プロローグ
初投稿ですので文章が滅茶苦茶です。
読みにくかったりしますが少しでも楽しめるよう頑張っていきます。
よろしくお願いします。
「かなちん帰ろうぜー」
放課後の教室クラスの皆が帰り支度をしてる中そう言って私、木下可奈子に声を掛けてきたのは親友の川下智子だ。
「おっす、ともちゃん」
「ねえねえ、私の貸したゲームプレイした?」
私の返事に被せるようにともちゃんは昨日貸してもらったゲームのことを聞いてきた。
そのゲーム「夢幻の国のラプソディ」といういわゆる乙女ゲームだ、主人公の女の子が攻略対象の3人のイケメン男性と関わり恋愛に発展していくというありがちなストーリーだ。
なんかどこにでもありそうで数多くある乙女ゲームに埋もれがちになりそうなのだけど、このゲーム男性キャラの魅力もさる事ながらストーリーも人気が高く、他の乙女ゲームを押しのけてどハマリする女性が多数いるそうだ。
親友のともちゃんもこのゲームにハマった1人、そして私にもその面白さに触れてほしいが為昨日押し付けられるように貸してきたのだ。
家に帰りプレイした私もこのゲームにどハマリした、が
「うん、やったよ。もうどっぷりハマっちゃったぁ」
「でしょでしょ!」
相槌をうってるともちゃんに更に言葉を続ける
「なんといってもこの悪役令嬢のレレイヤ様が最高だよね!☆」
「うんうん!・・・・・・・・・・・うん?」
相槌をうっていたともちゃんは笑顔のまま静止して疑問符をつけた、だが私はそのまま話を続ける
「もうレレイヤ様の高圧的態度やヒロインの嫌がらせは今までの乙女ゲームをやってきた中で一番だったよ!もうそこにシビれる憧れる、だよ!」
興奮気味に喋り倒す私にともちゃんは口を引きつらせながら
「かなちん、これ乙女ゲームだよ?」
うん?そりゃそうだ、ともちゃんは何を言っているのか。ともちゃんが貸してくれたゲームの話をしていたんだから当たり前だろう。そんな風に思って首を傾げていると
「いやいやなんでそこで悪役令嬢の感想が出てくるの?普通は攻略対象キャラの話とか、ストーリーの感想が出てくると思うんだけど!」
ふぅやれやれ、ともちゃんは分かっていないなぁ。
悪役令嬢の重要性を何も分かってない、悪役令嬢の存在を軽んじてる。
「ともちゃん、君は何も分かってない分かってなさすぎだよ」
私は付けてもいない眼鏡をクイッとする動作をドヤ顔しながらともちゃんに語る
「かなちん、その動作イラっとくる」
「アッハイ」
くそう、ちょっとドヤ顔しただけなのに真顔で指摘してくるとは。ともちゃん、恐ろしい子。
気を取り直して話を続ける
「あ、悪役令嬢っていったらストーリーを盛り上げてくれる存在だよ!主人公と攻略対象がくっつく障害になったり、主人公の境遇を貶めて攻略対象に庇ってもらう要因を作ったりする重要な存在だと思わない?」
「そりゃあ思うよ、でもメインは攻略対象との恋愛やそれに至るストーリーが楽しみどころだと思うんだけど・・・」
「一般的にはそうだけど、私は敢えて悪役令嬢の良さを説きたいわ。何故なら悪役令嬢は主人公と攻略対象をくっつけるキーパーソン、いわば影の主人公といってもいいくらいなの!そんな悪役令嬢レレイヤ様を私は称えたいわ!」
そう、悪役令嬢は誰もが嫌う役どころだけどいないとストーリーを薄くしてしまう重要ポジだ。しかも主人公と攻略対象者との絆をより深めてくれる存在でもある。
こんな存在なかなかいないと思う、障害があるほど恋って燃え上がるものだと思うしそんな重要な役を買って出てくれる悪役令嬢は影の主人公と言われても過言ではないと思うんだが。何故か理解されない。
「はぁ~、かなちんは相変わらずだよね」
そう言ってともちゃんは呆れてだけど暖かい眼差しで私を見てくる
そう、私は昔から皆とは感覚が違っていたのだ。
皆が主人公に憧れるなか私はその主人公を苛める役に憧れを抱いていた。
童話に出てくる悪者に憧れて、いつか自分もこんな風になりたいと常々想いを馳せたりした。
