表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/32

0 ――colorless――


 いつからだろう。

 右手にあるジッポのライターはもうオイルがなくなっているらしい。何度ホイールを回しても、火花を散らすだけだった。

 それでもわたしは、蓋を開けた瞬間にホイールを回し、再びそれを閉じるという一連の動作を繰り返す。蓋が開くときの金属が弾けるような音、ホイールを擦るときの親指の感触。今となってはそれらが、輪郭の定まらないわたしの心に奇妙な安心感すらもたらしてくれた。

 屋上のフェンスに寄りかかっていると、いやらしい風が制服のスカートを捲り上げようとしてくる。別に誰かに見られるわけでもないけど、なんとなくスカートの裾を押さえてしまうのは条件反射のようなものだろう。

空には雲らしきものもなく、抜けるような青空が広がっている……のかもしれない。 

確信が持てないのは、今のわたしの目に「青」が映っていないからだ。

 いつからだろう。

 わたしの見える世界が色を失ったのは。

 あの頃はまだ、世界はカラフルだったのに。

 別に、いいことなんて一つもなかったけど。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