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夜の街にて暴れましょう

 「真希ー、あ、『銀猫』って呼んだ方がいい?」

 今、俺は真希と隗と麻理ちゃんと一緒に夜の街に遊びにきている。

 面白い事を探しに、きているのだ。

 もちろん、真希は今は『銀猫』の恰好。

 髪が、銀色に光っていて、月に照らされて、何だが綺麗だななんておもう。

 「ああ、そうしてくれ。

 理人は、名前知られてもいいのか?」

 「んー、そうだね、知られない方が面白そう。ね、適当に偽名でも名乗っとく? そっちのが面白そうと思わない?

 隗もさ、折角だし、素の姿で暴れちゃえば?

 軽く顔隠しちゃえば夜だし、隗が『ブレイク』の隗だなんてわかんないと思うんだよね」

 俺がそう言って提案すれば、隗も面白そうに笑った。

 「いいな。それ。

 俺も、本気で暴れるのは楽しそうだと思う」

 本当いい顔して笑ってるよ、隗は。

 面白い事大好きって感じが表情ににじみ出てて、俺まで楽しみになってくる。

 「ふふ、じゃああたしも少し軽く変装しようかな」

 何て言いながら麻理ちゃんは長い茶髪の髪を後ろで一つにくくった。

 そうして、俺たちは適当なお店に入ってフードの服とか伊達眼鏡とかかって装備する。

 うん、夜だし、暗くなってきてるし、顔わからないし、いい感じ。

 「さて、とりあえず、ブラブラするか」

 真希がそう提案して、俺たちは街を歩き回ることにした。

 「そうだ、”ヒト”。ホストクラブとかいかない?」

 しばらく街を歩いて、そう問いかけてきたのは、麻理ちゃんである。

 ちなみに俺はヒト、真希はそのまま『銀猫』、隗は”カイト”(カイじゃばれるかなと思ったらしく適当にトという字をあてたらしい)、麻理ちゃんは”マツリ”という名前に決まった。

 こうやって、遊ぶのはやっぱり楽しい。

 「ホストクラブ? 何、マツリってば、誰か知り合いいんの?」

 ちなみに麻理ちゃんは男装してる。

 元々背は女にしては高い方だし、髪を短くすれば男にも間違えられそうな顔立ちだから、結構男装は似合ってる。

 「ああ。俺の下僕の一人が、№1ホストやってんだよ」

 「下僕ねぇ…。マツリさんは何か色々凄いよな」

 そんなつぶやきを呆れたように、だけど面白そうに放ったのは、隗であった。

 「そう、あいつ妙にイケメンのくせに、俺に崇拝してやがってさ、マジいい、パシリだ」

 「それは現在進行形で?」

 「そうだぞ、『銀猫』あいつはいまだに俺と翔のいいパシリだ。

 俺が電話をかけさえすれば何が何でも飛んでくるぞ」

 何をしたんだろうね、麻理ちゃんと翔兄は…。その№1ホストとかいう男に。

 何が何でも飛んでくるような絶対服従って色々おかしいよね。

 でも、翔兄と麻理ちゃんにはそういうパシリってか、二人に絶対服従な存在数えられないぐらい居るから気にしても仕方ない。

 というか、翔兄って、妻の元下僕的存在ともいえる奴らをよく普通にパシリとして使ってるよね、って感じ。

 まぁ、そこらへんが翔兄らしいんだけどさ。

 それで、俺らはホストクラブ―――『夜』に来ている。

 この辺でも有数のホストクラブだ。

 本当に、麻理ちゃんも翔兄もそんな有数のホストクラブのNo.1をパシるなんて色々凄いよなと思う。

 ホストクラブの目の前で麻理ちゃんはスマホを取り出し、笑って、電話をかける。

 「―――よう、煌輝。

 俺だ、俺」

 そう言って、麻理ちゃんは笑う。

 「あぁ? 俺の事わかんねぇっていうのか?あんだけ可愛がってやったのに、自分の主ぐらい覚えとけよな」

 そう言って、笑う麻理ちゃんは何だか悪役っぽい笑みを浮かべている。

 「ふっ、その通りだ。お前の女王、それが俺だろ?」

 「女王って…、なんっつーか、流石マツリというべきか」

 「そうだよね。カイト。マツリちゃんは流石だよね」

 隗とそんな事をいいながら、話していたら、いきなり『夜』の扉が開いて、慌てた様子でスーツを着た男がやってきた。

 その髪の色は、金色に光っている。

 「ま、麻理様っ!! お久しぶりです」

 顔の整った、なんていうの? 美形な男がだよ? 嬉しそうな顔をして、麻理ちゃんに向かって、話しかけるって何か不思議だよね。

 ってゆーか、下僕って地位喜んでる?

