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体育祭を楽しもう 5

 生徒会のテントに戻れば、ただ一人会長が椅子に座っていた。

 「おう、龍宮理人戻ってきたか!」

 会長が何だかそういって、こっちに話しかけてくるが俺は無視して会長から一番離れた椅子に座った。

 「な、何故俺様を無視する――!!」

 「耳障りだから喋らないでください。愛ちゃん達と食事はできたんですか?」

 「ああ。光永愛斗達と食事をした。でも俺様は龍宮理――」

 「隗、これの口閉じさせるにはどうしたらいいかな」

 「辛いの苦手らしいから口ん中つっこめば?俺激辛のお菓子もってるし」

 気持ち悪い事を言おうとする会長に思わずぞわぞわとして鳥肌が立ちそうになる。

 そしていった俺の言葉に、隗は楽しそうな笑顔で激辛だというお菓子を差し出した。

 その激辛お菓子を受け取った俺は、

 「会長」

 「おお、龍宮理人ようやく俺の――…」

 俺に話しかけられて嬉しそうに笑った会長の口の中にそれを思いっきり大量に放り込んだ。

 「――っ」

 会長が何かが口に入ったことに、思わず飲みこむが、それは会長の苦手な激辛お菓子である。

 一気に青ざめて、顔色を悪くする会長。

 「うん、確かに黙ったね。会長」

 「だろ。会長、辛いもの嫌いだからな」

 「だ、大丈夫? 由月会長の水筒どれ」

 「ん」

 俺、隗、螢、由月の台詞である。

 呑気に話している俺達とは違って、螢はあたふたしていて、由月は水筒を会長に渡している。 

 俺と隗は、椅子に並んで一気に飲み物を流し込む会長なんて放置だ。

 そんな中で、由月はもうすぐ集合だからと棒倒しのためにいってしまった。

 螢だけはあたふたと「会長、放置でいいの?」といっている。

 『それでは午後のプログラム、第一発目棒倒しを始めます』

 そんな放送が響き、グランドに棒倒しに参加する生徒達が一斉に流れ込む。

 「お、春ちゃん発見。緊張してるね、可愛いー」

 「理人って柏木の事本当気にいってるよな」

 「俺可愛い子とかっこいい奴と面白い奴好きだからね。

 春ちゃんは可愛いからお気に入りだし。緊張してて可愛くない?」

 グランドで、緊張した面立ちで立っている春ちゃんの隣には由月が居る。

 何だか緊張をほぐそうとしているのか、由月は春ちゃんに話しかけている。

 「うえぇえ」

 「えーと、理人に隗。応援もいいけど、会長相変わらず気分悪そうだよ?」

 飲み物を流し込んでも未だに、口の中に辛いものが残っているのか気持ち悪そうに声を上げる会長。

 それを見て、螢は呆れたようにあたふたして隗と俺を見ている。

 「ん? 死ぬわけじゃねぇし、放っておけばいいだろ。喋り出したら会長邪魔だし」

 「え、ええと…、隗、邪魔だしって一応会長であり『ブレイク』の総長で…、僕らの上の人なんだけど…」

 「どうでもいいだろ。どっちにしろ俺『ブレイク』抜けるつもりだし。てか会長の下についてるとかマジ勘弁だから抜ける。そう言う事だから俺脱退するから」

 そんな簡単でいいのか、と思うけどさらっとそう言うと隗は螢に向かっていった。

 「螢も抜けなよ」

 「えーと、僕は…」

 ちらりっと会長を見る螢。

 隗の抜ける発言に固まっている会長。

 「ま、待て」

 未だに顔色が悪い会長は絞り出すような声を上げる。

 「お前らに抜けられるのは――」

 「いや、俺会長の下とか屈辱だから拒否する。

 な、螢も抜けようぜ」

 「あー、うーん。僕は会長可哀相だし残るよ」

 会長の意見なんて完璧無視でにっこりと笑う隗。

 本当、いい性格してるよね。

 螢は会長を哀れんでいるのか、残るっていってるけど。

 でも可哀相だからって残られても何だかねぇ?

