文化祭を楽しみましょう 5
*光永愛斗side
学園祭で親衛隊の子達と一緒に見て回ってる中で、僕のスマホに着信が知らされる。
見れば、着信は理人君からだった。
「もしもし、理人君どうしたの?」
『あ、愛ちゃん。
俺ね、ちょっと、皆に力借りたい事あるんだ。だから、今から言う人間さ、親衛隊会議で使ってる会議室に呼んでくんない?』
理人君の楽しそうな声が響く。
なにか楽しい事を思い浮かんだのだろうか、それとも、潰したい人間でも出来たのだろうか、と僕は冷静に思う。
理人君は気にいった人間には優しいけれど、気にいらない人間には本当に容赦ない人なのだ。
でも理人君がどれだけ容赦ない人だろうと、僕は理人君の事好きだし、友達だと思ってる。
理人君に、僕たち親衛隊メンバーは助けられてる、いつも。
だから僕たちは理人君のために何かしたいって思う。
「うん、わかったよ、理人君集めるね」
そのあと次々に言われた名前を忘れないように記憶にとどめて僕はそういった。
そうして、電話を切れば、一緒にいた親衛隊の子達がこちらを見て、僕は言った。
「皆、お仕事だよ」
「理人さん何ていってたんですか?」
「理人様が、僕たちの事頼ってくれてるんですか?」
嬉しそうにそういう親衛隊の子達。
理人君は懐にいれた人には優しい。気にいった子には優しい。
僕たち親衛隊は理人君に優しくしてもらってるから。
理人君の役に立ちたいって思ってくれてる子ばかりだ。
「うん。そうだよ。理人君の事ね、気にいらないから潰そうとしてる人がいるんだって。
理人君がね、この学園から居なくなるの、皆嫌でしょ? だから、頑張ろうね」
そう言えば、皆もちろんです、と笑った。
そうして、僕らは理人君に集めるように言われた子達に連絡をいれるのだった。
*東宮暁side
クラスでは、お化け屋敷をやっていて、俺様は今その受付をしている。
まぁ、俺様が受付だからか、それ目当てにくる人間は結構いて、多分それを狙って俺様を受付にしたのであろう。
佐原理人は、何をしているだろうか。
ふとそんな事を考える。
あいつは俺様の事を好きにはならないとは頭ではわかってるが、手に入れたいと思ってしまう。
…まぁ、俺様が、親衛隊を傷つけたのが原因だが。
それにしてもあいつはどうしてあそこまで親衛隊を大事に思えるのだろう?
佐原理人は謎で、俺様にはよくわからない。
わからないからこそ、興味深いとも言えるが。
そうやって考えていれば、突然、放送がなった。
『さて、ちょっと用事があって放送室をジャックしたんで、ちょっと耳を貸してくださいねー。
特に俺を潰したいらしい、御園大智先輩』
聞こえてきたのは、佐原理人の声。
って、は? 何をしているんだ、佐原理人。
しかも、御園大智って、えぇ? 喧嘩売ってるのかこいつ。
あの、御園大智に…?
何を考えてるんだ。そもそも勝算はあるのか?
俺様は佐原理人が潰されるのは正直見たくないんだが…。
『俺を潰したいんだよね、御園先輩さー。つか、俺を潰そうとか、もう、冗談でしょ? って感じだけど。
そもそも、俺が簡単に潰されると思った?
大体あんな会長のファンらしいけど、あんなアホの何処がいいのか俺には全然わかんないし?』
さ、佐原理人ぉおおお!!
周りの生徒が俺様の方をちらちら見ている。
な、何で放送でそんな事をいっているんだ!
『売られた喧嘩はもちろん、買ってあげますよ? 御園先輩の情報なんてきっちり、調べ上げてますし? 対応の仕方は何でもあるんですよ?』
声だけしか聞こえないけど、佐原理人は絶対笑ってる気がする。
『御園家と、契約結んでる子が、親衛隊に何人いると思ってますか?』
楽しそうな声。
何処までも面白そうな笑い声。
あの、御園大智を敵に回しているというのに、この余裕……。
そういえば、あの操の時も色んな人間を潰したり、排除したり佐原理人はしていた。
……佐原理人は本当に謎だ。
理事長が操を可愛がってたはずなのに何もいってこなかったのも今では謎な事であるし…。
『正解は、50人ですよ、50人。
それだけの数が一気に契約を切ったら、どうなるでしょうね?
あ、これ脅しだと思わないでくださいね? 御園家よりいい契約条件の家も、親衛隊内には居ますからね。そっちと結ばせれば御園家を切っても問題ないんですよ?』
50もの契約を一気に、切らせる…。
親衛隊と佐原理人が仲良いにしても、そんな事本当にできるのか?
