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龍宮家当主就任パーティーにて 1

エブリスタで公開していた分と、未公開分のミックスになります。次の話からは完全に公開していなかった続きになります。

続き楽しみにしてくれている方とか居るのかなと思いながらもとりあえず完結目指して書いていきますので。

 隗と付き合いだしたことで、色々俺の周りはしばらく騒がしかった。

 例えば会長がうざかったり、

 親衛隊の子達が祝福してくれたり、

 隗を好きな子は『理人様なら許せます』なんて言ってたし、

 千尋は不機嫌だったけど何だか春ちゃんと仲良しになっていたし、

 葉月は恋人がいようと俺に普通に好きだとか言ってくるし、

 翔兄と都は何処から知ったのかお祝いとかいってケーキを持ってくるし、

 渉兄は隗と俺がなんか悪だくみするんじゃないかって妙に脅えてたり――。

 まぁ、そんな感じで二週間経過した。

 その頃には少しは周りは落ち着いていた。

 そして、今日は―――翔兄の当主就任パーティー。

 あの十文座家の人間がこの場に顔を出すのだ。

 それを考えただけで俺はわくわくしてならない。

 それに翔兄の当主就任パーティーは俺が龍宮家だってバラしてからのはじめての公式なパーティーだから。

 あー、楽しみ。

 楽しいことが大好きだ。

 面白いことがあるとわくわくする。

 そんな俺だから、パーティー会場の龍宮家の控室の中で思わず頬を緩ませてしまう。

 「―――りー兄、楽しそうだね」

 「うん、まぁ、楽しいし?」

 都に話しかけられて、俺は笑って答えた。

 「ふふ、俺も楽しいよー。

 だってりー兄が俺のお兄ちゃんなんだって、お披露目出来るんだもんねー」

 にこにこと笑って、そんな事を言う都は普通に可愛い。

 というか、あれだ。都って…、学園来たら余裕で抱きたいランキング上位にランクインすると思う。

 「俺も嬉しいよ。都や翔兄と兄弟だって態度とれるのは」

 「わた兄は?」

 「どうでもいい。寧ろ兄弟なのはある意味恥だよね?」

 「…りー兄、わた兄が泣きそうな顔してるよ?」

 龍宮家だって事を面白がって隠していたのは俺だけれども、兄弟だということ隠すのはちょっとさびしかったしね。

 まぁ、渉兄はどうでもいいけれど。

 都の言葉にちらりと控室の端の方に居る渉兄に視線を向ける。

 俺の言葉をはっきり聞いていたからか、渉兄の顔は歪んでいる。

 何て言うか、女々しいよね、渉兄って本当。

 パーティーよりのきっちりとした服装してるんだから、そのだらしない表情どうにかしなよって言いたくなる。

 控室はね、結構広い。

 というか、俺ら龍宮家主催のパーティーだから主催者の控室ってわけで広い。

 父さんと母さん、翔兄や麻理ちゃんとかも居るけどちょっと離れた場所でそれぞれ雑談してるっぽい。

 あ、親戚たちの控室はまた別だよ。

 俺が龍宮家だってばらして初めてのパーティーで、色々と俺はわくわくしてるんだよね。

 それにあれだよ、ほら、このパーティーには学園内での有力者はほぼ来ると考えていいわけで、今まで面白半分で龍宮家だってこと隠してたわけだから、龍宮理人としてパーティーに参加なわけだし。

