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文化祭を楽しみましょう 2




 *島根和志side



 今、俺は裏門に居る。

 というのも、彼女の夏美を待っているからだ。

 今回は夏美はどんな格好で来るんだろう。事前に聞いても居ないから検討もつかない。

 俺の彼女は、一言で表すなら愉快犯とも言える。

 それに、今回は龍宮家の龍宮翔が学園祭にきているらしいし、もしかしたら夏美はちょっかいをかけるかもしれない。

 本当、怖いもの知らずとでもいうべきなのか。

 でもまぁ、夏美だから仕方ないと思う。

 夏美の実家はあの、”十文座家”だから。

 そんな事をおもっていれば、声が響いた。

 「かーずーしぃい!」

 それと同時におもいっきり抱きつかれた。

 「夏美、久しぶり」

 ぼーっとしていれば横から抱きついてきたのは、恋人の夏美だった。

 会うのは久しぶりだ。

 とはいっても毎日電話とかで話してるけど。

 「で、その格好は?」

 まじまじと、俺から離れた夏美を見つめる。

 夏美はなんていうか、丸い眼鏡をかけていて、髪は少しボサボサな感じで、なんつーか、夏美って元は美人なのに、地味っこみたいな恰好だった。

 「えー、だって和志って理人君達に私が腐女子だって説明してんでしょ? だからよ。

 だったら、オタクっぽい恰好すべきでしょ」

 面白そうに笑う夏美。

 基本的に人とあまり関わりも持たず、微妙にひきこもりっぽい夏美は外に出るときは結構変装してる。

 まぁ、素の夏美って目立つから仕方ないけど。

 「それにしても、文化祭っ。ああ、もう、誰かがいちゃついてるのが見たい!! ああ、どっかにいちゃついてるカップル居ないかな。それか、文化祭で芽生える恋心!

 接点のなかったもの同士の、ふれあい! 『え、こいつってこんなに優しかったの』みたいなときめきとか、友人関係から進んでいく恋愛とか、『俺はお前を友人として見た事なんかねぇ、俺を男として見ろ』みたいな、そういうのないかな!!」

 「俺がクラスの仕事ない時は一緒に探しに行こうぜ。俺もカップル探ししたいし」

 「もちろんよ! 

 てか、その前に、ちょっとやる事あるから、静かな場所に案内してくんない?」

 そう言って、夏美はなにかを企んでいるような顔で笑った。

 そうして、夏美を人気のない屋上まで連れて行ったわけだが、夏美はバックからパソコンを取り出すと、黙々となにかをし始めた。

 それを覗き込めば…、映っているのはこの学園の風景。

 ……こいつ、セキュリティーにもぐりこんで監視カメラの映像見てやがる。

 別に驚きはしない。

 ”十文座夏美”なら、それぐらい、当然にできる。

 「で、何、映像なんて見てやがんの?」

 「何って、今日時期龍宮家当主となる龍宮翔さんきてるんでしょ? ご挨拶しようと思ってね。

 まぁ、うちの父さんと龍宮家現当主は友好関係にあるけどさ。

 龍宮翔がどんな人間かもわかんないし? 父さんには私が当主になるんだから、時期当主の龍宮翔が気にいらないなら関係切ってもいいって言われてるしー?」

 にっこりと笑う夏美を見ながら、俺はやっぱりと思った。

 …夏美の家、”十文座家”というのは特殊な一族だ。

 そして揃いも揃って”十文座家”というものは面白い事が好きな家系らしい。

 どうせ龍宮翔に会うのも、見極めよりも面白そうというのが勝ってるんだろう。

 そうおもいながら、俺は呆れたように楽しそうにパソコンをいじくっている恋人を見つめるのであった。






 *龍宮理人side



 「いらっしゃいませー、って会長じゃないですか。何しにきたんですか。邪魔何で帰ってください。つか、会長は愛ちゃんと一緒に居てあげればいいじゃないですか」

 俺は教室に入ってきた会長を見て、思わずそんな言葉を口にする。

 可愛い愛ちゃんは会長と一緒に文化祭を回りたいっていってたのに!

