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会長と千尋の会話

 「わー、真希ってば何でベッドから動かないの?」

 朝から俺は真希のスマホから電話を受け取った。

 とはいっても、電話をかけてきたのは、鏑木先輩なんだけど。

 なんか、いきなり真希動けないから頼むって言われた。

 で、来てみたら真希がベッドから動かないんだけど。

 「もしかして鏑木先輩とヤったの? 立てなくなるほどって鏑木先輩ってどんだけ盛ってたの?」

 「……何を聞くんだ、理人!!」

 あ、真希が真っ赤な顔をして怒ってる。

 つかあれは恥ずかしいんだろうな。

 真希は自分の事になると途端に恥ずかしがるから。

 「いや、だってさー。折角の真希の初体験事情だし、面白そうだなぁと。

 で、感想は?」

 「…………幸せ」

 顔を真っ赤にして、真希は言った。

 きっと、本心からの言葉なのだろう。

 幸せだって、真希の表情が言ってる。

 好きな人に抱かれて、幸せなんだって。

 そんな真希を見て、何だか俺まで嬉しくなってくる。

 真希はずっと、鏑木先輩が好きだったから、何だか、良かったって思えるから。

 「真希、良かったな」

 「………」

 俺が笑えば、真希は照れ臭そうに頷いた。

 「あ、そうそう、真希。今から此処に和志先輩来るから」

 「へ…?

 何で…?」

 「いやー、真希と鏑木先輩が付き合いだしたって言ったら来るって」

 和志先輩って、腐男子だし、真希が付き合いだしたって俺が電話でいったら、事情を詳しく聞きたいと勢いよく言われたんだよねぇ。

 そんな事を話していれば、ピンポーンと音が聞こえた。

 和志先輩が来たようである。

 ベッドから動けない真希には出る事は不可能だからと、俺が玄関に向かって扉を開けた。

 「理人、理人!!

 菅崎何処いんの!? 鏑木と恋人とか、やっぱ、菅崎がネコか!?」

 「和志先輩、とりあえず入って」

 興奮したように目を輝かせている和志先輩に、俺は呆れたような瞳を向けて、そう告げた。

 そうすれば、和志先輩は頷いて中に入ってくる。

 「おー、菅崎がベッドの上!? え、何何、動けないのか?

動けないほど、ヤったの!? 鏑木って淡泊そうなのに!?

 つか、この状況だとやっぱり、菅崎がネコか。なぁなぁ、どっちから誘ったんだ?」

 うわー、和志先輩素晴らしいほど、興奮している。

 つか、和志先輩って見た目金髪だし…、外見結構チャラチャラしてるんだよね。

 まぁ、普通に彼女居るし、遊んではないんだけど。

 そういえば、俺は和志先輩の彼女にはあった事ないけど、腐女子らしいし、和志先輩とそういうお話で盛り上がっているのかもしれない。

 「…いや、和志先輩。

 そんな事直球でお願いだから聞かないでください!」

 「いやー、聞くって。つか菅崎だって腐男子ならわかるだろ?」

 「わかりますけど!!

 自分の事は聞かれるのは、ちょっと…」

 「ほぉ、はずかしがっているのか。

 うんうん、鏑木はそうやってはずかしがったりする菅崎を可愛いと思って襲ったんだろうなぁ…」

 「そんな事しみじみと呟かないでください!」

 真希の顔は真っ赤に染まり、和志先輩は楽しそうに笑っていた。

 「あ、そういえば和志先輩。

 高等部からうちの学園ってどっかの学園と合同で行事あるんですよね?」

 俺はふと、そんな事を思って和志先輩に話しかけた。

 中等部の方では合同行事とかやってなかったんだけど、高等部からやるらしいんだよね。

 まだ何をやるか、何処の学園と合同でやるか、俺は会長から聞いてないんだよね。

 「そうか、理人達は合同行事ってはじめてか!

 毎回黒隅学園っていううちの学園とにたような、王道学園とやるんだ!

 行事で理人が誰かと付き合ってくれたりしちゃったら俺滅茶苦茶興奮するんだろうがなあ…」

 「黒隅学園とやるんですか?」

 「そう! 理人知り合いかなんかいるのか?」

 「親友がそこで風紀委員長やってるんです」

 そう、和志先輩が言った黒隅学園には俺の親友が通っている。

 風紀委員長なんて面倒な役職についているんだとか。

 ちなみに俺が潰した副会長を転入させた場所もその学園だ。

 副会長……その親友に聞いた所大人しくなってるらしいが、合同行事とか来るんだろうか?

 「マジで!?

 俺の腐仲間もそこいってるんだ!

