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嫌がらせされる理人と、真希と美乃

 「わー。何これすっごいこった事やってる」

 俺は靴箱の中をのぞいて思わずそう、呟いた。

 いや、だってさ。

 わざわざ赤い絵の具か何かでさ、死って書いてるんだよ?

 で、周りにカミソリ散乱してて、何故か蛇とか入ってるっていう。

 そしてこれは、呪い手紙? って思いたくなるような不気味な手紙が入ってたりね。

 副会長になったからって、生徒達、みなさんよくやるよねぇ。

 と、そんな事を思いながら俺はとりあえず掃除用具入れから雑巾やら、ゴミ袋やら出して片づけをはじめた。

 周りがジロジロと見ているが、そんなの気にしない。

 てか千尋ちゃんに近づくなとか書かれてるけど、ちゃん付けとか千尋多分怒ると思うんだけど。

 せっせ、せっせと靴箱の中身を片づける。

 ちなみに、蛇は、袋の中にいれた。

 翔兄はハ虫類ペットにするの趣味だから、あげようと思って。

 そうやっていれば、

 「りっちゃん、何やってるの!?」

 「理人さんっ、それって―――」

 そんな声が響いた。

 後ろを振り向けば、ゆたかと未那が居た。

 ゆたかは隗の親衛隊の隊長。

 そして未那は副会長の親衛隊のメンバーだったけど、副会長をやめたから今は無所属。

 「んー、俺に嫌がらせしてきた子がいたの。

 生徒会入ったのと、転入生と仲良いのが気にいらないみたい」

 にっこりと笑ってそう言ってやる

 「りっちゃんに嫌がらせ!?

 何処のどいつだ! うちはありえないとして……、親衛隊に入ってない一般生徒か」

 「理人さん! 片づけなんて僕がやりますよ。理人さんは教室に向かってください。

 あ、上履きどうしますか…? 落書きされてるみたいですけど。 

 僕の上履きのサイズがあってるなら、貸すんですけど――」

 ああ、何か嬉しくなってくる。

 生徒会親衛隊の子は、優しい子ばっかで、俺は嬉しい。

 「というか、転入生と何で知り合いなの、りっちゃん」

 結局、ゆたかと未那も手伝ってくれる事になって三人で片づけをする。

 周りは親衛隊メンバーが、俺に「ぬけがけしないでよ」みたいに強くあたならないのが不思議なようだ。

 …そんな陰湿じゃないのにねぇ。

 「あー、千尋は元彼。葉月は親友」

 「りっちゃんの―――」

 「理人さんの―――」

 「「元彼!?」」

 二人とも声大きいよ。

 周り注目してるから。

 というか、俺と千尋が付き合ってたのって、そんなに驚く事かな?

 それにしても二人とも驚きすぎてて、何か面白い。

 「驚きすぎだよ。未那も、ゆたかも」

 「いやいや、驚くから。えー、何りっちゃんってば、あんな子が好みなの?」

 「俺は可愛い子とかっこいい奴と面白い奴が大好きだからね。

 千尋は可愛い+面白い奴なんだよね。予想外の行動とか起こしてくれるし」

 そう言って笑えば、ゆたかは呆れたように俺を見た。

 「面白い…ねぇ?

 りっちゃんが興味持つほど面白い子なのか?

 俺は、転入生可愛い系としか思えなかったんだけど」

 「いや、千尋は危ないよ。あれは。

 俺と違って手がすぐ出るからね。しばらく風紀は忙しくなりそうだと思うよ。千尋が原因で」

 学園の人達はまだ、千尋の本性とかわかってないはずだしね。

 それで千尋を襲おうとか思ってる奴居れば、千尋確実にボコボコにしちゃうから。

 暴走したらなかなか止められないのが、千尋だからね。

 俺と葉月はまだ止められるけど、会長とかじゃ絶対千尋は止められないと思う。

 「へぇ…。危ない奴なのかぁ。

 隗様はそれに比べて可愛いよねー」

 「…隗が可愛いか」

 そういえば結局隗は親衛隊の子達にまだちゃんとあってないし(一学期に会ってみるとはいってたけど)、本性隠してるし…、ゆたかは猫かぶり隗しか知らないんだよね。

 とはいってもゆたかは本当に隗の事大好きみたいだけど。

 でも隗って隠す事楽しんでるだろうし、ばらそうとは思わないけど。

 「いいなぁ、りっちゃん。隗様と仲良しでー、俺も話したいなぁ、隗様と」

 「じゃあ今度隗連れてくよ。ゆたか達隗の親衛隊のたまり場にさ」

 そう言えば、ゆたかの顔はぱぁーっと明るくなった。

 本当、隗の事大好きって、感じだよね。ゆたかって。

 「理人さん、この嫌がらせについては、僕たち親衛隊の方からでも手を回しますね」

 「うん、色々調べてくれるのは助かるかな。ま、俺自身も俺に嫌がらせしてきた奴をただで済ます気はないけどね」

 本当、俺にこんな嫌がらせしてくるんだから、覚悟しといてもらわなきゃね…?