 ”あ、暁様を、誘おうと思うの”って昨日愛ちゃんは頬を赤らめていってたからね。可愛いよね、愛ちゃんって。

 「誘われたけど、俺様は断った。だから佐原りひ――」

 「……愛ちゃんの誘いを断ったって、会長何さまですか? あんなに可愛い可愛い愛ちゃんの誘いを断るなんて、何て身の程知らずなんでしょう」

 会長が俺を誘おうとしてるのはすぐにわかったからこそ遮った。

 真面目に会長と噂になるとか死んでも嫌だ。

 「あはは、理人って、本当毒舌だねぇ」

 何て言いながら隣で笑う隗は絶対、会長の事心の中でバカにしていると思う。

 「隗、貴様―――」

 そう言いかけた会長に、

 びゅっ、っと何かが投げられた。

 ……それは、ドアへと突き刺さる。

 投げられたのは、一本のフォークだった。

 「―――りーが、嫌がってんだから、消えてよ。会長さん」

 にっこりと笑うのは、メイド服に身を包んだ千尋である。

 普段の容貌から女っぽいのに、今はガチで化粧して女装してるから女にしか見えない。

 そこらへんの女より美少女に変身している。

 それにしても、前はカッターなげて、今回はフォークなげて、あたったらどうするつもりなのか。

 まぁ、千尋の事だから会長に当たっても全く気にしないんだろうけれども。

 まぁ俺も会長がどうなろうとどうでもいいし、止めないけど。それに今回はカッターじゃないし、殺傷事件とかにはならないだろうから。

 「貴様ーっ、危ないだろ。この俺様に向かって」

 「煩いんですけど。りーは行事事大好きなんだよ? それを邪魔するとか、俺に喧嘩売ってんの?」

 千尋の言葉にびくっとなる会長を見ながら、本当にヘタレな会長だよなあなんて思った。

 「いいの~? あれ放っておいて」

 「いいの。千尋は俺が面倒な事嫌いなの知ってるしさ、殺傷事件は起こさないだろうし」

 にっこりと笑えば、隣にたつ隗も面白そうに笑った。

 周りのクラスメートは青ざめてたりするのに、本当いい性格してるよね、隗って。

 千尋のあの性格をすぐ面白いってうけいれるあたりやっぱり俺と隗にてるなあなんて思う。

 「……千尋、そのくらいにしときなよ」

 困ったようにそういったのは、春ちゃんだった。

 教室で千尋がフォークで会長に攻撃をするという光景は春ちゃんには耐えられないものらしい。

 「えー、だってはーちゃん、こいつりーが嫌がる事してるんだよ?

 りーの嫌がる事するとかもう存在してる意味ないし、つか邪魔だし」

 「うーん……千尋が理人の事大好きなのはわかるけど、千尋が暴れてたらお客さん怖がってこなくなっちゃうよ?」

 千尋に困ったように笑いながらも話しかけている春ちゃんに周りの目が集まっていた。

 耳を傾ければ、

 「あの千尋ちゃんをとめに入るとか勇者だ!」 

 「柏木って佐原とも仲良くしてるしすげえよな」

 なんて声が聞こえてくる。

 「んー、此処が繁盛しないのは困るしやめるー!!