 そいつに聞いた風紀委員長っていえば魔王なんて呼ばれてるくせに恋人には激甘って聞いたんだけど」

 「そうらしいね」

 「マジで!? 男子校で恋人とイチャイチャやってんの!?何それさいこ―――いっ」

 「…真希、興奮したからって無理して立ち上がらないようにね」

 立ち上がろうとして真希は腰押さえてまたベッドに倒れたんだよね。

 本当鏑木先輩どんだけ盛ってたの、って気分になる。

 「……一応いっとくけど飛鳥の恋人女だからね?

 一緒の学校通いたいって男装して乗り込んだらしくて」

 副会長の件の時久しぶりに電話かけたらそう言われたんだよね。

 ゛俺の可愛い海が俺追いかけて男子校まで来た。海と同じ学年がいいし、つい留年した゛と。

 うん、飛鳥って俺やその彼女より一つ上なんだよね。

 それなのに彼女と同じ学園がいいって留年しちゃうんだから凄いよね。

 「へえ、ナイス溺愛だな」

 「まあ、合同行事はまだ先の事ですけどそれで飛鳥の彼女と初対面できるかと思うとワクワクします」

 「会った事なかったのか?」

 「飛鳥は彼女の事大好きですから。なるべく誰にも見せたくないだとか、そんな理由で会わせてくれないんですよね」

 飛鳥は本当、彼女が大好きだから。

 というか他人に基本的に冷たいくせに彼女には滅茶苦茶優しいらしいって知り合いがいってたし。

 「いいな、その溺愛っぷり! 合同行事の時俺にも会わせろ」

 「もちろんいいですよ」

 あ、ちなみに真希はというとベッドの上で大人しく動かずに俺と和志先輩の会話聞いてるんだけどね。

 「あ、そうだ、真希。

 うちのクラス、文化祭何する事になった?」

 俺と和志先輩、合同行事の話ばっかしてたけど先に文化祭と体育大会あるんだよね。

 まあ行事が結構あるから二学期は生徒会忙しいみたいなんだよね。

 「喫茶店だ! 服装は色々自由にできるように俺が提案した」

 真希が、そう言って嬉しそうに笑った。






 *東宮暁side




 「ねぇねぇ、会長さん。りーいつくんのー?」

 ……目の前には、佐原理人の元彼が居る。

 あの佐原理人と付き合っていた男。

 俺様に振り向きもせず俺様を邪険に扱う、あの佐原理人と、付き合っていた男。

 「さぁな」

 「りーに連絡して聞いてよ」

 「……」

 「まさか、りーの連絡先すら教えてもらってないの?

 わー、それでよくりーを自分のモノにするとか言えたね」

 「貴様だって知らないのだろう!!」

 「俺は帰国したばっかだから、聞いてないだけだしー」

 俺様だって、佐原理人が、連絡先を教えてくれない事をへこんでいるのだ。

 生徒会の連絡するから教えろともちかければ、隗に聞くからとばっさり言われた。

 俺様が、この俺様が教えてくれと頼んでるのに、”嫌だ”の一言で断るのだ。

 俺様は、俺様は……何か、へこんでしまいそうだ。

 「俺ね、りーが認めて側においてる人間ならまだ許せるんだ」

 そんな事を言いながら吉井はこちらを見ている。

 「葉月さんも、隗も、真希も―――りーに気に入られて側にいる。

 俺のりーが可愛いだとかかっこいいだとか面白いっていう感情を抱いて」

 徐々に吉井の声が冷たくなっていくのを感じて、体に冷や汗が走る。

 『狂猫』

 そう呼ばれた強者の殺気が、俺様に襲いかかってくる。

 「でも、会長は、違うでしょう?」

 びくっと肩が震えた。

 それを見ながら、吉井は笑う、何処までも冷たい笑みを浮かべて。

 「会長は、りーの大事なモノにひどい扱いしてたんでしょ?」

 大事なモノとは、もちろん、”生徒会親衛隊”の事。

 セフレにして、殴って、そうして親衛隊を傷つけていた。

 「りーはね、大事なモノに手を出す人間は、嫌いなんだよ。

 大事な人を傷つける人間は、もっと嫌い」

 冷たく笑ったまま、吉井はこちらを見ている。

 「りーは、会長に連絡先教えたくないぐらい、嫌悪感抱いているのに、自分が りーに好かれる可能性がある、とでもおもってるの?」

 愛らしくも、冷たい笑み。

 それを浮かべたまま、『狂猫』は残酷に言葉を零す。

 「…俺、様は」

 「そうだよね。隗に聞いたけど、俺様俺様いいながら、好き勝手してたんだよね。

 生徒会の中で親衛隊に対して態度が一番ひどかったのは、会長。で、次が副会長と下半身会計だったんだよね」

 …吉井の言うとおりだ。

 由月は基本的に暴力的でもないし、親衛隊にそういう扱いはしなかった。

 …隗や螢は嫌悪感は抱いていたみたいだけど、セフレとかは作っていなかった。(とはいっても隗のは演技だけれども)