 *菅崎真希side




 俺は、今風紀委員室に居る。

 というのも、美乃君に会いに来たのだ。

 「真希、ほら、飲めよ」

 そう言って美乃君が、俺に紅茶を持ってきてくれる。

 俺、美乃君が入れてくれた紅茶滅茶苦茶好きなんだよね。

 あー、何か美乃君とこうしてのんびりできるだけで、俺幸せ。

 「ありがと、美乃君」

 そう言って笑えば、美乃君も笑ってくれた。

 「ところで、真希」

 「ん、なぁに?」

 「いや、委員長の様子が最近変なんだ」

 突然、美乃君はそんな事を言い出した。

 「小長井先輩の様子が…?」

 「そう…、委員長の様子がおかしくてな。

 何か、時折ぼーっとしていて、何か考えているような。

 委員長って基本的に隙ないから、何故だかわからなくてなあ」

 …時折ぼーっとか。

 隙がない様子…。

 確かに謎だ。

 小長井先輩って基本的に隙が一切ない感じのイメージ。

 そして何か武術とかやってそうなそんな感じ。

 そんな人が、ぼーっとしてるか。

 「……好きな人でも出来たんじゃない?」

 そうして俺が考えた末に行きついた結論は、それだった。

 正直いって、小長井先輩が恋愛するとか想像できないけど……もし、この学園の生徒にっ、男に恋愛してると言うなら喜んで応援しよう!

 というか、寧ろ協力する。

 風紀委員×謎の美少年とか、平凡少年とかそんのもいいかもしれない。

 絶対、小長井先輩はタチだろうし、受けの子が、近くに居たのだろうか…?

 なんて思うと何だかわくわくしてきてしまった。

 「委員長に、好きな人!? それは…、事実だったら驚くな」

 「小長井先輩って、あんまり誰かに夢中になったりしなさそうだもんな」

 「そうだなぁ…。委員長は基本的に誰かに夢中にはならないからな」

 美乃君は小長井先輩にあこがれてて、結構小長井先輩をよく知ってるはずだから、もしそうだったらと思って色々考えているんだろう。

 「まぁ、でも、人間って絶対誰かを好きになるもんだと俺思うし。小長井先輩が恋したって自然な事だと思う」

 小長井先輩だって、人間だし、好きな人ぐらい生涯のうちで出来るのも当たり前だしなぁ…。

 というか、小長井先輩が変なの、好きな人出来たからなのだろうか?

 違うかもしれないけど、それなら何だかわくわくしてくる。

 「……」

 俺の言葉に、何故か美乃君は俺をじっと見つめていた。

 どうしたんだろう、と俺は首をかしげる。

 「どうしたんだ、美乃君」

 「…いや、真希も好きな奴居るのか。と思って」

 「あー、居るよ」

 というか、美乃君だよ! 俺が好きなのは、美乃君だよ! とは言えないけど、それだけ答えた。

 「へぇ…」

 美乃君が、じっとこちらを見ている。

 …何か、妙にドキドキしてくる。ああ、俺美乃君と幼なじみでよかった。

 美乃君の近くに居れる幼なじみって存在でいれる事が、嬉しい。

 「で、誰なんだ? 俺の知ってる奴か?」

 そんな事を聞かれて、何だか気分が沈む。

 ああ、美乃君にとって、俺は幼なじみなだけなんだと、何だか思って。

 「あ、もしかして佐原か? お前ら一緒に居るし」

 「いや、それはありえないから!!」

 思わず、美乃君の言葉に俺は大きくつっこんだ。

 だって、理人と俺とかありえない。

 俺は美乃君が好きだし、理人とは親友なだけだし、そういうの一切なしの、まっとうな親友関係だし!

 そもそもそんな話になったら千尋にぶちのめされそうだ。

 「じゃあ、柏木とか…?」

 どうやら、美乃君は俺の周りに居る人間を片っ端からあげているらしい。

 ……ああ、違うんだ。違うんだよ。美乃君!

 俺は美乃君が好きなんだよ!

 「まさか、会長か――!?」

 「もっとありえないから!!

 あーもう、違う! 俺が好きなのは、美乃君だから!」

 思わず立ち上がって口にしてしまった言葉に、いった俺自身も、美乃君も固まった。

 「あ、えっと、あっと…」

 動揺して、仕方がない、俺。

 「……」

 無言で俺を見つめる、美乃君。

 そんな雰囲気に耐えられなくて、

 「と、とりあえず、俺が好きなのは、美乃君だから!

 会長とかそっちは全然違うから―――!」

 と、逃げてしまった。

 ああ、どうしよう…。俺は第一会議室から出ていった後、そんな不安に襲われるのだった。






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