 俺頑張っちゃうもんね。おもいっきりりーのために頑張るんだ」

 「うん、俺も裏方頑張るよ」

 何て、二人してにこやかに笑ってる姿は何だか可愛らしい。

 千尋も春ちゃんも可愛い系だし、何だか見ていて和む。

 いまだに、千尋にびくつきながらも、「お、俺様はびびってなどいない」とか虚勢を張ってる会長より断然いいと思う。

 「さて、じゃあ、頑張ろうか、楽しい学園祭に、するために」

 俺がそう言って笑えば、千尋も春ちゃんも、隗も笑って頷いてくれた。

 さーって、俺は接客を頑張らなければ。







 *龍宮翔side



 麻理や都と一緒に学園内を回る。

 そうしていれば、スマホの、メールの受信の音が響いた。

 メールを開けば、知らない人間からのメールだった。

 普通ならそんなメールは無視するけれども、題名に惹かれて、メッセージを開く。

 題名は、『龍宮翔様へ』なんていう明らかに間違いメールでもないものだった。

 「――――」

 メールのメッセージを読めば、不思議と笑みがこぼれた。

 そして、メールを全て読み終わった俺は、麻理と都に声をかけた。

 「ちょっと用事が出来たから、二人で回っててくれねぇ?」

 ―――あの、十文座家のものからの招待状。

 いかないわけにはいかない。

 人気のない屋上へと俺は歩き出した。

 十門座家は有名だ。でも十門座家を知るものは少ない。

 ――十文座家は影の一族、と呼ばれている。

 昔から日本に存在しつづける不思議な一族。

 俺の父さんは現当主とつながりがあるらしいけど、俺は一度も十文座家当主にあった事はない。

 親しいものの前しか姿を表せない。

 普段は人ごみにまぎれ、人々の何気ない日常の中に散らばりながら、己自身を隠して生きている。

 その理由は、詳しくは知らないけれど、父さんいわく、『十文座家は何処までも特殊だから、色々面倒なんだ』といっていた。

 もしかしたらその特殊性を見る事が出来るかもしれない、そうおもうと何だか楽しみになってきた。

 変わった奴とか、面白い奴とか、そういう奴は嫌いじゃないから。

 そうして、俺は、十文座家の者がいるであろう、扉を開けた。

 そこにはフードをかぶった一つの影が存在していた。

 フードから見えるのは、青い髪。

 顔を隠すようにマスクが装備され、サングラスで目元は隠されている。

 ―――そいつは、手にパソコンを持っていた。

 「ようこそ、龍宮翔様、そしてはじめまして」

 聞こえてくる声は、明らかに機械か何かを通して声を変えているようなそんな声だった。

 ――十文座家。

 存在を隠しし、闇夜に紛れ、平穏の中に紛れる異端。

 そんな、十文座家の噂をおもって、口元が緩んだ。

 「……十文座家の、ものが俺にどんな御用だ?」

 「いえいえ、特に御用などありません。しいていうならば、龍宮翔様が偶然この場にきてくださいますとのことで、ご挨拶にまいったでもいいましょうか?

 それに、龍宮翔様は、もうすぐしましたら、龍宮家ご当主になられるお方。

 我ら、十文座家にとって、龍宮家はよき取引相手ですから」

 影に紛れる一族は、情報収集をつかさどる一族にして、色々な所と横つながりの、謎の一族。

 ある人は言った、”あれは化け物だ”と。

 またある人は言った、”あいつらだけは敵に回したくはない”と。

 「ご挨拶以外の目的も一応あるでもいいましょうか。

 そうですね、言うなれば、見定めでしょうか?

 龍宮家のご当主様におかれましては、我ら一門に認められたお方です。

 故に、我らにとって、龍宮家というのはよき取引相手なのですよ」

 十文座家と取引したいと願うものは沢山居る。

 だけれども、十文座家自体と出会う事はほとんど不可能だ。

 「―――見定めねぇ?」

 「そうであります。我ら一門、基本的にいれば認められない人間のために動く事は好みません。

 龍宮翔様にその器があるのか、と、我らに気にいられるか否の問題です」

 十文座家は、父さんを気にいっているらしい…。

 だからこそ、頼めば、取引を高確率で受けてくれる。

 気まぐれにして、随一の情報能力を持つ、その一族。

 表世界の大企業の、影のトップとしても一部では名が知られる一族。

 父さんはいっていた。

 ”十文座家っていうのは、一種の愉快犯だ”と。

 特別であるが故に望むは非凡なる生活。

 刺激を求めし、影に紛れる一族。

 「というわけで、ご挨拶に参ったわけです。

 龍宮翔様におかれましては、ご当主へと就任なさるわけなのですが、我ら一門とどのようにお付き合いしていきたいのですか?」

 ―――サングラス越しに、視線がこちらに向けられる。

 「どうって、まぁ、普通に取引相手として?