 あと隗と付き合いだしてはじめての行事とも言えるし、十問座家も来る。

 本当、頬が緩むのが止まらない。

 はやく、パーティーが始まらないかなとずっとわくわくしてる。

 「りー兄、わくわくしてるって顔してる」

 「うん、すごい楽しみ」

 「わー、りー兄が楽しそうだと俺も楽しいよー」

 そんな可愛いことを言う都の頭を思いっきり撫で回す。

 都とじゃれあっていたら、パーティーの開始時間が迫ってきた。

 「じゃあ、行くか」

 翔兄のその言葉とともに、俺たち家族は控え室から出た。

 廊下を歩く。

 ただの通路のはずなのに、その場所は必要以上に煌びやかである。

 まぁ、当たり前といえば当たり前である。

 龍宮家の当主就任パーティーが、普通の場所で行われるはずはない。

 そもそも警備がきちんとした場所以外で、行われるのはまずい。

 何かが起これば主催者の責任になる。

 「楽しみー」

 なんてにこにこと笑いながら、俺の右隣を歩く都は俺の手を握ってぶんぶんと振り回している。

 本当、俺の弟は可愛いなぁと思う。

 そうやってあるいていけば、パーティー会場に到着した。

 翔兄の当主就任パーティーは、高級ホテルのフロアを貸し切って行われる。

 扉が開かれたさきには、並べられたたくさんの食事や、既に到着している招待客達などが視界に入る。

 もちろん、今回のパーティーの主催者である龍宮家の登場ということで、その場にいた誰もが注目していた。

 ちらりと視線を向ければ、葉月や隗、それに会長とかがいた。

 他にも学園の知り合い達は、俺の方をじっと見ている。

 見返せば、隗と目があった。

 隗は面白そうにこちらに笑いかけてる。

 多分、俺と隗同じ気持ちだと思う。

 このパーティーで何か楽しいことが起こるんじゃないかってわくわくしてるんだ。

 「では――」

 父さんが、声を上げて、パーティーの開幕を告げている。

 当たり障りのないその言葉の羅列を聴き終えると、俺は都を連れて隗達の方へと近づいた。

 そこには、螢や由月とかももちろん、いるよ。

 春ちゃんと千尋は一般家庭だからいないけど、葉月もね。

 「葉月さん」

 都は葉月のことを尊敬している。

 この場でも会えたことが嬉しいのか、都はにこにこしている。

 「なぁ、理人」

 「んー?」

 「……十文座家来るんだよな?」

 「うん、いつ接触してくるかわからないけど」

 都を見てにこにこしていたら、隗が耳元に口を近づけて問いかけてきた。

 「絶対会いたいよな」

 「そうだよね。絶対会いたい。そのためには翔兄に張り付いているのが一番かと」

 「じゃあ、張り付くか?」

 隗がちらりと翔兄へと視線を向けて聞いてくる。

 「流石にこんな挨拶回りとか始まっている中で接触してくるとは思えないからもうちょっとしたら行く。隗も一緒行こう」

 「当たり前だろ」

 こそこそと隗と二人で会話を交わす。

 あまりにも大勢で張り付いてたら流石に十文座家も出てこない気がするし、そもそも翔兄が一人の時じゃないと接触してこないかもしれないけれど、でも一度あってみたい。

 それはただの好奇心から。

 それはただの面白そうって感情から。

 きっとその気持ちは隗も一緒。

 俺と隗は似ているから、きっと心からあの、十文座家に会えることを楽しみに思って仕方がないのがわかる。

 それが楽しいと、それが面白いと思う。

 「龍宮理人!」

 「何、会長」

 「なんで隗とそんなか、顔をくっつけて話してるんだ!」

 ……なんだ、会長。何かやましい事でも考えたの?

 うん、気持ちわるいよね。

 というか、俺と隗が仲良くお喋りしていようが会長には関係ないと思うんだけどなー。

 「会長には関係ないでしょ?」

 「ああ、関係ねぇな」

 俺の言葉に、隗が同意をして頷く。

 「そもそもあれじゃん。俺と隗って恋人だし、顔くっつけてようが問題ないし」

 「第一会長には関係ないしな」

 顔を見合わせあって、二人でそう口にする。

 「あ、そうか。会長理人を好きだったんだっけー。あー、そっかそっか。全然見向きもされないのに俺と理人が仲良いの気に食わないと」

 隗はどうやら十文座家と出会うまでの暇つぶしに会長を使うことにしたらしい。

 「なっ――」

 図星だったのか、会長は顔を真っ赤にさせて怒った表情を浮かべている。

 俺の方をちらりと見るのはやめてほしい。相変わらず会長は気持ち悪いな。

 なんてひどい事を考えながらも俺も暇だしと、会長で遊ぶ事にした。

 「あはは、ごめんね。俺会長に欠片も興味ないんだよ。気持ち悪いからさっさとその感情消してね?」

 「ふははっ。告白もしてないのに振られてやんの。ま、会長は親衛隊に考えもなしに阿呆な態度とってた馬鹿だもんな。幾ら気に食わないからってあの態度は人間としてどうかと思うぞ」