しかし、私には意地悪な人間になるには決定的な欠点があったのだ、それは重度の「お人好し」であるということだ。そんなの意識的にしなければいいじゃないかと思うかもしれないけど、私のお人好しは無意識でしてしまうということ。
たぶん原因は両親だと思う、何故ならうちの両親は父も母も同じお人好しな性格だったからどちらも善という言葉が人の形になったような人達なのだ。二人共困った人がいたら助けずにはいられない、父はどんなに急用があっても困った人がいれば助け、母はボランティアには必ずと言っていいほど参加を欠かさない人だった。よくまぁ今まで詐欺に引っかからなかったものだと呆れたものだ。
そんな二人から生まれた私はさながらお人好しのサラブレッドだったのだ。
それが悪人に憧れるとは両親も夢にも思わなかっただろう。
でも、憧れは憧れであってなれるかどうかは別。そんな悪人の正反対のお人好しである私が悪人なんかになれるわけないのは当然のことだろう。
それでも私は憧れ続けた、いじめっ子にいじめられた時なんか憧れの人に出会えた喜びでストーカーよろしく付きまとい過ぎて「もう苛めないから許して」と懇願されたくらいだ。てかその時のいじめっ子が今や親友のともちゃんなのだけど。
小学校の演劇の役決めなんかの時は、いの一番に意地悪役に手を挙げたらいつものお人好しで皆の嫌がる役を引き受けて手を挙げたのだと勘違いされた。それどころか主人公という華やかな役を譲られた、何故だ。
まぁそんな理由で私は今でも悪役になれることに憧れを抱いてる、それを知っているのは親友であるともちゃんだけだけど。うん、クラスの皆からはお人好しで通ってるからね知るわけないよね・・・泣いてないし!
ともちゃんと並んで帰路につきつつおしゃべりを続ける。
「まぁ何はともあれプレイして喜んでくれるのは嬉しいよ」
私のゲームの楽しみ方を否定しないその意見に嬉しく思う、まぁ半ば諦めが入ってるといえるけど。
「それで全部クリアしたの?」
「まだ最後のストーリーが残ってるかな」
そう、「無限の国のラプソディ」には三人の攻略対象キャラのエンディングを見た後にもう一つストーリーがあるのだ。俗に言うトゥルーエンド?ってやつ。
「このラストストーリーでのレレイヤ様の活躍がどうなるのか、もう楽しみで仕方ないのですよ」
ワクワクしつつ家に帰るのが待ち遠しくなる。家に帰ったら食事とお風呂を済ませ部屋に篭るつもりだ、今夜は寝ずのプレイに徹する。あ、帰りにおやつ買わなきゃね。そこ太るぞとか言わない。
「あ~、かなちんラストの物語では・・・・」
「おっとネタバラしはNGですぞ、とも氏」
「とも氏てなにさ」
「ともちゃん氏」
「いや、もう氏いらなくね」
「とものすけ」
「誰だよッ!?」
そんなたわい無いやり取りをしていた私たちの目の前でトラックが向かってくる道路に小さな女の子が飛び出していった。
母親とおもしき女の人はママ友と話し込んでいて気づいておらず、周りの人は誰も動けないでいた。
親友のともちゃんも咄嗟のことでギョッとして体が硬直しているようだった。
そんな中無意識に反応する私の体はその女の子に向かって道路に飛び出していた。
女の子の肩を掴み元の歩道へ乱暴に引っ張る、女の子は訳も分からず投げ出され歩道に転がる。たぶん擦り傷を負うだろう、ごめんね。でも命を失うよりはいいはずだから。
そう女の子に心の中で謝る私は勢いを殺せず女の子と入れ替わるようにトラックの前にいた。
トラックの運転手はようやく気づいたのか急ブレーキをかけるが遅すぎだ、次の瞬間私はものすごい衝撃に見舞われ体から嫌な音を鳴らしながら意識がブラックアウトした。
ああ、ゲームの続きできなくなっちゃったなぁ。
悪役令嬢のレレイヤの悪役っぷり、楽しみにしていたのになぁ。
私は意識が途切れる刹那の間に思った。悪役令嬢はむりでもいじめっ子になって皆から嫌われる悪役になってみたかったと最後まで憧れつづけたのだった。
次から本編です、大体5話くらい?で完結予定