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『8/6 ノベルstory07 発売』私は悪役王妃様  作者:


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面接



最低でも護衛は三名は欲しいところだ。

ラバンでは交代制で倍はいたけれど、此処ではそれは望めない。信頼できる騎士に心当たりが全く無いのだから。

侍女だったらアネリに頼れば何とかなるだろうけれど騎士に関してはアネリには無理だろう。

テディに聞いても入って来たばかりなのだから周りにいる騎士を良く知らないと思う。

明日ジレスに相談したとしても、アレが選ぶ騎士に護衛など出来るのか……。


本当に、この国どうなっているのよ。


心の中で盛大に愚痴るが顔には出さず無表情で真っ直ぐ前を向き優雅に見えるように足早に歩いている。

私の右側にアネリ、左側にはテディが。

私は立場上気軽にテディとは話せないがアネリは積極的に話しかけている。

話すというより……就職試験の面接に聞こえるのは私の気のせいだろうか……。


「テディはおいくつですの?」

「はい、十七になりました」

「まぁ、随分とお若く見えますのね」

「良く言われます。私は見た目があまり良くないので、背も高くはないですし」

「あら、男性は外見ではありませんわ。中身が大事ですわよ。此処に居ると切に思いますもの」


今のところ美形=最低だからね。

私の周りだけが特殊で、探せばまともな人間が何名かはいると願いたいが。

出来れば見目の麗しい貴公子より、ガチムチマッチョが望ましい。ほら、強そうだしいざとなったら担いで逃げてくれそうだ。


「第三騎士団所属でしたわね?」

「はい、将来は近衛隊に入りたいと思っています」

「近衛隊ですか……」

「今のままではまだまだ未熟ですが……」


目標は高ければ高いほど良い。成功者は皆総じて目指しているものが高いのだから。

でもクライヴ率いる近衛隊には貴族の子息しかいない。平民のテディが近衛に入るには皆が認める程の功績が無ければ難しいだろう。

フランは特別待遇、身内贔屓?なだけであって本来ならあり得ないから。

それこそ国の英雄にでもならない限り誰も納得しない。


「テディは騎士寮暮らしかしら?それとも通いですの?」

「寮暮らしです。私は平民なので、王都に家を持つことは難しくて」

「でしたら有事の際には直ぐに駆けつけられますわね」


家の跡を継がない貴族の子息はほとんどが騎士団に入る。王都に実家がある者は通いが多いのだろう。

伯爵家のクライヴもさぞかし大きな家に住んでいることだろう。奴こそ寮暮らしをして集団生活を学ぶべきだろうに。


「もし、環境が変わったら何か困るような事はありますか?」

「困る事ですか?そうですね、寝る場所があってご飯が食べれて訓練が出来れば、後は特に困るようなことは無いと思います」


テディ……それ必要最低限のことだから。


「え、あの、それは、騎士団をクビになるという事でしょうか……」

「いぇ!違いますわ、そんなお顔をされないでください」


きっと今テディはしょぼんとした顔をしているのだろう。クライヴに逆らって私の護衛に付いているのにその質問は駄目だよ。

大丈夫、テディにもし何か罰を与えるようなら私が逆にクライヴに罰を与えてやるから。


「第三騎士団では無く別の、そうですわね例えば誰もやりたがらないような場所に配属されたらテディはどうなさいますか」

「えっ、精一杯頑張ります。仕事にやりたくは無いなど通用しませんから」


そうよね、やりたくないフラン担当なんて仕事を一生懸命しているのだから。

てか、アネリさんよ、やりたくない仕事ってまさか私のことじゃないわよね?


「でしたら、誰もが羨むようなお仕事でしたらどうなさいますか」

「それは、とても光栄なことです。私が入りたい近衛騎士隊は騎士にとっては雲の上の存在なんです。妬む人もいますが、努力して掴み取った国や王族を守る大切な仕事です。でも、騎士団も入れただけでも私にとっては特別なことで、両親も喜んでくれましたし」


最後の言葉に照れ笑いするテディは癒しのオーラでも出てるのだろうか?荒んだ心が洗い流されるわ……。

騎士の中から選別されたエリートの近衛隊ね

、でもその筆頭があの脳筋クライヴで、それを神のごとく崇めているのがキラキラ近衛隊よ?

他国ならまだしもこの国の近衛は本当に努力して掴んだのか、家の力なかは分からないわね。てか、アレ羨ましく思われてるんだ。


「騎士の入隊試験を受けたのですよね?順位がつくと聞きましたが、テディは何番でしたの?」

「えっと、あの……い、一番でした」

「まぁ!凄い、お強いのですね」


テディ、トップで合格したの!?

入隊試験は国を挙げて行う大規模なイベントで、毎年相当な実力者が一番を掻っ攫っていく。ゲームで姉さんも三日かかったと言っていたのだから大変なのだろう。

貴族、平民と身分を問わず上から順に騎士団に入るのだけれど、幼い頃から指南役をつけ剣を振っている貴族もいる中で一番ってどれほど努力してきたのか。

才能があっても努力出来なければ意味が無いのだ。本当に凄いわテディ……なのに第三騎士団?フラン担当?これ如何に?


