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龍宮家当主就任パーティーにて 3

 「こねぇな」

 「こないね」

 パーティーが始まってそれなりに時間が経過した。十文座家の一員に会いたいとわくわくしていた隗と俺は、中々現れない事に退屈を感じていた。

 「そのうち来るだろうから、そんな退屈そうにするなって」

 「でも翔兄……、俺すっごい楽しみにしてたからはやく会いたい」

 むーっとしていったら、翔兄に「もうちょっと待て」と頭をなでられた。

 翔兄はもう十文座家に文化祭の時あっただろうけれど、俺はまだ一度もあった事はない。

 だからこそ、このパーティーで会えるのかもしれないって本当にわくわくしていた。父さんは取引先として十文座家とかかわりは深いけど、母さんはあったことないらしいし、下手したら俺は龍宮家の当主ってわけではないから、機会を逃したら十文座家と会うなんてこと出来ない。

 それを思えば十文座家と会いたい! っていうのは当たり前の感情だといえるだろう。

 「それにしても流石、龍宮家。あの十文座家と親しいって時点ですげぇよな」

 「隗の家は?」

 「んー、時々交流はあるっぽいけど、十文座家が顔を出すってほとんどないらしいからな。分家筋と交流があるぐらいって父さんがいってた」

 「ふーん。そっか」

 「そう、だから俺は十文座家とは全然かかわりないからな。噂程度しかしらん」

 隗はそういった。

 まぁ、十文座家って本当特殊な家系だもんね。謎過ぎてわけわかんないし、翔兄に聞いた限りどうしようもないほどの愉快犯の家系っぽいけど。

 しかもこの現代で特殊能力とか持っているっていうのも謎すぎるし。でもまぁ、どんな特殊能力持っているのか本当気になる。本家に近いほどそういう能力が強いって話だけど、本家に近い人間ってどれだけいるんだろう? とか、本当考えたら楽しそうで仕方がないよね。

 そんな風に考えていたら翔兄のスマホがブルブルと震えた。

 翔兄はそれを見る。

 そして、笑った。

 「理人、隗、来たぞ。行くか」

 どうやら十文座家からのお誘いが来たらしい。

 俺と隗はもちろんそれに頷いた。














 *十文座 白夜side




 「むふふふふ~」

 目の前で姉貴はそういってだらしなく表情筋を緩めている。

 十文座夏実―――俺の三歳年上の姉は、現在男に見えるようにしっかり変装している。俺も女だけど、基本的に外に出るときは男装しているし、自分の事は基本的に俺って呼んでいる。姉貴には、「もー家でぐらい女らしくしよーよ」って言われたけど、”私”より”俺”の方がしっくりくる。

 男装している中でだらしない表情をしている姉貴には何とも言えない気分になるが、まぁ、ここには俺と姉貴しかいないから良しとしよう。

 姉貴は、一見平凡に見える。変装技術に関して言えばすさまじい。俺はまぁ、能力的な問題で姉貴の変装一発で見破ることできるけれど、俺の双子の弟である桔梗にはそれが難しいらしく、よく姉貴に遊ばれている。

 「今から、龍宮翔がくるのか?」

 「龍宮翔さんとー、理人君とー、渕上隗君が来るよー」

 「なんで龍宮家とかかわりない奴まで……」

 「むふふっ、そんなの当たり前じゃない。面白いしー、理人君と隗君っていう超萌えるリバカップルを生で堪能するためだよ!」

 そういって息を荒くする姉貴。

 まったく、姉貴はと呆れる。姉貴は腐女子というもので、なんというか、ハッキングの才能とかをそういう趣味のために使ってたりする残念な人なのだ。

 こんな姉貴と喜んで付き合っていて、そして十文座家って知ったうえで受け入れているらしい彼氏さんには驚きだ。

 俺もまだあった事はない。そのうち、姉貴が結婚する前にでも会うだろう。

 でも話に聞く限り、姉貴の彼氏である和志さんって喧嘩はそこそこ強いみたいだけど普通の人らしいしなー。十文座家とかかわりあるっていうか、次期当主である姉貴のお相手としてみてみれば、俺としてみれば不安になる。まぁ、姉貴は和志さん大好きだし、別に二人が結婚することに不満はないけれど。

 ちなみに、俺と姉貴が居るのは、パーティー会場のホテルの広いテラスの、端っこだ。皆会場内にいるから、わざわざ寒い中外に出ている奴なんてそうはいない。

 「というかさ、パーティーの主役である龍宮翔呼び出すとか色々面倒じゃないか?」

 「面倒かもだけど、私認める日が来たら挨拶するっていったしー? それに理人君と隗君を見てニヤニヤしたいしさ、このタイミングで遊んだ方が絶対楽しいでしょう?」

 素の姉貴って、正直どこにでもいそうな平凡で、地味な顔している。姉貴はいくつも仮面をかぶっていて、どれが本物かわからないほどに、変装の常習犯だ。そんな姉貴は、素の顔が平凡だからこそ、いくらでも変装がしやすいって言っていた。

 俺も桔梗も楽しい事は大好きだけど、姉貴ほどではない。まぁ、十文座家の家系って代々そういうものなのだろう。父さんも楽しい事大好きで、当主だっていうのに色々遊んでいたし。特に姉貴は、十文座家としての特殊能力を強く引き継いでいるから余計遊び甲斐があるのだろう。

 尤も特殊能力的な面を言えば、俺や桔梗も姉貴の事は言えないけれど。

 「ふふ、きったよー。遊ぼう、白夜」

 「はいはい」

 そんなこんな話していれば、彼らがやってきた。

 楽しそうに笑う姉貴に、俺は答えるのだった。



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