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体育祭を楽しもう 2

 「あ、理人、そろそろ200メートル走じゃない? 僕らも出場するんだー、一緒いこう?」

 そういって、俺にかけよってくるのは、隗である。

 てか、隗って運動神経まで渕上君に徹底的に合わせてるブラコン気味だけど、実際はどんくらい速いんだろう、ちょっと気になる。

 200メートル走のために列に並ぶ俺ら。ちょうど、隗とは前後だったから、のんびりと会話を交わす。

 「頑張ろうねぇ、理人」

 「うん」

 猫かぶったままの隗を見ながら、俺は頷く。

 頑張ろうねとか言っているが、渕上君に合わせて本気出す気はきっとないんだろうなぁと思う。

 ちなみに渕上君はもう少し後ろの方にいる。

 「あ、りっちゃんだ。わぁ、隗様もいるー」

 「あ、ゆたかも200メートル走?」

 近くによってきて、嬉しそうな表情を浮かべたのは隗の親衛隊隊長のゆたかだった。

 「うん、そうだよ。頑張ろうね、りっちゃん、隗様」

 「うん、がんばろうねー」

 というか、素知ってると、猫かぶってる隗みてると何だか面白くて仕方ない。

 まぁ、素の隗の方が俺は好きだけど、面白いしね。

 そんなこんな話してる間に、俺の番になる。

 ピストルの音がなって、そのまま俺は勢いよく走りだす。

 運動は嫌いじゃない。

 目立ちたくないからって、本気で走らないようにしてたけど、今はとことん目立ってやろうっていう気分だから思いっきり走っている。

 思いっきり走るのは、何だか気持ちよい。

 そして、そのまま、一位のまま、ゴールする。

 そうすれば、歓声が沸く。

 「きゃー、理人様かっこいい!!」

 「隊長流石です」

 「理人さん、凄いですー」

 「理人君、お疲れ様」

 親衛隊の子達が、そういって笑っているのが目に映る。

 「流石、理人速いな」

 「流石りーだねぇ」

 そうやって笑顔で駆けよってきたのは葉月と千尋であった。

 そうして葉月は飲み物を手渡してくれて、受け取り、口に含む。

 「思いっきり走るのって、やっぱり気分いいよね」

 「わかる。俺も運動とか喧嘩とかすんの超好き!!」

 「うんうん、俺も好きー!!

 あ、てか次走るの隗みたいだねー」

 千尋のそんな言葉に俺と葉月はグランドの方を見る。

 手加減しているとはいっても、渕上君も運動神経はいい方だし、普通に一位で走っている隗が目に映る。

 「渕上兄って、あの毛玉潰しの時強かったし、本気もっと速そうだよな」

 「ですよね、葉月さん。隗って、もっと速く走れると思うなぁ俺。

 ブラコンだからってよくやるよねぇ」

 葉月は隗の性格、毛玉君潰しで見てるし、千尋も普通に隗と仲良しで知っているからそんな感想を零す。

 「隗が、本気で走ったらもっと面白そうだよね」

 そんな二人に俺も言葉を返す。

 本当、バラしたら周りの反応とか超楽しそうだよね。

 面白いタイミングを見計らって隗に話持ちかけてみようかな?

 隗は面白い事好きだし、そのまま乗ってくれそうだ。

 隗はもちろん一位でゴールして、その後ゆたかとか渕上君も走ってるわけだけど。 

 ……本当渕上君と隗の走るスピードほとんど一緒なんだけど。

 寧ろ、つっこみたいよね。

 隗って何で渕上君の運動能力そんな正確に把握してんのって。

 言いたい台詞とかまでわかるし、本当どんだけブラコンなんだろう…。

 まぁ、ドッペル双子で面白がってるのもあるだろうけれど。

 「流石、隗速かったね」

 こちらに近づいてきた隗にそう言いながら笑いかける。

 「僕も螢も運動得意だからねー」

 そうして、次はパン食い競争だ。

 これには春ちゃんと響と安住君と真希……あと会長も出るらしい。

 親衛隊の子達ももちろん出るし、思いっきり応援しなきゃ。

 てか、ぶっちゃけ会長はどうでもいいんだよね。

 だって、グループ違うし。愛ちゃんは違うグループでももちろん応援するけどさ。

 よく考えたら、副会長と下半身会計がいないから違うグループなのって会長だけだよね。

 俺も隗も渕上君も安住君も一年だし。

 つか、会計一人足らないけどそのうちいれるのかな?