『俺はね、本当に生徒会親衛隊の子達大好きなわけ。別に生徒会が好きで入ったわけでもないけど、親衛隊の子可愛い子が多いからね。従順だし。
脅しだと思ってる?でも、俺の命令は絶対だよ? 親衛隊の中で。そもそも、俺、愛されちゃってるから、俺のお願い皆聞いてくれるしね』
自分で言うなよと、俺様は思わず思ってしまった。
『俺はね、俺の敵は思いっきり潰したい人間なわけ。とりあえず、放送室きてもらえますか、御園先輩。あ、一人でですよ? 一人じゃなかったら、すぐさま契約切るような動きになるんですからね?
あと、放送室ジャックしてても、風紀は動きませんから。ちゃーんと、風紀委員長に話した結果やってますから、俺』
ああ、そういえば、佐原理人は風紀委員長と結構仲良いんだった。
俺様とは全然仲良くしてくれないくせにっ。俺様には気持ち悪いとかしか言わないのに…。
『あと理事長になんかしようとしても無駄ですよ? 俺、実は理事長と知り合いですし? 理事長脅すネタなんて沢山持ってますから』
…お、脅すネタ!?
理事長は、あの、龍宮家だろう?
俺様の家より家柄がいい、あの龍宮家だろう!?
その長男を脅すって、確か今龍宮家の次男――時期当主もきてるはずなのに、そんな事していいのか!?
『さて、しばらく待ちますからきてくださいね。御園先輩。先輩は知ってるでしょう? この前の公開処刑みたなら、俺が、やるといったら、やる人間だって』
佐原理人は俺にとって、規格外。
予想外の事をしすぎて、俺様はとてもじゃないけど、ついていけなくて、驚いてばかりだ。
周りに居る生徒達は何処までもざわめいていて、だけど何処か楽しそうに笑ってるものもいる。
他人事なら、佐原理人の行動は楽しめるものがあるのだ。恐怖心だって、もちろんあるだろうが。
俺様は、操の時潰されるすれすれの所だったのだ。佐原理人は俺様を気にいってはいないし、行動次第で、俺様は潰されるような、そんな感覚はある。
『早く来ないきてくれないですかね? あ、会長の悪口いったら来ますか? 怒って。親衛隊の会長大好きな子はごめんねー? でも俺会長の事嫌いだし? ちょっとだけ悪口言うよ?』
何処か楽しそうな声しているのが、何だか悲しい俺様である。
『会長って、バカだよね。あとMだと思うんだよね。俺超気持ち悪いよね。
そもそも親衛隊の俺の大事な子達殴っておいて、自己中でバカだよね?あの人本当に頭いいの?』
さ、佐原理人ぉおお!!
……放送でそんな事言われた俺様はどうしたらいいんだ。
Mとかいってるから、周りがこっちをちらちら見てるじゃないか。
それに俺様はMなんかではない!!
『俺かっこよい人と可愛い子と面白い奴好きですけど。会長って何で周りにかっこいいなんて言われてるんですかね? 凄く謎なんですけど。
寧ろかっこ悪いと思うんですけど』
くっ、お、俺様はそんな言葉なんかには負けない!