 俺なら嫌かな。なんか情けないし。

 「…螢っ」

 「会長、俺の螢に感激したような目向けないでくれない?螢が穢れるだろ」

 「か、隗。会長涙目だよ?」

 感激したように螢を見る会長に、隗は毒舌を飛ばす。

 本当隗ってブラコンだよなーなんて思いながらも始まった棒倒しに俺は視線を向ける。

 グランドではあわただしく生徒達が行き来している。

 中には激しい競技だからと、倒れてしまった生徒もいるようである。

 春ちゃんは倒れないように、頑張って奮闘している。

 「お、俺様は……」

 「螢、棒倒しの応援しよーぜ。由月も出てるんだしさ」

 「…うん」

 ちらりっと会長の事を見て気にしているようだが、隗に促されるままに棒倒しの観戦にうつった。

 「由月頑張ってんね」

 「そうだな。活躍してるな。柏木は…、何か見てて倒れないか心配だ」

 「だよね。春ちゃんってこういうの苦手そうだしね」

 「しかし柏木は理人といてなんかしかけられたりしねえか。

 文化祭と体育祭で理人の人気上がってるし」

 「大抵俺か真希か千尋が一緒にいるし、どうにかするし平気。

 それに生徒会親衛隊の子達も守ってくれるしね」

 「柏木って普通そうなのに千尋と仲良いよな」

 「春ちゃんいい子だからね。千尋にも気に入られてるし」

 ふとクラスの席を見れば、千尋と真希と響が一番前に座って春ちゃんと由月を応援していた。

 真希はてっきり鏑木先輩と一緒にいると思ってたけど…、そこまで考えてもしかしたら風紀の見回りかなんて考える。

 棒倒しがもうすぐ終わるからと、応援合戦に出るため他の面々も皆移動していた。

 応援合戦は全校生徒がでる。

 クラスのテントなんて運動ができないとかいう人以外すっからかんだ。

 棒倒しは由月が大活躍してうちのクラスが勝った。

 そして、応援合戦が始まる。

 まず、一番最初は会長達の所だった。

 会長が一生懸命踊っているようだが、興味は微塵もないので俺は隗や春ちゃんと会話を交わしていた。

 愛ちゃん達は「暁様っ」と必死に声をあげてて可愛かったけど。

 会長達の所は、和風な服装をして動きにくいだろうに男らしい力強い踊りをしていた。

 ちなみに運動が苦手な子は周りで踊ってるんだけど。

 俺達の所は、学ラン。

 うちの学校学ランじゃないのに、これだけの数揃えるとか凄いよね。

 会長のチームの番も踊って、俺たちは応援合戦に参加してる。

 一年S組には、俺、隗、螢、由月と生徒会メンバー大量発生してるからか周りが凄い騒いでる。

 まぁ、副会長と下半身は俺が追い出しちゃったし今の生徒会一年ばっかになってるしね。

 来年も新しい一年次第だけど、二年も多そう。

 あと三年に上がる会長も多分残るだろうし。

 そんな事を考えながらも、思いっきり体を動かせる事が楽しくて、俺は応援合戦に励むのであった。

 応援合戦はそれぞれが本当コスプレみたいにしていたから見ていて楽しかった。 

 自分で踊るのも楽しかったし、盛り上がりを見せていて、親衛隊のわんこ達も楽しそうに騒いでたから嬉しくなった。

 ちなみに親衛隊の子女装してる子もいたしね。本当男なのに女装が似合う子ってこの学園多いよね。

 で、応援合戦が終わると騎馬戦。

 俺も出る。ちなみに上に乗るんだけど。

 馬になるのはガタイの良い連中なんだけど、俺が乗る中に響もいるんだよね。

 「響、頑張ろうね」

 「ああ」

 入場前の待機場所で、響にそう言えば、響は笑って頷いた。

 響は本当、友人と体育祭を楽しむってのが楽しいらしくて凄い笑顔浮かべていたりする。

 響の親衛隊の連中がそのせいでキャーキャーいってるしね。

 ちなみに千尋も上に乗る。

 千尋の場合は背低いし、下とか体格的にも無理だからね。

 あと螢も上に乗るはず。

