文化祭を楽しみましょう 4
*龍宮理人side
「理人さん、こんにちはーっ」
「接客終わったんですか?お疲れ様ですっ」
「隗様達も一緒なんですね!」
「てか、これから理人君に普通に話しかけられるとか嬉しいーっ」
―――接客を終えて、隗と小長井先輩と千尋と一緒に歩いていたら次々と声をかけられる。
うん、親衛隊の子達は本当、可愛いよね。
「佐原は、本当に親衛隊に慕われてるんだな?」
小長井先輩がそういって、俺の方を見てくる。
というか、俺は170センチぐらいで、千尋と隗は160センチちょっとだから、180センチ以上ある小長井先輩って滅茶苦茶背高く感じる。
「可愛いでしょう? 俺のわんこ達。みーんな、俺の言う事ちゃんと守ってくれるんですよ?
まぁ、たまに守ってくれない子居ますが、そういう奴はきっちり、しつけちゃえばいいだけですしね」
今はそんなに俺に逆らう子って居ないけど、親衛隊に俺が入った当初は色々ひどかったからなぁ。
まぁ、その分、躾がいがあったけれども。
「俺の…?」
不思議そうな顔をする小長井先輩。
そういえば俺隗達にもだけど親衛隊隊長って事いってないもんね。
真希は知ってるけど。
「親衛隊の子達と俺凄く仲良しですから。
お菓子とか作ってあげると凄く可愛いですよ?」
親衛隊の子達って本当可愛いからお気に入り。
何だろう、本当、可愛いし従順だしさ、だから何か守ってあげようって気になる。
「この学園って、りーのお気に入り結構いるよね」
千尋がそういいながら俺を見てくる。
――そういえば千尋は昔から゛りーのお気に入りは俺だけでいいのに゛って拗ねてたっけ。
今もそういう事考えててるのかもしれない
四人で、のんびりと会話をしながら歩く。
人気のない場所とかを見回りしなきゃというわけで、小長井先輩の持っている地図を見ながら、歩いていく。
「あ、理人さん、これもらってください」
そんな中で、一人の男子生徒に呼び止められた。
振り向けば、茶髪の少年がいる。
差し出されるのは、一つの小さな袋。
それを見ながら、俺は言った。
「ねえ、君誰?」
「え、僕は生徒会親衛隊のメンバーです、けど」
わざとらしくショックを受けたように下を向く。
それに向かって、俺は笑みを張り付けたまま続けた。
「生徒会親衛隊に君みたいな子いないよ。嘘までついてなに考えてんのかなあ?」
俺の事気にくわない人間の仕業なんだろうけど?
俺を甘く見てもらっちゃ困るよ、本当。
俺が親衛隊の子からなら何でも受け取る、一人ぐらい紛れ込んでも気づかない、そう思ったんだろうけど。
「な、僕は生徒会親衛隊の――」
「名前は? 一応いっとくけど嘘は通じないよ?
俺は中等部のメンバーも含めて生徒会親衛隊のメンバー、全員覚えてるから」
そういってやればその子は驚いたようにこちらをみた。
「俺は記憶力いいほうだし、それにみんないい子だしね、しっかり全員顔も名前も知ってるよ?
君は俺ん中で顔も名前も全く知らない人。だから、君は親衛隊メンバーなんかじゃないって結論にいたるわけだけど」
俺の大事な親衛隊の子を語ろうなんてするおバカさんにはなにかやんなきゃだめでしょ?
そんな思いで彼を見る。
その男子生徒は、逃げ出そうとでも言う風にかけだそうとするが、
「ねぇ、何逃げようとしてるの? りーに何かしようとしてるんでしょ?」
「…風紀委員長として見過ごせないな」
千尋と小長井先輩に呼びとめられていた。
そのまま、風紀委員室に直行する事となった。
……確かに事情は聞かなきゃだけど、文化祭思いっきり楽しみたかったんだけどな。
まぁ、俺に何かしようっていう奴を潰しちゃえばそれでいいか。
それはそれで滅茶苦茶楽しそうだし。
そういえば、風紀委員室に来るのは、あの毛玉君と色々あった時以来である。
一学期は毛玉君関連で何度も此処にきていたからなぁ。
「あ、真希と鏑木先輩じゃん」
風紀委員室には真希と鏑木先輩がいた。
付き合いだしたわけだし、鏑木先輩が連れ込んだのかもしれない。
「理人に、風紀委員長に、千尋に、隗?