…何だか悲しくなってくるけど、俺様は負けないんだ
*渕上隗side
「おい、理人。会長今頃泣きそうになってんじゃね?」
今、俺は放送室に居る。
まぁ、理人についていったら面白そうってついてきたわけだ。
千尋に関してはついて来たがってたけど、理人が”千尋は俺の敵みたら手出しそうだから駄目”っていって渋々不機嫌そうに残った。
…まぁ、確かに千尋は御園先輩本気で殴りそうだからな。
「別に会長が泣いてようがどうでもよくない?」
「確かにどうでもいいけどよ。気持ち悪い泣き顔みた生徒達が可哀相だろ?」
「あ、言えてるそれ」
「それにしても、理事長脅してるなんていってよかったのか?」
「全然、問題ないよ。隗は俺が考えもなしにそんな事すると思ってる?」
「いいや、全然。ただ、理事長はあの龍宮家だからな」
龍宮家の権力は凄まじいものである。
理人が考えもなしに動くとは思っていないけれども、龍宮家の長男を脅して大丈夫なのか、ふと気になったから聞いただけだ。
今スピーカーはOFFにされている。
御園先輩が来たら、ONにして、会話を学園中に流すつもりらしい。
一々理人はやることが派手で、本当面白いと思う。
副会長に任命されるまで目立たず過ごしてたらしいけど、副会長になってからはどうせ目立つならとことん目立つって色々やってるからな。
「ま、俺はお前がどう動くか、じっくり見学させてもらうよ。
混ざったら楽しいだろうけど、これは理人が売られた喧嘩だからな」
「そ、俺に売られた喧嘩だよ。
俺を潰すって向こうが動いてきたんだもん。俺が相手にして思いっきり俺を敵に回すってどういう事か、わかってもらわなきゃね」
なんていって、何処までも楽しそうに笑う理人。
本当、いい性格してると思う。
「それにしても、滅茶苦茶目立って暴れようとしてんのはいいけどよ。
親衛隊って、そんな理人に従順なもんなのか?」
生徒会親衛隊の人数を俺は正確に把握はしていないけれども、それだけの数が、理人に従う意味は俺にはわからない。
だから、問いかければ、理人は笑った。
「俺ね、副会長になって、とことん目立つ事に決めたから、順序を追って、俺の秘密ばらしちゃおうかな的な気分なわけ」
「理人の秘密ねぇ…?」
「隗もさ、性格偽ってるの、面白い機会にばらしちゃえば? きっと周りの反応すっごく面白いと思うんだよね」
理人は周りの反応を見て楽しんでいる愉快犯みたいな奴だと思う。
面白い事が大好きで、そのために動いてる。
まぁ、それは俺にも言える事だけど。
「ま、そういう機会があったら、ばらすのもいいとは思うけどな。猫かぶって抱きたいだの周りに言われるの気持ち悪いし」
「そうだよね。本当、邪な目で見られるとか気持ち悪いっていうかさ」
「だよな。『ブレイク』の奴らもマジ気持ち悪いの。俺が猫かぶって笑顔浮かべてるからって何か……、言ってる奴らいるし。
つか、『ブレイク』ってマジ謎なのはさ、ほとんどがバイかホモな事なんだよな」
「……そういえば、前もそれ言ってたね。『クラッシュ』は普通に彼女持ちとか居るのになぁ」
「多分、会長があんなんだからじゃね? 男の尻追い回してわけだし」
本当、『ブレイク』の奴らは何だか俺をそういう目で見やがって、なんか気色悪い。
しかも螢にまでそんな目向けてるから余計何か、気持ち悪いんだよな。
俺の大事な弟をそんな目で見るなって何度怒ってやろうかと思った事か…。
「近いうちにさ。『ブレイク』抜けてやろうかと俺思ってんだよな」
「へぇ? 何で?」
「んー、いい加減『ブレイク』に居るの気持ち悪くなってきたしさ。あの、会長の下についてんの、なんか精神的に嫌」
「まぁね。あれの下ってのがなんか嫌だよね。とはいっても、俺ら生徒会ではあれの下だけど」
「まぁな。次の投票で一位かっさらえばよくね?」
理人は親衛隊に慕われているし、生徒会の親衛隊の規模は大きい。
それに、理人の清々しい暴れっぷりは、恐怖を人に植え付けると共に、人を惹きつけるようななにかがあるから、やろうと思えば理人一位とれると俺思うし。
「それ、楽しそう」
「だろ?」
「投票って三学期にあるんだよね。次期一年生も含めてさ」
「そうだけど?」
「じゃあさ、それまでに隗の素ばらしちゃおうよ。俺猫かぶってる隗より、素の隗の方が断然好きだし」
にっこりと笑ってそういう、理人。
本当に何処までも面白そうに企んだような目を浮かべてる。
「いいな、それ」
そうして俺も、笑う。
そうやって、たくらみを離していたら、バンッと放送室の扉が開いた。
入ってきたのは、栗色の髪をなびかせた可愛らしい生徒―――御園大智だった。
「――こんにちは、御園先輩」
理人がそういって、笑いながらスピーカーをONにしたのを俺は見る。
俺は傍観者。
さぁて、理人の潰しを間近で見せてもらおう。
*龍宮麻理side
『――あんたっ、会長様の悪口言うなんて何を考えてるの!!』
『えー、だって本心ですし?』
