手を伸ばしていることが多い。

アーチボルトやジレス、クライヴは距離が近くなるだけで身体が強張ってしまう。普段顔を合わせているお花畑三人組より、帝国の皇帝の方が余程危険な人物なのに。


「どうした……?」

「いえ、手を……」

「レイがセリーヌの髪は手触りが良いと自慢していたからな。嫌だったか?」

「……」


苦笑しながら離れたセオフィラスに何も言えず、離れていく手を追っていた。

皇帝陛下と父親を重ねていると、透君は言っていた。

セオフィラスには何度も助けてもらい、その所為かどうかは分からないが、過保護でレイトンのように甘やかしてくる。

前世で一番欲しかった、理想の父親と確かに重ねているのかもしれない。

守って欲しかった。助けて欲しかった。母と私を、愛して欲しかった。

あの頃、手にしたかったものをセオフィラスは意図せず与えてくれた。

父親……うん、納得だわ。頬が緩み、自然と笑顔になってしまう。

それに気づかれたのか、唖然とした顔で私を見るセオフィラスが可笑しくて、声を出さないよう堪えながらそっと笑った。


「……どう、した?」

「なんでもありませんわ」


前世の私は姉に救われ、今世の私は沢山の人に救われている。

男運は最悪だけれど、その代わりに家族と呼べる人達が出来たらしい。

もし、この世界で姉さんに出会えたら、その時はセオフィラスを父親だと紹介してみようか。

きっと、喜んでくれるに違いない。


そう、浮かれていたのがいけなかったのだろうか、それともテラスが鬼門なのか……。

少し外の空気を吸おうとセオフィラスから離れた途端、ひらひら、ふわふわとしたドレスの令嬢方に囲まれてしまった。

仕方なく、値踏みされているかのような視線を流しながらも、扇子を広げ令嬢方を観察している。勿論、私の背後にはテディ、アデル、ウィルス、おまけにクライヴまで揃っているのだから、何かしたくても出来ないという完璧な布陣。

罵声を浴びせるわけでもなく、ワインが降ってくることもない。

ただ、ヒソヒソとクスクスと目の前で遣り取りされているだけ。本当に可愛らしい。

退屈でふわぁ~っと軽く欠伸をして見せると、リーダーであろう令嬢が眉を顰めるが何か言うことはない。私が彼女達に声をかけていないのだから、当たり前なのだが。

アメリアよりはしっかりと教育されているらしい。こちらが上位であるとしっかり認識している。

さて、そろそろ声くらいかけてあげましょうか……と扇子を閉じた時。彼女達の背後からゆったりと歩いて来る人物が見え、考えを変えた。


「なにを、しているの?」


裾が長く、ゆったりとした純白の衣装は歩きづらいであろうに、優雅に捌きながら気だるげに問いかけてきた男性。

成人男性であろう彼には神秘的な美しさがあり、人外と称されるうちのブレアと似通っている。

恐る恐る振り返った令嬢方は彼を見て微かに震え、誰も口を開かない。それに痺れを切らしたのか、彼は彼女達に近づき一言「散れ」と口にした。

走り去った令嬢を気にすることもなく、そのまま足を進め私の前に立った男性。彼に警戒し動こうとしたウィルス達を手で止めた、のに。


「偉そうな、小娘だな」


と毒づかれた。


「相変わらずだな、小娘」


神秘的な雰囲気が一変し、眉間に皺を寄せ更に毒づくぶっ飛んだ彼に、私は微笑みながら。


「相変わらず、無駄に若作りしていますのね。ルーティア大司教様」


と、返して差し上げた。


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