 「愛斗っていうんだっけ? りーの大事な友人で、会長が最も傷つけた人間って」

 また、笑う。

 残酷な言葉を放つというのに、罪悪感もなしに、吉井は笑う。

 「その子が許しても、りーはね、許さないよ。

 その子が忘れても、りーは忘れないよ。

 大事な子が、一方的に傷つけられた事実を。

 それにね、そんなになるまで気付かなかったような馬鹿をりーが気に入るはずないから」

 そういって、吉井は続ける。

 「りーは、優しいから、気にいった人間に傷ついてほしくないって思ってる。

 その点でいうと、きっと会長は、りーにとって、そのお友達のおもい人失格なんだろうね」

 『狂猫』は、俺様が、佐原理人に相手にされるはずがないという事実をたたき込む。

 何処までも、残酷に笑いながら。

 「りーはね、気にいってもない人間に恋愛感情なんて抱かないよ。

 だから、その点でいっても、会長は失格。

 りーは、会長を気にいってはいないし、きっと前科がある会長を気にいらない。

 きっと心のどこかで警戒してる、大事な子が、傷つけられないかどうか」

 佐原理人は、冷たい人間だと、俺様はおもう。

 とはいっても、仲良い人にだけは優しいけれども。

 「それに、会長はりーが面白いからって単純な理由でりーに恋したんでしょう?」

 吉井は笑っている。ずっと冷たい笑みを浮かべて。

 「りーに聞いたけど、すごくむかつく毛玉?いたらしいね。

 そいつに惚れたと同じ理由でりーに惚れるなんて」

 そう言いながら、千尋の瞳は、冷たく細められる。

 「りーはね、最高何だよ。りーはね、俺にとって一番大切な人なんだよ。

 そんなりーをね、りーが大嫌いだった毛玉なんかと同等みたいな扱いなのが、むかつくかな。

 そもそも面白いっていう理由だけでりーに惚れて、俺の前でりーが嫌がってるのにりーを口説いてるのがねぇ…?」

 ………俺様は、おそらく、『狂猫』には勝てないだろう。

 だからこそ、体がびくついた。

 『狂猫』は、危険人物だと、知られていた人物だ。

 手がつけられなくて、それでいて、恐ろしい存在として。

 寺口はまだ、そういう分別があるけれども、吉井には、それがない。

 だからこそ、体がびくつく。

 「このくらいで、びくついてさ。ひどいね、会長。確かに俺すぐ暴走しちゃうけど」

 そう言って、吉井は続ける。

 「でもね、俺、他人のびくついた顔見ると、もっと怖がらせてやろうとか思っちゃうんだよね。何かむかついて」

 ジリッジリッ、と吉井が近づいてくる。

 ―――それさえも恐ろしい。

 なにかされるんじゃないかという恐怖――、あの『狂猫』であり、その狂気を少しでも見たからこそ、足がすくむのがわかる。

 「千尋、やめとけ」

 そんな中で、一つの声が響いた。

 視線をそちらに向ければ、寺口が居た。

 「葉月さん、俺の事止めるの?」

 「ああ、止める。

 そもそもお前暴れだしたら、止まらなくて面倒だし。

 学園で面倒事起こしたら理人に迷惑かかるぞ?」

 明らかに、殺気だっていて、狂気に満ちていた吉井に、寺口は普通に話しかける。

 ――隗だってそうだ。

 普通ににこやかに、吉井と話す。

 由月は会話するのは苦手だし、螢は佐原理人や吉井の事少し脅えているけれども―――。

 「えー、りーに迷惑かけるのは嫌!」

 「じゃあ、とまれ」

 「むー、わかったよ、葉月さん」

 「つかお前外国でどうしてたわけ? 俺か理人かしか止めないと基本的に止まらないだろ?」

 「え、もちろんおもいっきり暴れてたけど」

 ………寺口と佐原理人にしか止められない。

 それが、『狂猫』の暴走――。

 「それ、駄目じゃねぇか」

 「えー、だって誰も止めてくれないし? 皆俺に距離おくんだよ? ひどくない?」

 「お前が危ない奴だからだろうが」

 「ま、否定はしないけど。てか、会長俺もう行きますね」

 そう言って、吉井と寺口はその場から出ていく。

 ―――俺様は、気にいられていない。

 佐原理人が気に居るのは、面白い人間、可愛い人間、かっこいい人間と吉井はいった。

 ……佐原理人の中では、俺はそれに当てはまらないのかと、またへこんだ。

 俺様や、寺口や隗の違い――、それにはきっと、吉井を脅えているかどうかも含まれているのだろう。




理人の親友の話も途中までエブリスタで公開していたので、そのうちこちらに移行します。

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