「でしたら女性が放っておきませんわね。良い方はいらっしゃいますの?」

「そっ、そのような人はいません!ぼ、私は目立つ容姿じゃないですし、あの、休みの日は訓練をしてるので」

「あら、テディの容姿は悪くはありませんわよ?中身の方は他の方にも見習っていただきたいくらいですわ」


僕と言いかけて私と言い直すテディは初々しくて良いと思う。それでもって努力家で入隊試験トップなんて誇って良い。

王を筆頭に顔面偏差値が高い奴等は顔か家柄しか取り柄がないのだから。


「帰還式で第三騎士団から近衛騎士隊に移動になる方がいるとお聞きしましたが」

「私は帰還式には出られなかったので……」

「どこかお怪我でもなさいましたの!?」

「いぇ!その、荷物の移動や、片付けを手伝っていましたので……」


待ちなさいテディ……それ騎士の仕事じゃないから。

帰還式は戦場へ出ていた騎士は全員参加が義務付けられているでしょうに。明らかに嫌がらせよね?やっぱり目をつけられてるんじゃない。

これあれじゃない、手柄とかも全部取られてるパターンでしょ。


「多分、フランのことだと思います」

「一体どのよう功績を挙げましたの?」

「帰還式で説明されたとは思うのですが、功績というのなら、帝国の指揮官を討ち取ったのがフランなんです」

「まぁ、テディもその場にいましたの?」

「はい、私は正面から剣を交えていたので」

「……あの、どういう事でしょうか?」

「あ、すみません説明が下手で!あの、私が帝国の指揮官殿の気を引いている間にフランが背後に周りそのまま斬りつけ、っ、すみません女性に話すような事ではありませんでした」

「いぇ、私あまり良くは分かりませんが、それでしたらテディも何か褒美があってもよろしいのではないでしょうか。何か言われていますの?」

「私は討ち取ってはいないので、剣を受けることに必死で大した事はしていませんから」


……手柄取られてたわ。

背後から隙をつくより、剣を交えている最中にその隙をつくることが出来る方が余程凄いことじゃないの?


「でも、フランもそう言って騎士団の隊長に抗議してしまって……それで先輩方と衝突して、クライヴ様を呼びに来たんです」

「抗議ですか?」

「はい、自分が近衛隊に移るなら私もと、フランは面倒なことは大抵笑って流すのですが知り合いや友人の事になると流せないというか短気というか」


帰還式のときに笑顔で対応していたけど、アレお怒りだったわけ?まあ、褒美の内容に唖然としていて喜んでいる感じは無かったけれど。

一体どんな子なのか……今の私には関係無いとはいえない。私が動かなくても彼が何かしたらまた幽閉コースが待っているかもしれないし、それ以外の別の何かが起こるかもしれないのだ。何をしたら良いのか手探り状態の中でフランにはまだ会いたくない。



※※※※※※※



「此処で良いわ。ご苦労様テディ、ゆっくり身体を休めなさい」


帰って来たばかりなのに休むどころかフランに巻き込まれた挙句私の護衛じゃ疲れも倍増だろう。この国で何も持っていない私には声をかけ労わることしかしてあげられない。


今迄黙っていたのに急に声をかけたからか、きょとんとした顔をし目をしばたかせ破顔した。


「勿体無いお言葉、ありがとうございます。あの、お聞きしてもよろしいですか……」

「どうぞ」

「護衛の方達は?その、扉の前にも見当たらないので」


何を聞かれるのかと思ったら……。


「護衛はいないのよ」

「……ぁ、呼んで来ましょうか!?」

「…………」

「あ、でもそれだと扉の前には誰もいないことになるし、来るまで待ったほうが……」


ぶつぶつ言いながら考え込んでいるテディが可笑しくて笑みがこぼれると、アネリが扉を開き私に入るよう促してきた。


「私がテディには言っておきますのでセリーヌ様はお部屋へお入りください」

「えぇ、テディ、もし何かあればアネリに言いなさい。今日のお礼に一度だけ、私が助けてあげますわ」


パタン……と閉まった扉の向こうに見えたテディの驚いていた顔にとうとう声を出して笑った。



※※※※※※※




「セリーヌ様、護衛にテディを貰ってきてくださいませ」


夕食も取りゆっくりお風呂に入って疲れた身体と頭をほぐし、さて寝るぞというタイミングでアネリから言われた言葉。

やっぱりアレ就職面接だったか……。


「テディは平民で、第三騎士団よ。王族の護衛は出来ないわ」

「ですから、フランのように近衛隊に移してもらうのです」


そんなに気に入ったのかアネリ。

今のままでは無理だが、近衛隊に入れば可能かもしれない。けれど、それは……。


「テディは自身で努力し実力で近衛隊に入りたいと言っていたわ。それに、私の護衛になどなったら訓練もままならないわ」

「ですが、他に良い方が……」

「テディは諦めなさい」


クライヴに振り回され、フランに巻き込まれ、そのうえ私になんて余りにも可哀想じゃないか。


ベッドに入り、他にも誰かいるはずだと言い聞かせ眠りについた。



※※※※※※※



どの位経ったのだろうか。

寝室の扉の向こうから人の話し声が聞こえ目を覚ました。


何を話しているのかまでは分からないが、知っている声だ……。

今日、嫌というほど聞いたわね。


薄い寝間着の上に上着を羽織り扉を開け、目の前に現れた人物に唖然とした。


「もう寝ていたのか?」


道を阻んでいたアネリを退かし、私の方へ向かって来る男。


「……アーチボルト、様」


触れられる位置まで来て顔に喜色を浮かべたアーチボルトに背筋が凍った。


「会いにきた、許可は得ているな」






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