なんか面白そうなメンバー揃ってんじゃん。何してんの?しかもその子は?」
真希が一気にそういって言葉を発す。
「あー、なんか生徒会親衛隊の名語って俺に近づいてきたからさ。だから、事情をしっかり話してもらおうと思ってね?」
そういって、俺が笑えば、真希はへぇ、と面白そうな表情を浮かべた。
真希も面白い事とか好きだしな、だからこそ、『銀猫』なんていう情報屋やって遊んでるわけだし。
「…さて、佐原、吉井、渕上兄、そしてお前も、適当に腰掛けてくれ」
小長井先輩がそういって、俺らはソファに腰掛ける。
二人掛けのソファに俺は千尋に手を引かれて座った。
目の前に小長井先輩と隗、そして、俺の右側にさっきの男の子が居る。
その向かい側には真希と鏑木先輩がこちらを見つめて立っていた(一応席は空いてるけど、二人はなんか立ちっぱなし)。
「それで、お前の名前は?」
小長井先輩がそういって、真っすぐに彼を見つめれば、彼は脅えたように下を向いた。
「…………た、田中、み、幹彦です」
……やっぱり、名前も一切聞いた事もない。
この子は何をおもって俺に親衛隊だと偽って近づいてきたんだろう?
「ふーん。田中君か。で、田中君は何で俺に嘘ついてまで近づいてきたわけ?
てか、もしかして渡そうとしたお菓子とかに何か入ってるパターン? この学園だし、媚薬とか入っててもおかしくないわけだし」
…この学園の生徒って結構媚薬所持者多いからなぁ。
俺が親衛隊使って強姦減らしてるし、小長井先輩も強姦減らそうと動いてるけど、結局完璧にこなすなんて難しいわけだし…。
しかも、この子今、媚薬で反応したし。
うわ、本当に俺仕込まれる直前だったのか。…親衛隊の子の顔と名前全員覚えててよかった。
「…俺のりーに媚薬を仕込む? 俺のりーに?
媚薬仕込んで俺の大事なりーにつっこむか、りーにつっこませるかする気だったの?
わー、殺したい。凄くぶち殺したい。
未遂だし、まぁ、しないけど?企んだ奴はあれだよね。やっぱり、思いっきり ぶん殴って、顔面傷つけて、二度と人前に出れないようにしようか?
全治三カ月の傷とかはやっぱ、当たり前だよね?
カッターで…「…千尋、ストップ。危ない事いいすぎだから」
なんか隣でブツブツ笑顔で言い出した千尋に、思わずストップをかける。
というか、幾らなんでも殺しちゃだめだから。
殺人犯とかに俺千尋になってほしくないし。
そして、一応風紀の前でそういう危ない台詞は控えるべきだと思うしなぁ。
……小長井先輩と鏑木先輩が驚いたような顔をして千尋を見ていた。
「本当、千尋って、見た目と中身会わないよねぇ。まぁ、面白いけど」
隗は隗で、猫かぶった口調のまま、笑みを浮かべる。
真希は何だかヤンデレ萌えとか言いながら悶えているし、連れてこられた田中君は千尋の発言に滅茶苦茶震えてる。
「で、黒幕は誰なわけ?」
俺の冷たい声が第一会議室に響き渡った。
震えたままの男子生徒は下を向いて、だけど、小さな声で言う。
「………御園大智様です。会長様の熱狂的なファンの」
御園大智。
それは会長に熱狂的な恋愛感情を持っている生徒の名前である。
実は、俺が毛玉君を潰しにかかってた頃、毛玉君を結構苛めていたのはその人だったりする。
俺にはさっぱりあの会長の良さはわからない。
ただの俺様というか、気持ち悪い奴じゃないか。
ああ、会長に告白された事を思い出してどうしようもなく気持ち悪くなってきた。
「確か御園財閥の末っ子だっけ」
翔兄とか都は御園財閥の人間とパーティーで面識があるはずだ。
俺はパーティーとかほとんど出てないから面識ないけど。
「御園大智って、御園財閥の末っ子で、超両親に甘やかされている可愛い子だよね!!
受けっことして最高だと思うよ、俺。会長に一途だし、一途な思いが届けばいいのに!!」
「真希、調べてあるの?」
「そうそう。萌えの対象的な子はしっかり調べてあるよ!
