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『電子でノベル、コミカライズ発売中』私は悪役王妃様  作者:


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取引き




「取引き……だと?」

「えぇ、そうです」


決別と取引き、この二つの為に態々執務室まで足を運んだのだ。

私は記憶を思い出した時点でヴィアンからおさらばすることにした。だけど、おさらばしたくても自国から侍女も護衛も連れて来てないのだ……私一人でどうやって国を出る?

頼れるものは部屋にいる兄専用の鳥。

一言「ラバンに帰りたいです」と書けばお迎えが来るだろう。数多の騎士を引き連れて。

ヴィアンも大国だ、前もって戦争の準備をしていれば互角の戦いになるだろうが、ちょっかいを出してきた帝国を退け帰還式だの騎士達を労う夜会だのとお祝いムードの今、戦争の準備などしていないだろう。

勝敗の決め手となるトップの力量の差に至っては……。

鬼才と言われる男と私の足の下で呻き声を上げる男。


ヴィアンが滅ぼされる未来しか見えない。


幽閉されて飼い殺しにされるくらいなら私のために滅んでくれとも思ったが、如何せんその後も幽閉とはいかないが軟禁くらいはされるだろう……ヤンデレ兄によって。寧ろこっちの方が恐ろしい。


だからアーチボルトと話しをしてから決める事にしたのだ。


どう転んでも最悪な未来しかない私は何か無いかと記憶を掘り起こし姉とのまともな会話を思い出したから。

有名企業に勤めている姉が休日なのに白のブラウスにベージュのタイトスカートというOL仕様でリビングにいたときだ。

『世の中は休日なのに営業マンは大変なのよ〜』と新聞を読んでいた姉に適当に相槌をうっていたら何故か嬉しそうに営業について語りだした。

その中に『仮説』『商品価値』『提案』というものがあった。


結果はお花畑過ぎて話しにならなかったが前世で教えてもらった『仮説』をたてた事によって私という商品価値は分かっただろう。

最後に殴ったのは営業では無く、お仕置きだけど。踏んでいるのは……おまけだ。


なら、次は提案をするのだ。


「セリーヌ様!一体何をなさっているのですか!」

「なんてことを……!」


唖然としていたのは側近達もだったのかクライヴもジレスも随分と反応が遅い。私が武器になるような物を持っていないことに感謝してほしい。


「あら、見て分からないのかしら?お仕置きしていますのよ」


ねぇ?と抵抗もせず踏まれたまま床に倒れているアーチボルトに問いかけると本人はジレスと私を交互に見て困惑した顔をしている。

大丈夫だろうか?ちゃんと自分の今の状況を理解出来ているのだろうか。


一旦足を上げると、アーチボルトが身じろぎしたので再びピンヒールで床に縫い止めた。


「うぐっ!」


あ、この靴が武器だわ。


痛みに顔を顰めているのを見てほくそ笑んでいると、「アーチボルト様!?」とクライヴは慌てているのかテーブルにぶつかりながら私達の側へ来てアーチボルトに手を差し伸べようとした。

なので、踏みつけていた方の足に全体重をかけ空いていた方の足でクライヴの腕を蹴り飛ばした。

その際アーチボルトが呻き声を上げたのはご愛嬌だ。


「っぅ……セリーヌ様?」

「クライヴは本当に躾がなっていないわね」

「クライヴ!セリーヌ、お前こそ誰に何をしているのか分かっているのか!許されっ、うっ!」

「私はきちんと許可を頂きましたわ。触れることも、その際何をしても良いと。許すと仰ったのはアーチボルト様ではありませんか」


ぐりぐり踏みつけながら問いかけると黙ったので思い出してくれたのだろう。


「私、ラバンへ帰りたいのです。ですが、それは今直ぐにではありませんの」

「戦争をしたいのか?」

「いいえ、ですがアーチボルト様の返答次第ではそれも止むを得ませんわね」

「どういうことだ?」

「ですからアーチボルト様にも私にも利があるように取引きをするのです」

「…………」


口を開けたまま立っているジレス、座り込み腕を押さえているクライヴ、黙り込んだアーチボルト、それぞれにうっそりと微笑む。


「もう一度お聞きしますわね。取引きをいたしましょ?お返事は、はいしか聞きませんけど」

「…………はい」


目を潤ませて頬を朱に上気させたアーチボルトからそっと足を退けた。





※※※※※※※




商談は場の雰囲気も大事らしい。

なので仕切り直すためにそれぞれ席に座り話し合いを再開した。

約一名若干気持ち悪いことになっているのは見ない振りをしよう。


「私はラバンへ時期を見て戻ります。アーチボルト様はフランを正妃にしたい、でよろしいかしら?」

「ぁ、あぁ……」

「では私が正妃のうちに側室をつくり子をもうけてください」

「それはっ!」

「嫌だとは言わせませんわ。後継ぎがいなければフランは手に入らないと思ってくださいな」

「……それは、セリーヌでは駄目なのか?」


何を言い出すんだこの男は……。

え、自分で言った言葉も忘れちゃったの?