スピーカーから聞こえてくる、理人の声に思わず笑みがこぼれる。
「相変わらず面白いことやるわよね、理人って」
「あー、俺も混ざりたい」
あたしは、今都と共に色々な場所をめぐっていた。
翔は用事が出来たと去った後から、まだこちらにきていない。
それにしても、突然の用事って、何か面白い事でもしているのかもしれない。
後で、聞いてみよう。
『会長様は素晴らしいのよ! 凄くかっこいいし、家柄もいいし、完璧なのよ! それを愚弄するなんて! しかも、僕に一人で来いっていっときながら何で隗様が居るの!?』
『隗? んー、見物したいんだって。隗って面白い事好きだからね』
『そもそも、あんた親衛隊の癖に何で――』
親衛隊――、理人は強姦とかが嫌いだからって理由だけで確か入ったのよね。
「ふーん。『ブレイク』の総長って、人気あるんだねぇ。俺にはよさわかんないけどさ」
「ん? 都はあった事あるんだっけ?」
「一応敵対してる暴走族だしねー。それにあの毛玉潰す時いたし」
『さて、御園先輩。家が色々大変になるのと、俺を潰そうとしないの、どっち選ぶ?』
楽しそうな理人の声が、響く。
『なっ、あんたに何でそんな権限あるのよ! 大体あんたみたいな庶民に従うわけないでしょ』
「庶民ねぇ……」
「……ばらしたらこういう人って凄い反応しそうだよね」
理人が翔の実の弟だと知ってる身であるから、どうしようもなく、苦笑してしまう。
この学園は家柄が重視される。それはこの学園にしばらく勤めていて、よくわかった。
実際生徒会は家柄や顔がいい人間が選ばれるわけだし。
『従いますよ? だって、俺が絶対服従するように、ちゃーんと、躾てますから』
にっこりとほほ笑む理人。
『は?』
『だって、俺これでも生徒会親衛隊総隊長ですもん。
下の人間の躾はちゃんとやりますよ。俺の支配下に居るんですからね』
ああ、理人はきっと凄く楽しそうに笑ってる。
さらっと、理人が暴露した言葉に理人と対峙しているであろう御園とか、あと放送を聞いたいた面々は一旦静まりかえる。
だけど、それはすぐさま叫びにかわった。
「は?」
「え、佐原が親衛隊総隊長!?」
「光永先輩じゃなかったの?」
「はぁああああ?」
「つか生徒会に興味ない癖に何で?」
「きゃああ、これで理人さんに正面切って隊長って言える!!」
「理人様ぁああああ」
きっと、混乱とかさせることを楽しんでるんだろうなと思う。
それが、理人だし。
『は? 親衛隊総隊長…!?』
『そうですよ。卒業した元隊長から任されてやってますけど?
俺はね、嫌いな奴に容赦するほど甘くないし? 言う事聞かない奴らは排除しちゃってるし。あと親衛隊のわんこ可愛いから制裁とかしてほしくなかったし?だからまぁ、うまくまとめてますし』
『何で、会長様に興味ないって言ってる癖に――』
『組織に属するなら、トップに立つ方が断然楽しいでしょう? 誰かの下につくって事態があんまり好きじゃないんですよ、俺。
副会長になるのは面白そうだとは思いましたけど、トップが会長ってのが、凄く不満ありますしね』
『会長様になんて事を――』
『だって、俺会長嫌いですもん。俺の大事なお友達殴ったし』
そういえば、理人の大切な親衛隊の子を会長は殴ったんだっけ。
だからこそ、まぁ、理人に嫌われているわけだけど。
『それで、俺を潰すつもりありますか? というより、潰せると思ってますか?
親衛隊メンバー全員俺の味方です。中には御園家と契約を結んでいる人間が沢山います。
で、どうしますか?』
『……っ』
悔しそうな相手の声が、響く。
『………くっ、諦めるよ! 契約をいくつも切られたら困るし! でも会長様に必要以上に近づいたら許さないんだから!』
『安心してください。頼まれても近づきません』
それにしても、秘密を一つずつばらしていく気なら、そのうち龍宮家だって言う事も理人はばらすのかもしれない。
あたしはふとそんな事をおもって、その時が楽しみだと笑った。
*柏木千春side
「もー、理人ってば、放送流れた時凄くびっくりしたよ」
「春ちゃん心配してくれてたの?」
理人VS御園先輩の放送の流れた後、理人はクラスに戻ってきた。
理人は放送の事もあってかなり目立っていて、理人目当てでクラスにきている人も結構いるみたいだ。
「当たり前じゃん。御園先輩に喧嘩売るなんて、びっくりしちゃって」
「…俺もびっくりした」
俺と一緒に呆れたように理人を見るのは篠塚だ。
「それに、生徒会親衛隊総隊長だなんて、全然知らなかったから本当驚いたんだよ」
「まぁ、隠してたからね。愛ちゃんが総隊長って思われてた方が目立たなかったし」
「理人、目立ちたくなかったの?」
「そ、副会長にならなきゃばらすつもりもなかったんだけど、どうせ目立つなら思いっきり目立った方が楽しいでしょ?」
何ていって、理人が笑う。
面白い事とか大好きだもんね、理人って。
そんな事を思いながら俺は理人を見る。
色々隠し事してたり、理人って、どれだけのものを隠してるんだろう?