 隗と春ちゃんと由月は騎馬戦には出ないけど、正直螢より隗が出た方が勝てそうな気がする。

 ま、楽しめればいいけど。

 それに俺は負ける気はないし、思いっきり暴れようと思う。

 一番最初の敵は二つ上の三年生相手だけど、負けたくないから頑張ろうと思う。

 騎馬の上に乗ったまま、敵対するグループのいる方へと移動してもらう。

 こちらを狙ってきている人間だって多くいる。

 でも負ける気はない。

 俺は負けるって事が嫌いだ。

 どうせなら、派手に勝ちたいってそう思う。

 やるならとことんやって、相手を捻じ伏せる。

 取っ組み合いをしながらも、ハチマキを奪っていく。

 どんどん、どんどん、自分のハチマキがとられないように気をつけながら奪う。

 ちなみにハチマキ奪い合いっていう割と平和的なのは、あれだ、騎馬から落とせば負けで取っ組み合いとかうちの学園じゃちょっとまずい。

 大体取っ組み合いの最中にセクハラするやつも出るだろうし、競技に夢中な間に襲われてましたとか怖くね?

 「りー、絶好調だね!!」

 近くの騎馬の上にのっていた千尋は、俺の手にあるハキマキを見てにこにこと笑っている。

 その手にもきっちり沢山のハキマチが握られている。

 千尋は運動神経抜群だから、こういうのは見た目からは想像できないけど得意だ。

 『クラッシュ』の幹部やってるぐらいだしね。

 「千尋も結構とったね」

 「うん。俺りーに褒めてほしくて頑張ったんだ」

 そうやって話している間に、ハチマキが狙われるが、俺と千尋は逆に奪ってやった。

 周りが悔しそうな顔をいたり、キャーキャー言っているのが面白くて思わず笑ってしまう。

 やっぱりこういう行事とか、楽しい事は大好きだ。

 親衛隊の子も凄く楽しそうであるしね。

 ちなみに葉月は騎馬になってるんだけど。デカイし、普通に上はないから。

 そうこうして暴れているうちに、騎馬戦は終わった。

 一番ハチマキをとっていたのは千尋だった。

 「りー、ほめて!!」

 笑顔でそうやってくるから、

 「うん。頑張ったね。千尋」

 そういって頭を撫でた。

 すぐ近くで会長が千尋を恨めしそうにみてたけど、会長みたいな可愛くない男撫でないよと思った。

 「千尋も理人も頑張ってたね。凄い」

 騎馬戦が終わると、春ちゃんは凄くキラキラした目で俺達を迎えてくれた。

 春ちゃんは可愛いよね、本当に。

 「春ちゃん次玉入れでしょ? 出るならもう準備した方がいいんじゃない?」

 「あ、そうだった。俺、行く」

 俺の言葉に春ちゃんは慌てて、その場を後にする。

 玉入れなんて平和的なものは大抵親衛隊所属のわんこ達みたいな可愛い子とか、春ちゃんみたいな子が参加するんだよね。

 愛ちゃんとかもこれかな。てか、親衛隊の子結構玉入れにでる。

 それが終わったら、学級対抗、団対抗の俺が出るリレーだ。

 可愛らしい子が必死に玉入れに参加しているの見ると何だかほほえましいよね。

 優勝を目指して皆頑張ってるんだよね。

 愛ちゃんとか春ちゃんとか、親衛隊のわんこ達が皆頑張ってるの見てると自然と笑みが零れる。

 「理人、何笑ってんの?」

 「んー。皆かわいーなぁって」

 「あー。可愛い子も好きって言ってたもんな」

 「うん。俺可愛い子とかっこいい奴と面白い奴が好きだしね」

 隗に話しかけられて、そんな返答を返す。

 ちなみに螢と由月は仲良く並んで観戦中。

 会長? 生徒会テントには居ないけどどうしてるかはどうでもいいよね!

 玉入れはね、うちのクラスは勝てなかったけど皆頑張ってたよ。

 春ちゃんがしゅんっとしていて頭なでまくっちゃった。

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