 「今は、俺の事、マツリと呼べ。わかったか?」

 「はい、マツリ様ですね! ところで、今回はどんな御用ですか?」

 キラキラした目で麻理ちゃんを見つめる煌輝さん。

 そんな煌輝さんに向かって麻理ちゃんはいった。

 「何かおもしれぇことねぇか?」

 「面白い事ですか!?

 どんな事がいいですかね? マツリ様がお望みのご要望はありますか?」

 「そだな…。おもいっきり喧嘩がしたい。俺は久しぶりに暴れたい。

 今日はな、俺の親しい弟分も居るんだ」

 そこまで麻理ちゃんがいえば、煌輝さんはようやく俺たちに気付いたとばかりにこちらを見据えた。

 麻理ちゃんしか目に見えてなかったらしい。

 …素晴らしいぐらい、麻理ちゃん一筋みたいな、いや、翔兄の下僕でもあるわけで、二人しか見えてない感じなのかな? なんておもう。

 「マツリ様の、弟分ですか! 俺は煌輝っていいます。どうぞ、よろしくお願いします」

 「…煌輝さん年上ですよね? ため口でいいですよ?」

 俺がそういえば、煌輝さんは答える。

 「いえ、マツリ様の弟分に向かってそんな無礼な事できません」

 とりあえず、麻理ちゃんの調教技術は凄いなんだな、なんて心からおもってしまった。

 いや、だって普通女に向かってこれだけ、媚びる? というか、配下に喜んでつくってありえないし。

 …麻理ちゃん、何したんだろう、なんてちょっと気になった。

 「で、煌輝、暴れられそうなのはあるのか?」

 「そうですね、喧嘩がしたいというなら、その辺の不良でもぶちのめしたらどうでしょうか?

 マツリ様なら余裕だと思いますし、俺としてはマツリ様がおもいっきり喧嘩をするさまを間近で見たいですね」

 「…煌輝さんって、マツリの、喧嘩見た事あるんですか?」

 俺がそう聞けば、煌輝さんはきらきらした目でいった。

 「もちろんですよ!

 俺はですね、マツリ様の性格に心底、惚れてます。あ、恋愛感情じゃないですよ?

 ただ、あの性格に魅了された、とでもいいましょうか。

 しかしですね、性格だけではなく、俺は、マツリ様と翔様の喧嘩に、魅了されました」

 そう言って、煌輝さんは何処までもキラキラした瞳で、話し始める。

 「マツリ様と翔様がそろえば、本当に、すがすがしい暴れっぷりでして、なんていうんでしょうか? 喧嘩の仕方が綺麗なのですよね。

 マツリ様が舞うように動く蝶だとすれば、翔様は力強く拳を交える虎とでもいいましょうか」

 というか、煌輝さんってもしかして翔兄が暴走族やってた時代の知り合いなのかもしれない、と話を聞きながらおもった。

 「俺は翔様とマツリ様が出会う前からマツリ様に魅了されてました。心から。

だから、最初翔様が現れた時、俺達、『女王様の犬』は翔様の事最初は疎ましくおもっていたのです」

 どっからつっこめばいいか、わからない。

 まぁ、聞いてて面白いんだけど、とりあえず、『女王様の犬』って、自分で言うあたり色々凄すぎる。

 「でもですね、翔様は本当かっこいいんです。男の俺から見ても、ほれぼれします。

 当時翔様は、『devil eye』という暴走族のトップだったのです、そして、マツリ様が族潰しの『蝶姫』だったわけですが…」

 当時の、翔兄と麻理ちゃんを知る人か。

 なんておもっていたら、隗が驚いたように声をあげた。

 「は? 龍宮翔って、元ヤンなのか? しかも、マツリさんが『蝶姫』?」

 あー、そういえば、うん、隗は知らなかったね。そういう事情。

 結局俺、隗にも龍宮家の三男って事実隠したままだしね。

 「そうです!