理人が知りたいなら見せるけど」
「流石真希」
萌えの対象っていうのが不純な動機だけど、真希は有能だからな。
「情報を調べた…?」
「小長井先輩、俺一応情報屋やってるんですよ。色々調べたら便利ですし!」
「……俺は危ない目あってほしくないし、やめてほしいけどな。真希が怪我したら嫌だし」
そういいながら、鏑木先輩は真希の頬に手をやる。
その瞬間ボッと赤くなる真希の顔。
本当、鏑木先輩の前だけ、キャラ違うというか、乙女だよね、真希って。
「よ、美乃君! 大丈夫だよ。俺強いし」
顔真っ赤にしてどもっている、時期組長。
うん、中々面白い光景だ。
まぁとりあえず、情報は真希からもらうとして。
「御園先輩が敵かぁ、それはめんどくさそう」
御園先輩って生徒会とか風紀入りはしてないけど、かなり人気あって、抱きたいランキング7位ぐらいなんだよね。
高等部の人気投票の中で。
親衛隊の規模もまぁまぁ大きしい、会長とクラスメイトらしいよ?
親衛隊には入ってないけど、会長にべたぼれって噂だ。
「御園が敵なのに、面倒の一言ですませるのはどうかと思うが…」
小長井先輩がそんな事を言いながら俺の方を見てくる。
どうやら俺を心配しているらしい。
んー、正直俺の事なめないでほしいなーって気分には少しはなる。
だって、心配しているって事は俺が御園先輩に潰されると危惧してるわけで…。
俺が御園先輩に潰されるかもと小長井先輩の中で思われてるって事。
俺は、誰にだって負けるつもりはないし、自分の持ってるモノ全部使ってでも、誰かに負けるなんて嫌だと思う。
つか、潰されるとかそんな屈辱絶対嫌だし。
「小長井先輩、御園先輩の家がどれだけ大きかろうと、御園先輩が甘やかされていて、御園家が俺の敵にまわろうとも、対抗の仕方は色々あるんですよ?」
甘くみられるのは嫌だ。
負けるのも嫌だ。
だから、とことん、潰してあげようじゃないか。
*渕上隗side
理人が凄く楽しそうに、何かをたくらんだように悪戯に笑う。
御園先輩への対抗の仕方は色々ある、そういって、笑う理人。
本当、理人は謎だらけだと、俺は思う。
千尋とか、真希は理人の事きっと俺より知ってるんだろう。
御園先輩が敵だと知っても、不安も心配もせずに、理人なら潰されないってそんな表情をしている。
理人の謎を、俺が知らなくて、千尋と真希が知っているって、何だか少し変な気分になる。
俺と理人は似ている。
そう、俺は思ってる。
でも結局似ているだけで、俺と理人は違う人間。
俺は、理人の事を知っているようで、知らないのだ。
「…佐原、何をする気だ?」
風紀委員長が、少し眉をひそめて、そう問いかける。
風紀委員長の瞳には、理人への好意が浮かんでる。
風紀委員長は、理人の事が好きなのだと思う。
でも、風紀委員長は理人の本質というか、理人の強さをわかっていないようにそんな風に俺の目には映る。
風紀委員長にとって、理人は守るべき後輩というか、そういう人間なんだと思う。
でも理人は守られるより、守りたいって人間だと思う。
そもそも理人は誰かに負けるつもりも何もない。
見ていてわかるのだ、俺には。
理人には、御園先輩に対抗するだけの術があるのだ、きっと。
「何って、可愛いわんこ達の力を借りちゃおうかなと思いましてね」
そういって、理人は面白そうに笑った。
わんこって……、理人がよく口にしている親衛隊メンバーの事だろう。
親衛隊に力を借りるとはどういう事なんだろうか?
本当、理人は見ていて楽しい。
俺は楽しい事が好きだから、理人みたいな面白い奴は本当、気にいっている。
「理人、僕も手伝おうか~?」
正直、理人が何をするのか気になる。
近くで見て居たいって、そうおもって問いかける。
「んー、いや、隗と一緒にやんのも楽しそうだけど、今回は一人でやるよ。そうしないと、見せしめになんないし」
「そっかぁ。まぁいいや、でも近くで見てていい? 理人が暴れるの見るの、凄く楽しそう」
正直、ワクワクしてならないのだ。
理人の潰しを見るのは、心底楽しいって、そうおもってるから。
「いいよ。あ、千尋も何もしないようにね? 俺がやるから。
あと、真希は情報俺にちょーだい」
そういって笑った理人の顔は、何処までも楽しそうだった。