 情報ってある種の武器だし、あの十文座家と取引出来るなら、してねぇかな。

 それに、個人的に十文座家には俺は興味がある」

 言葉を発して笑みを浮かべれば、マスクの下の顔が、笑った気がした。

 あくまで気がしただけだけれども。

 「我ら一門を知りたいとお望みなのでしょうか。それは単なる好奇心なのでしょう。

 一つ我らとして御忠告したい事とと申し上げれば、強すぎる好奇心はその身を滅ぼすのでご注意ください。

 我らは人でありながら、その内は異端なのです。

 異端にして、異常。非凡なる一族。

 あ、別に誇張しているわけではありません。いうなれば、我らを見てそう言ったものたちがいるのですよ」

 自らを異端と称して、それでも声のトーンは一切変わらない。

 寧ろ、面白そうに言葉を零しているように、そう聞こえる。

 「例えばのお話をしましょう。先ほどの私のご質問ですが、もし龍宮翔様の返答が我ら一門を下に、従属的なものとして見ておりましたら、私は何をするつもりだったと思いますか?」

 十文座家を下に見て、従えようとする名家は少数ながらに居る。

 ―――そして実際に行動を起こそうとしたものは、闇に消えていく。

 「俺か、それか龍宮家を潰すか、それのどっちかじゃねぇの?」

 「いえ、ただ一度の邂逅では流石にそのような物騒な事は致しません。

 そうですね、一時的にここ最近の記憶を削除するという行為をやるべきではないかと頭の中で考えていたのですよ。私は。

 我ら一門の当主は私の好きなように龍宮翔様と接触し、好きなような対応をしていいという寛容な事をいってくださいました。

 ですから、私特有のそれをやってしまおうと思っていたのです」

 記憶を消す。

 などという事をさらっと告げたそいつは、こちらをじっと見ていた。

 サングラスとかマスクのせいで顔ははっきりと見えない。

 そいつは、言った。

 「私に少し近づいてもらえるでしょうか?」

 「…ああ」

 何が起こるかわからない。

 何を相手がする気なのかわからない。

 それでも、踏み出したのは十文座家から、個人的な信頼を得るため。

 十文座家に気にいられる、信頼を得る。

 ――そうしたほうが、後に色々便利なのだ。

 一歩一歩と、青空の下で、そのものへと近づいていく。

 そんな中で、 

 「―――っ」

 あともう少しで近づける、そんなときに、突然立ちくらみがした。

 視界があわなくなっていくような、

 足の感覚がなくなっていくような、

 そんな、立っていられないようなそんな感覚。

 それを見た、そいつは無言で俺から距離をおく。

 そいつが離れたと同時に消えていく、頭のくらくらとした感覚。

 「……何を、した?」

 徐々に、徐々に取り戻していく足の感覚を感じながら、俺はそいつを見た。

 そいつは、言う。

 「私の一つの特技とでもいいましょうか。

 このパソコンあるでしょう? そこから、人の耳では聞き取れない、一種の超音波のようなそんなものを放出しました。

 人が聞けば体調を崩す事間違いなしという、私にとっての絶対防御とでもいいましょうか?

 生憎様、私は体術におかれましては、十文座家特有の特殊性を持ち合わせておりません。

 私には、こういうものは効かないように出来ているのですが、以外に便利なのですよ?

 何故こんな話をしたと思います?