 族潰しであったマツリ様は、翔様の族を潰しに…というよりからかいにいったんです」

 「からかいにって?」

 「それはな、俺は『devileye』に興味があったんだ。

 なんたってなぁ? この辺最強って言われてたんだぜ? 暴れるのにもってこいだろ?」

 要するに麻理ちゃんの好奇心によって、翔兄と麻理ちゃんは出会ったようだ。

 当時の族世界を騒がせた存在―――『devileye』の総長龍宮翔と族潰し『蝶姫』。

 「実は、その時に翔様はマツリ様に興味を持ったようで、それからちょくちょくマツリ様の周りに居たわけですが、俺たちは最初翔様を害虫のように正直おもっていました」

 …害虫って、翔兄にそんな事いったらきっとただですまないと思うんだけど。

 「まぁ、そうして俺達『女王様の犬』が翔様に喧嘩をふっかけたわけですが…、思いっきり容赦なくぶちのめされました」

 そりゃ、そうだよね。

 翔兄が自分の敵に容赦するはずがない。

 というか、翔兄って気にいらない奴に対して俺同様結構色々態度出る人だし。

 「…龍宮翔って、クールって聞いてんのに」

 隗が、ボソッと呟く。

 翔兄は、外面はクールに見えるらしい。

 正直言って、翔兄はクールというより、変わりモノの方がぴったりくる気がする。

 普通にコウモリとか、蛇とか飼ってるしね。

 「翔はな、クールつーか、面白い男だ」

 麻理ちゃんは、そう言って、隗に向かって笑った。

 そうして、次に麻理ちゃんは煌輝さんに向かって話しかける。

 「まぁ、今回は煌輝の意見を採用するか。不良共相手に久しぶりに暴れるってのは楽しそうだからな」

 それから、俺たちは『夜』を後にして、公園で話しこんでいた。

 というのも、現在、真希が不良情報をパソコンで調べている最中で、俺達三人は待っているのだ。

 俺と隗がベンチに二人で並んで、麻理ちゃんは煙草を吸いながらもたれかかっている。

 真希は俺と隗の座っているベンチの隣のベンチに腰掛けて、パソコンを膝の上に置いて手を動かしている。

 ハッキング、とか俺も一応一通りはできるけど、一応できるっていうレベル。

 暴走族とか、裏社会の人間相手に情報を売る、そんな情報屋にはやっぱり、全然届かない。

 「そういえばさ、ヒト」

 「ん?」

 隗に話しかけられて、隗の方を俺は見る。

 「この辺じゃ、『銀猫』が情報屋トップって言われてるよな。だけど、最近出てきた『クラウン』って奴も結構いい線いってるよな」

 「そうだねぇ。俺は別に暴走族関係滅茶苦茶詳しいってわけじゃないけど、『クラウン』の噂なら聞いた事ある」

 『クラウン』というのは、最近街で活躍しているフリーの情報屋である。

 いつもフードを深くかぶり、顔を隠しており、その正体は未知数。

 銀に靡く髪を持つ、そんな情報屋。

 …そんな情報屋は現れてまだまもない、らしいのだが、そこそこの腕を持っているらしいのだ。

 「てゆーかさ、カイト」

 「何だ?」

 「何て言うか、面白い事起こらないかな? わくわくするような刺激欲しいって気分何だけど」

 「それは俺も同感。

 でも、ヒトはまだいいじゃねぇか、学園で潰して遊ぶって刺激があっただろ?」

 何て言いながら隗はこちらを見てくる。

 俺も、隗も、面白い事が大好きだ。

 何も起こらない、っていうのはいい事かもしれないけど。

 それでも、何も起こらないのは退屈だと思ってしまう。

 俺と隗は、似た者同士。

 面白い事を求めて、面白い人間が好きで、そうしてきっと、いつだってそういう刺激を求めてる。

 「それなら、カイトはさっさと性格ばらして学園でも暴れちゃえば?」

 「まぁ、それもいいんだけどさ。なんつーの? ずっと性格隠して偽ってきたのにさ、ばらすのもったいねぇなぁと思って」

 「何かわかる。秘密って隠せるだけ隠したいよね。そっちの方が色々面白いしさ」

 「だよな。というか、俺の演技に気付かず、俺を口説いてくる奴とか、演技に騙される奴とか見るとなんか、滑稽で面白い」

 隗って、学園じゃ、可愛い系の渕上双子の兄って認識されているからね。

 まぁ、隗は外見は可愛いけど、中身大分腹黒い所あるのにね。

 「ヒト、カイト!

 潰してよさげな所発見した」

 俺と隗が会話を交わしていたら、調べ物が終わったらしい、真希がこちらにやってきてそう言った。

 「潰してよさそうなって?」

 「ヒトの大嫌いなレイプまがいの事してる所。ぶっ潰していいと思って。暇つぶしになりそうだし」

 「へぇ…? 強さはどのくらい?」

 「んー、このへんでもかなり雑魚? 底辺で粋がってる感じ?

 望に手を出して何人か半殺しにあったらしいよ?」

 「ふぅん。とりあえず、潰そうか」

 そう言って、俺が立ち上がれば、隣に座っていた隗も立ち上がる。

 煙草を吸っていた麻理ちゃんも、煙草の火を消して、そうして、笑った。

 「狩りを、始めようか」

 ―――そうしてその日、俺達によって、ある一つの暴走族が潰される事になる。



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