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戦後日本にそっくりなファウンデーション

 シリーズの中で、「セルダン危機」は、最初の3部作に収められた「百科事典編纂者」「市長」「豪商」「将軍」「ザ・ミュール」「ミュールによる探索」「ファウンデーションによる探索」などの各章で描かれているのだけれど、舞台の中心となる惑星ターミナスの設定が、戦後の日本に良く似ているということで、SF愛好家達の中では有名だったらしい。


 それについて、原作の翻訳者が、あとがきで次のように述べている。

――――――――――――――――――――

「この物語を読んでいると、現在の日本とそれを取り巻く世界の状況が奇妙な二重写しになって見えてくる。銀河系の最果てにある、天然資源をまったく持たない、孤立した小さな惑星ターミナス。そこには軍備はほとんどなく、科学技術(それも小型のものほど得意なのだ)だけを頼りに、便利な日用品を生産して近隣の諸国に売り込み、それで支配権の拡張を図っている。それにたいして、強大な軍事力を背景にし、巨大な規模でしか物を考えることができず、巨大なものしか作ることのできない銀河帝国およびその残党は、どうしても勝つことができないのである。」

――――――――――――――――――――

 と、このように科学技術立国で、軍備にものを言わせられない惑星ということで、確かに戦後日本と良く似ている。そして、その取り巻く状況も。


 最初の「セルダン危機」は、ファウンデーション設立から50年後に訪れる。「銀河百科事典」刊行を目前にしたこの時代、銀河帝国は早くも衰退を見せ始め、アナクレオン太守が国王を称して帝国からの独立を宣言。隣接するスミルノ、ダリボウ、コノムの三つの太守もこれに倣い、それぞれの太守が王を名乗る。


 アナクレオンは、ターミナスの技術力に目をつけ、ターミナス上の軍事基地と技術供与を要求。ファウンデーションの征服を企んでいた。


 危機感を抱いた、ターミナス市長のサルヴァー・ハーディンは、対抗策を講じようとするけれど、ターミナスの権力を握る「百科事典編纂者」達は帝国の威信を信じ、ハーディンの警告に耳を貸さない。


 ちょうどそのとき、「時間霊廟」にファウンデーション設立50年後に遺言を伝えると言い残した、セルダンのホログラフ動画が出現。その場に詰めかけた理事会の面々や市長に対し、銀河の反対の端にあるもう一つのファウンデーションの存在と、ファウンデーションの真の目的を語りだす…。


 心理歴史学によって、予想された危機を乗り越えることで「セルダン計画」が成就することを告げられた彼らは、権力奪取に成功した市長のハーディンに危機への対応を託すことになる。


 ハーディンは、アナクレオンに隣接する他の3つの王国であるスミルノ、ダリボウ、コノムをそれぞれ訪れ、アナクレオンが持っていない"原子力"の技術を手にいれると、スミルノ、ダリボウ、コノムの3王国が圧力を受けることになると説得。彼らに、アナクレオンに対して宣戦布告させることに成功する。これにより、アナクレオンはターミナスへの侵攻を断念。最初のセルダン危機は回避される。


 これが「百科事典編纂者」の章に収められた最初のセルダン危機のあらすじなのだけれど、ターミナスを日本に、アナクレオンを中国に、銀河帝国をアメリカに置き換えてみると、恐ろしいまでに、今の世界状況にピタリと当てはまる。そして、危機への対応も。


 今、安倍総理は、ASEANや、インド、トルコ、インドといった、中国を取り囲む周辺の"王国"と協調し、"アナクレオン"中国からの侵攻を食い止めるべく動いている。ハーディンと同じ方法で日本の危機を乗り越えようとしている。


 この章が1940年代に書かれたとは、驚きに値するし、この小説が、今、コミカライズされたことに何か運命的なものさえ感じてしまう。

 

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