 記憶を消そうと思ったという言葉は嘘ではないのです。私はそういうものを作る事が出来ます。

 衝撃を与えて一時の記憶を焼失させ、忘れさせる事など私にはたやすく可能な事」

 淡々と告げられる言葉。

 それは、俺が聞いた、特殊性の一つなのだろう。

 ―――近づくモノを許さない、頭に直接響くそれは、誰であろうときっとそいつのそばに近寄れないだろう。

 「へぇ…? 面白い能力だな」

 「面白い、ですませますか。なかなか愉快な性格をしているようです。

 しかしながら、一つ忠告させてもらいますが。

 我ら一門は自分の思うままに行動をいたします。それを邪魔するようであれば、覚悟しておいてほしいのです。

 龍宮家のご当主となられるのでしたら、常々それを心にとどめておいてほしいのですよ」

 それは忠告。

 十文座家を敵に回すなという忠告。

 「我ら一門の異常性は様々なもの。方法は流石に言いませんが、私は人を洗脳する事も可能です。

 無論、そのような事をしようとは思いません。対して楽しくもないですし、我ら一門はただ自分の思うままに行動が出来ればそれでいいのです。表舞台に立つ事は望みません。

 ですが、龍宮翔様、あなた様が我ら一門を敵に回す事があるのならば、我ら一門はその力を持ってあなた様方を制するでしょう」

 洗脳する事も可能だなどと、さらっと口にして、そいつは淡々とそこにいる。

 友好関係を築けるかの見定め、そして十文座家による忠告――。

 恐怖心などというものはない。

 俺の心にあるのは、好奇心だけだ。

 「ふうん――十文座家にのみある特殊能力みたいなもんか?」

 知りたいって、好奇心が疼いてる。

 だから笑って問いかけた。

 「…龍宮家現当主様のご性格はお聞きしておりましたが、あなた様もまた、我ら一門を怖がる事はしないのですね」

 そんな言葉に、そりゃそうだろうと俺は思う。

 父さんも母さんもそりゃあもういい性格してる。

 俺や理人や都はあの人達をみて育ち、今みたいな性格になってるわけで、まあ兄貴は両親の性格とかあんま影響うけてないし面白い性格してないけど。

 「そうですね、あなた様ら龍宮家は我ら一門を恐れはしない。なかなか面白い方々だと私の中で認識を改めましょう」

 そう告げて、そいつは口を開く。

 「我ら一門のはじまりは遙か昔の事。我ら一門には様々な血が混じり合ったようなのです。

 そしてその遺伝子は何処までも強く根付き、今まで我ら一門には異端となりました」

 そいつは語り続ける。

 「血の繋がりが濃ければ濃いほど、ようするに本家により近ければ近いほど、我ら一門の異常性はますのです」

 淡々とそいつは語る。

 なぜわざわざ説明をしてくれるかわからないが、俺はそいつから距離を置いたまま、黙ってきく。

 「そうですね、異常性は見た目にも現れます。

 私のこの青い髪、地毛なんですよね。

 十文座家は日本に昔から根付いているのです。しかし我ら一門の遺伝子は強いのでしょうか、時たま異常な髪の色を持つ子供が生まれるのです」

 日本人には有り得ない色―――何処までも強い十文座家の遺伝子は異端を発生させる。

 「能力もまた然り。十文座の血がそれを生み出すのです。

 私のようにまだ許容範囲内ともいえる力のものもいれば、それこそ周りに化け物とののしられてしまうような力もあるのです」

 ……つかこいつさっき洗脳もできるとかいってたのに、その能力の何処が許容範囲なんだ。

 ということは、もっと規格外のなにかを持ってるものが、十文座家には、居るっていうわけか。

 「とりあえず、この程度でよろしいでしょうか? 龍宮翔様は愉快な性格をしているようなので、好奇心が満たされればと、少しお話をさせていただきましたが」

 そいつは笑っている気がした。

 口元は隠れていて見えはしないけれども

 「では、龍宮翔様、いずれの日か我ら一門があなた様を認める日がきましたら、我らのうちの一人があなた様の前に姿を現すでしょう」

 父さんはいった。

 十文座家は愉快犯だと。

 きっと目の前のこいつは俺との邂逅を楽しんでいる。

 「それでは、本日はここまでと致しましょう。

 では、さようなら」

 そういうとそいつはそのまま屋上から出て行った。

 その後ろ姿を見据え、俺は言葉をこぼす。

 「認めさせて、やろうじゃねえか」

 心の内に潜められた好奇心がどうしようもなく疼いた。

 その好奇心を埋めるためにも、俺はそれを決意した。




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