ふとそんな事を思う。
俺と理人が友達だったとしても、理人の事俺よく知らないのかも、それを思うと何だかへこみそうだ。
「どうしたの、春ちゃん」
「いや、俺と理人仲良くなって結構たつのに、俺理人の事知らないなぁって思って」
「春ちゃん可愛いね」
なんか俺の言った言葉に理人が俺の頭をなでまわす。
本当、理人って人の頭なでるの好きだよなと思う。
ここ最近で理人に対する周りの反応とか色々変わってきている。
耳を澄ませば、色々な声が聞こえてくる。
「あー。いいな。僕も隊長に頭なでられたい」
「笑顔可愛いよなぁ」
「Sっぽいし、罵倒してくんないかな…」
「理人様ぁああ!!」
うん、罵倒ってMなのかな…。
この学園って俺はあった事ないけど、SMカップルとか居るらしいからなぁ。
「春ちゃん。春ちゃんが聞いてくれたら俺なるべく答えるし、俺の事知りたいなら聞いてくれていいんだよ?」
「うん…」
「もちろん、響もね」
「お、俺は別に知りたいわけじゃ…」
「いやー、明らかに知りたいって顔してるよね。質問してくれたらちゃんと答えるよ?」
そうやって理人と篠塚と会話を交わしていれば、
「理人!」
「おー、あれが噂の理人君か」
理人を呼ぶ声がする。
振り向けば…、確か、学園からいなくなった会計の親衛隊の隊長…理人が和志先輩って呼んでるその人と、女の人がいた。
「あれ、和志先輩。それ誰ですか?」
「俺の彼女!」
「夏美でーす。よろしく、理人君。それにしても理人君、噂には聞いていたけど、受け要素満載だね!
一緒に居る子も、不良君と平凡君だし。これは不良×腹黒かな? それとも腹黒×平凡?」
「……あー、そういえば和志先輩同類っていってたもんね」
確か、和志先輩は理人が言うには腐男子っていう人種らしい。
何でも男同志のイチャイチャを見るのが好きなんだとか…。
俺にはよくわからないけど。
「そう。そもそも俺が腐ったのは夏美の影響だし」
「へぇ…」
「理人君は彼氏作らないの? フラグ立ってんでしょ。何人かに」
「作る気は今ん所ないけど」
「えー、そこは作っちゃおうよ! 私に萌えを提供してほしいわけよ、ぜひとも!」
「まぁ、気にいって付き合ってもいいかなって思ったら作ってもいいんですけどね。付き合って面白そうならそれでいいですし」
理人って確かバイなんだっけと、そんな会話を聞きながら俺は思う。
俺は男同士に偏見はないけど、男と付き合うっていう気はないなぁ。
俺ノーマルだし。
「じゃあこの不良君とかは?」
「え、お、俺?」
いきなり話を振られて驚いているような篠塚。
それを見て笑いながら理人が言う。
「いや、響とは普通に友達ですから、友達」
そうやって会話を交わしながら、文化祭は過ぎていく―――。
*龍宮理人side
とわけで、あっという間に何も起こらないままに文化祭は過ぎていった。
で、今は閉会式。
司会は隗と渕上君がやるみたいで、俺は裏方に居る。
まぁ、安住君は喋るの苦手だし、司会とかできないだろうしね。
あの後、麻理ちゃんとか都もやってきて、色々騒いだりして、結構楽しかったなぁと思いながら隗達のやる司会を聞く。
『じゃあ、これから』
『第××回』
『『四宮学園文化祭閉会式をはじめるよー』』
それにしても、本当、よく隗はこうやって渕上君にあわせるよなぁと関心する。
隗達の言葉に、というか、隗達が壇上に現れて、一気に騒がしくなる生徒達。
『『皆お疲れ様ー。楽しかったー?』』
ブラコンも此処まで来ると凄いよね、と思う。
こんな風に渕上君の言う事わかるとか、凄いよね、本当。
やっぱり隗は面白いなぁと思う。
『『僕らも思いっきり楽しんだんだよ~』』
なんて言葉と笑顔に、周りが可愛いと叫んだのがわかる。
隗の演技って本当完璧で、面白いなと思う。
『もうすぐ』
『体育祭もあるから』
『『それもめいいっぱい楽しもうね!』』
四宮学園は、文化祭と体育祭が近くにある。
『『じゃ、閉会式を終わるよ~』』
そうして、そんな締めくくりとともに、閉会式は終わった。