日本という"銀河霊"は現代のアナクレオンに浸透するか
もしも、現実世界がファウンデーションの物語を後追いするのなら、たとえ、日本が今直面している最初の"セルダン危機"を乗り越えたとしても、やがて訪れる、次の"セルダン危機"を乗り越えないといけないことになる。
小説では、最初のセルダン危機を乗り越えたターミナスは、その30年後、第二のセルダン危機を迎える。
再び、ターミナスへの侵攻を企てるアナクレオンは、遺棄された旧銀河帝国の巡洋戦艦と遭遇。ターミナスの技術力で巡洋戦艦を修理し、アナクレオンに移譲するようターミナスに要求する。
ターミナスは要求通り、巡洋戦艦を修理するのだけれど、危惧したとおりアナクレオンは、巡洋戦艦を中心にした艦隊をターミナスに差し向ける。
しかし、第二のセルダン危機を迎えたハーディンには秘策があった。
ハーディンは、第一のセルダン危機の後、アナクレオン星系の4王国に対して、ターミナスの高度な技術力を提供する事と引き換えに"銀河霊"を崇める新宗教を広めると同時に、提供した技術を管理する現地人のうち優秀な者にターミナスで司祭教育をうけさせていた。
その新宗教は30年の間に星系の人々に広く浸透し、4王国の王族にも深く浸透していた。
アナクレオンは旧銀河帝国の巡洋戦艦の力を頼りにターミナスに宣戦布告するのだけれど、新宗教の司祭はアナクレオンの破門を宣言。巡洋戦艦はターミナスが修理の際に予め仕込んでいた仕掛けによって、全機能がシャットダウン。武装解除される。
同時に、司祭の命を受けたアナクレオン市民は、"銀河霊"に反する行為として、王家に反旗を翻し宮殿を包囲。即時停戦を要求する。こうして第二のセルダン危機は回避される。
この例に日本を当てはめるとするならば、やがて訪れるであろう第二の"セルダン危機"に対処するために、日本の持つ科学技術を周辺国に供与するだけでなく、自由と法の支配や人権、文化、そして宗教などを、現代の"アナクレオン"である中国に広く浸透させ、共産党政府に対する抵抗勢力として、今から仕込んで置かなくてはならないことになる。
ただ、現代の"アナクレオン"は無神論国家だから、ストレートに宗教を受け入れることはない。だから、実際には、もう少しマイルドな形で、それに類する思想を流すことになると思われる。
もしも、それに代わるものが日本にあるとすれば、漫画やアニメの中に埋め込まれた、日本の文化や思想によって、中国の内面を変えていく、つまり中国を日本化させる余地があるのではないかと思う。
尤も、中国とて、薄々それに感づいているようで、日本のアニメを通じて日本に対する見方が変わり、日本が好きになったという中国の若者が現実に増えていることから、「日本人は中国人を洗脳するためにアニメを作っている」と主張する人がいるそうだ。
勿論、アニメを制作している側にとっては、そんな意図は毛頭ないだろう。けれど、結果として、日本文化は小説ファウンデーションにおける"銀河霊"の役目を果たすかもしれないと、筆者は夢想している。
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It is the most potent device known with which to control men and worlds.
それは人間と世界を統御する、もっとも有効な仕掛けなのだ。
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