 「そんないっちゃかわいそうだよ、隗。ほら、会長は会長なりに考えて行動してたんだよ。きっと。あれだけ愛ちゃんたちにひどい事しておきながら俺を好きとか巫山戯た事言えるのも、会長の頭がひどいからだよね」

 「だよなぁ。つか、理人は会長の事大嫌いってオーラ出てんのにさ。罵倒されるのわかっていて、嫌われてるのわかってて話しかけるとか会長Mすぎだろ。Mとかきもいな」

 隗と二人でそんな事を言いながら、ちらりと会長に視線を向ければ会長は泣きそうだった。

 大の男が言葉責めで泣きそうになるとか気持ち悪さが半端ない。いや、会長だからこそなのかもしれないけどさ。

 「『ブレイク』の総長の東宮、ダサいね」

 あ、都が会長の方を見てさらっとそんなことを言った。

 そういえば、都って会長のこんな泣きそうな顔見るのはじめてだっけ。

 まぁ、ださいよね。もっときっぱりかっこよく決めちゃえばいいのに。

 一応会長も美形なんだからそれなりにかっこつければ、かっこよく見られると思うけど。

 まぁ、思っててもいいはしないけど。

 「だ、ダサい…」

 ショックを受けたように、否定してほさそうに都の方を見れば、

 「うん、ダサい」

 「情けないやつだな」

 都、葉月がそう言った。

 会長が撃沈した。

 本当、メンタル弱いよね。

 暴走族の総長やってたり、生徒会長やってたり、御曹司だったりするのになんでこんなに弱いんだろうね。

 「お、俺様は――」

 「しゃべらないでくれますか? 俺様とか自分でいっている時点でアレだし」

 「ダサいし、Mだし、会長(笑)みたいな扱いだな、もはや。こんな人前で泣きそうになっている段階で色々あれだしなー」

 会長益々撃沈している。うーん、一応東宮家の者なんだからもっとこういうパーティーで何を言われようと平然と出来るようになった方が良いと思うんだが、何で会長はこんなに情けないのか。

 「こんなんが、『ブレイク』の総長かー、威厳ないね」

 あ、都が無邪気な笑顔でとどめを刺した。

 渉兄に関しては都は兄だからって庇いはするけれど、会長の事はどうでもいいのか都は結構酷い事をいっていた。

 「理人君、こんばんはって、会長様、どうなさったの?」

 俺に挨拶をしにきた愛ちゃんは会長を見て困惑していた。

 「こんばんは、愛ちゃん。会長引き取ってもらえる?」

 「え、ひ、引き取るって」

 「会長も愛ちゃんと一緒の方が楽しいって。今豆腐メンタルがやられているからさー、慰めてあげたら?」

 なんていって引き渡した。ショックのまま撃沈している会長はおとなしく愛ちゃんに連れられてむこうにいった。

 「うん、このまま、愛ちゃんとくっついてくれれば一番いいな」

 「理人は光永先輩の事好きだよな」

 「うん。愛ちゃん可愛いからね。報われてほしいよ」

 なんて隗と会話を交わしながら、ちらりと翔兄の方へと視線を向ける。

 こうして話しているうちに招待客のあいさつは終わってきていたらしい。俺は隗と顔を見合わせる。隗がうなずいたから、そのまま俺と隗は「ちょっといってくるね」と葉月たちに告げて翔兄の元へ向かうのであった。




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