 まぁ今のままでも全然運営はできてるし、増えないかもだけど。

 「次春ちゃんと響と安住君と真希の番だよ。一緒のクラスだし、応援しよーよ、隗」

 「柏木と篠塚と由月と真希の番かぁ…。うん、応援しようか理人」

 「佐原も隗も会長も走るよ?」

 俺と隗の発言に渕上君が突っ込む。

 「会長なんて敵グループだし、どうでもいいしね。応援する必要ないと思うよ」

 「佐原…会長そのうち泣くよ?」

 「気持ち悪いだけじゃない?」

 「理人、そんなひどいこといっちゃだめだよ?」

 とか言いながらも、絶対おんなじ事思ってるよね、隗も。

 普通に本性丸出しの時は俺と一緒に会長気持ち悪い言ってたしね。

 「佐原、隗。会長が走り始めるみたいだよ」

 渕上君はそんな事を言いながら会長の方を見ているが、俺と隗は特に興味がないので雑談をしていた。

 隗は、会長何かを応援する渕上君が可愛くて仕方ないのか、渕上君にじゃれついていた。

 本当、ブラコンだよね。

 「佐原理人! 俺様、一位だったぞ!見てい――」

 「見てません。興味ないんで」

 走り終えてこちらにやってきた会長に、飴玉を舐めながらそんな言葉を返す。

 「な、俺様を見てな――」

 「あ、隗。次春ちゃんが走るみたい」

 「本当だねぇ。柏木って運動得意なの?」

 「春ちゃん、運動苦手だって言ってたよ」

 「お、俺様を――」

 「そっかぁ。じゃあ、応援してあげなきゃね」

 「うん。応援しようね」

 「おれさ――」

 「がんばれーって言わなきゃね」

 「そうだよね。そういえば安住君ってどんくらい速いの?」

 「んー、俺と螢より速いぐらいかな?」

 隗と会話を交わしながら、グラントへと視線を向ける。

 緊張した面立ちで立っている春ちゃんは何だか可愛い。

 うん、頑張って応援しよう。

 「理人君、さっき速かったね。って、何で暁様泣きそうなの!?」

 俺らの方に近づいてきたのは愛ちゃんである。

 愛ちゃんは会長を見て驚いたような表情を浮かべた。

 「わー。会長本当に泣きそうな顔してますね。俺様会長で通ってるはずなのに情けない顔してますね」

 気持ち悪いよね、ぶっちゃけ、と思いながら口を開く。

 そうすれば益々歪む会長の顔。

 「あ、暁様!!」

 おろおろとしだす愛ちゃんはなんか可愛い。

 「元気出してください。僕はどんな暁様でも、その…す、好きですよ?」

 「光永先輩ってかわいーねー」

 「でしょ、愛ちゃんって滅茶苦茶可愛いの。俺の自慢のお友達」

 はずかしそうに会長に向かって言葉を放つ愛ちゃんを見て言った隗の言葉に頷きながらそう言う。

 視線は、走り出した春ちゃんに向けられている。

 「春ちゃん、頑張れー」

 「「柏木ー、頑張ってー」」

 「どうして、佐原理人は――」

 「あ、暁様、その、気にしたら負けです! 理人君は…、はっきりしてる人なんで…その…」

 応援する俺達と、落ち込む会長と慰めようとする愛ちゃん。

 まぁ、応援してるっていっても渕上君はちらちら会長と俺達を交互に見てるけど。

 俺の視界には、頑張ってパン食い競争を走る春ちゃんが映る。

 必死になって、パンに飛びつく姿を可愛いなぁと思いながら見つめる。

 「春ちゃんは可愛いよねー」

 「理人って柏木の事気に入ってるよな」

 「もちろん。俺可愛い子とかっこいい奴と面白い奴が大好きだもん。

 春ちゃん可愛いから、お気に入り」

 「か、かっこいい奴なら、俺様だって――」

 「いやー、会長はかっこよくないでしょう」

 というか、自分で自分がかっこいいと思ってるあたり会長って痛いと思う。

 そもそも俺の言葉にショックを受けている時点で、ねぇ?

 そうして話している間に、春ちゃんは四着でゴールする。

 お次は響と安住君の番のようだ。

 二人が同時に走るだなんて、何だか楽しそう、そうおもってわくわくしてくる。

 それにしても、響は仮にも「一匹狼」なんて呼ばれてたそこそこ強い不良なわけだし。

 安住君は『ブレイク』の幹部なわけだし。

 どっちが、速いんだろうか?

 「楽しみだねぇ、隗」

 「うん、そうだねー」

 そうして笑いあっている間にも、二人は走り出した。

 「安住君の方がちょっと速いかもね」

 「そうだね。由月の方が余裕あるっぽいね。でも、篠塚も十分速いけど」

 「くっ、俺様は、一位だったのに……目線も向けないなど…ブツブツ」

 「あ、暁様、えーっと、えっと…」

 「うー、会長、ドンマイ」

 上から俺、隗、会長、愛ちゃん、渕上君の言葉である。

 それにしても、いまだにウジウジしているあたり本当会長ってかっこ悪いよね!

 安住君が、一位。

 響が、二位。

 二人ともやっぱり、足は速いようだった。

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