「お前との子など要らないと、気持ちが追いつかないと、言っていましたでしょ?ですからアーチボルト様がお選びになった女性を側室にしてください」


人に決められたのが嫌なら自分で決めれば良い。ほら、好みのタイプとかあるだろうし。


「私に子が出来なければそれを理由にラバンへ帰ります。勿論同盟解消にはなりません。側室に子が出来て正妃に出来なければ私のせいだと周りは思うでしょう。それを気にした私はラバンへ帰りたいと我儘を言い、アーチボルト様は私の為に我儘を受け入れたと」


我儘王妃様なんだからヴィアンは喜んで手放すだろう。ラバンには兄が結婚した辺りに戻ればヤンデレも嫁に向くだろうから出戻りの私は離宮にでもこもって好きな事をしよう。


「ですが、それではセリーヌ様の名誉を傷つけることになります……フランも側室に子が出来れば正妃にはなれないのでは」

「私はラバンに戻れればそれで良いのです。戦争も見たくはありませんし……フランに関してはアーチボルト様が周囲を黙らせればよろしいですわ」


同盟の為に我慢して結婚したのだから次は愛する人と、世継ぎもいる同盟も解消しない。ならば、フランを正妃にするぐらい……とかなんとか言って頑張れ。後のことは知らん。

ラバンの王女を蔑ろにできるんだから何とかなるでしょ。


「ですが、今のままでは兄は誤魔化せませんわ。私達に近い位置にいる者達には王と王妃が不仲だと知られていますもの。それなりに見える様には振舞っていただきます」

「それなり?何をするんだ?」

「そうですわね、まずは王妃としての公務。今迄やらせていただけなかったでしょ?私の名誉がというのであればやらせていただけますよね、ジレス?」

「はい。後ほどご説明させていただきます」


名誉なんてとっくに傷つきまくってるわ。


「夜会など人が多い場所には二人一緒に、食事もですわね。後は、夜の訪れはご遠慮しますわ」

「……は?部屋に行かなければ疑われるだろう」

「その辺は私と侍女で誤魔化しますわ。アーチボルト様も私の元へ行く振りをしてフランに会いに行けばよろしいかと」

「だが、何もしなくても話しをするとか」

「嫌です」

「え……」

「必要以上の接触はお断りします。出来れば部屋にも入らないでいただきたいですわ」

「……部屋にもか?夜ではなく昼間なら」


前のめりになり食い下がるアーチボルトにクライヴもジレスも、私も驚く。

フランといちゃいちゃ好きなだけしていればいいのに何が不満なのだ?


「それらしくと言うのなら全く顔も合わせないのは可笑しいだろ」


フランとの未来の為にやる気になっているのだろうか?


「お断りをするかもしれませんが、それでもよろしければどうぞ」

「構わない」


先触れに対して無理だと断れば良いだけだ。

百パーセント断るけど。


「では、取引きは成立でよろしいかしら?」

「……あぁ」


よし。頑張ったわよね?私。

もう、疲れた……。今日はゆっくりお風呂に入って寝たい。


「長居しすぎましたわね。ジレス、明日執務室へ行きますわ」

「いえ、私がそちらに伺います」

「確認したい事があるので私が行きます」

「はい、かしこまりました」


クライヴは……と視線を向けるとビクッと変な動きをし顔が強張っていたので、放置することにした。


「では、アーチボルト様は明日の夜会で」


立ち上がり軽く頭を下げ扉へ向かう途中微かにアーチボルトの声がしたが気にせず部屋を出た。



『あぁ、またあとで……』







おまけ


『じゃあ、仕事に行ってくるわね!良い子にお留守番してるのよ?』

『姉さん、そのでかい紙袋なに?』

『これ?これはスー……予備の着替えよ』

『ふーん、女子力高いね。ワンピースとか?』

『そうなの!エルメネジルドゼ……行ってくるわね!じゃあ!』

『いってらっしゃい?』




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