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千尋、クラスにやってきました。

 「転入生を紹介する! 千尋入ってこい」

 麻理ちゃんの声が教室に響く。

 俺と春ちゃんと真希は、教室に居た。隗と渕上君と安住君は来なかった。

 千尋がクラスメイトに転入生として紹介されるのだ。

 昨日は学園に来た初日だからって、寮の整理や理事長への挨拶だけだったのだ。そうして、ちゃんと学園生活を始めるのは千尋も葉月も今日からである。

 千尋が教室に入ってくれば、周りの生徒達はざわめきだす。

 「可愛いー」

 「何あれ、天使みたい!」

 「ハァハァ……抱きたい」

 ……抱きたいって、んなこと言ってたら千尋にカッターで切り刻まれるぞ。

 「吉井千尋でーす、よろしく」

 「吉井は佐原の後ろだ」

 そう言う、麻理ちゃん。

 麻理ちゃんは千尋とも会った事あるし、結構仲良かったから千尋が麻理ちゃんに俺の近くの席になれるように頼んだのかもしれない。

 「りーっ」

 千尋は俺に近づくと、そう言って、嬉しそうに俺の名を呼んだ。

 周りが注目しているが、元々生徒会に入って目立ってるから周りの視線を気にしても仕方がない。

 「千尋、この子俺のお友達の春ちゃん」

 とりあえず、千尋に春ちゃんの事を紹介しておく。真希と千尋は昨日会ったから紹介はいらない。

 千尋は春ちゃんをじっと見つめている。春ちゃんは春ちゃんでじっと見つめられて戸惑っている。

 「えっと…?」

 「春ちゃん? 名前春っていうの?」

 「いや、千春だけど…」

 「ふーん、そっか」

 千尋の目はどこかぎらついている。そう、まるで敵でも見るかのような瞳。

 それを春ちゃんに向けていて思わず苦笑いを浮かべてしまう。

 「――――千春だっけ? 俺のりー、とらないよね?」

 「え、っと、理人とは、お友達、何だけど……」

 「千尋脅しちゃだめだから。そして別れてるから千尋の違うから」

 とりあえず春ちゃんが一瞬びくってして脅えているので、千尋を止める。

 というか、本当初対面で何脅してんの、って話。

 「えー……」

 「悲しそうな顔しても脅しちゃダメ」

 「まぁ、いいや! 俺頑張る。頑張って、りーのものにまたなるんだぁ」

 何か、宣言された。

 千尋って本当、何て言うか素直。何処までも素直すぎて本当びっくりする。

 周りは千尋の発言に耳を疑っているし、あーあ、何か面倒な事になりそう。




 




 *小長井匠side





 隣のSクラスに転入生が来たらしい。

 俺はよく知らないが、最強と名高い、『クラッシュ』という暴走族の総長を務めているらしい。

 「――何か、一年の親衛隊と親しそうにしてたんだって」

 そう言って笑うのは、俺と親しい友人である、松林幸一マツバヤシコウイチ

 美術部に所属している、クラスメイトだ。

 「親衛隊?」

 それで、頭に引っかかるのは、あの、佐原の事だ。

 何だか、モヤモヤする、考えていたら。

 よく、わからないが。

 モヤモヤは、消えない。

 「――ああ、何か副会長になった佐原理人って奴と仲良いらしいよ?」

 そんな言葉に、俺の胸は変な感覚になった。

 佐原理人と転入生が仲がよい。

 それにどうしようもなく胸をざわつかせる俺は本当にどうしてしまったんだろうか。

 自分の気持ちがわからないという状況に妙にいらだちを感じる。

 「匠、どうした?」

 幸一が心配そうに聞いてくる。そんな言葉に俺は安心させるようにいった。

 「何でもない」

 と、ただそれだけの言葉を。

 だって、実際に何も起きていないのだ。

 俺の心がざわついているっていうただそれだけの事なのだ。






   *龍宮麻理side―


 あたしは今、理事長室に居る。

 目の前にいる渉はあたしを見てびくびくしている。

 本当に情けない男――――あたしが昔調教したM男達を連想させる、渉。

 翔の兄とは思えないほど性格が異なっている。

 「ま、麻理さん。な、なんか用ですか!」

 「本当情けないなあ、お前。

 あたしはただ通りかかったから来ただけだってーの」

 あたしはそういって渉を見る。

 てかびくびくしてる渉みながら爽やかな笑顔の隆道はある意味すげえよな。

 「う……っ、麻理さん何しでかすかわからないから怖いんです」

 凄いびびり様である。

 あたしのが年下なんだが。

 それにしても何しでかすかわからないってひどくないか?

 あたしは自分が動きたいように自分の思うままに動いているっていうだけなんだが。

 「…渉。お前もしかして千尋にもそんな感じなのか?」

 あたしはそう言いながら、久しぶりにあった、理人の元彼である吉井千尋を思い浮かべる。

 可愛い顔して、言ってる事とやってる事はかなり危ないからな。

 まぁ、だからこそ、千尋は面白いってあたしは思うんだが。

 「…よ、吉井君は、もっと恐ろしい」

 びくびくと体を震わせながら言う、渉。

 「渉は千尋君に、”りーに迷惑かけた奴、渉さんの浮気相手の子供なんだって? あー、気持ち悪いね。かなり。てか、渉さんもりーの嫌がる事しないでね?

 したらさ、俺思わず渉さん刻みたくなっちゃうから”って言われたんです」

 隆道が、さわやかに笑いながらいった。

 びくつく渉と、さわやかに笑う隆道。

 本当、変なカップル。

 というより、隆道は何で渉と付き合っているのか、あたしには謎だ。

 まぁ、渉苛めるのは楽しそうだし、隆道Sっ気あるからなぁ。

 「へぇ。千尋らしい」

 「し、しかも…、て、寺口君も…、”理人の敵は俺が潰す! 理事長でも理人の敵なら容赦しないから”って…」

 「あー、寺口って、『クラッシュ』の総長か。そういえば理人に惚れてるらしいな」

 あたしは、寺口にはあった事ないんだよな。

 まぁ、この学園に転入してきたなら、何れ会えるか。

 「なんにせよ、千尋と寺口も転入してきた事らし、何か楽しい事起こりそうだな」

 あたしは、千尋と寺口、そして理人達を思ってそう呟いた。

 ああ、面白い事、起こってくてればいいなあ。それを思うとわくわくしてならない。




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