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計画する真希達と葉月の思い

 「夜の町に遊びにいこうと思うんだ。理人、一緒いかねえ?」

 そう真希に誘われたのはある日の昼間の事だった。

 あんまり好きじゃないからと俺は相変わらず食堂には行かずに自炊している。

 「いいけど、何しに?」

 「もちろん、面白い事を探しに」

 ニヤリと笑う、真希。真希は面白い事とか好きだからな、俺と同様に。

 「じゃあさ、隗とかもつれていこうよ

 あ、でも人数多すぎても動きにくいしな」

 「そうだなぁ…、せめて3,4人程度の方が動きやすいよな」

 「んー、となると……」

 面白い出来事が起こりそうな人を連れていきたいわけで…。

 多分真希は『銀猫』の姿で街に出るから、『クラッシュ』のメンバーより『ブレイク』のメンバーと一緒に居る方が自然だから、隗は連れていくとして…。

 葉月と千尋は、『クラッシュ』だし、却下。

 会長とか安住君とか渕上君は対して楽しくもなさそうだし…

 そこまで考えて、俺の頭の中にある人物が思い浮かんだ。

 「…隗と、麻理ちゃん、連れていこう」

 現役から離れてるとはいっても、麻理ちゃんって、元ヤンだしね。









 *光永愛斗side



 僕は今、生徒会室の前に居る。

 というのも、暁様に、差し入れをするためだ。

 …理人君にお菓子の作り方とか、習ったから、暁様に作ったんだ。

 コンコンッと、生徒会室をノックして中へと入る。

 「失礼します。暁様に差し入れを持ってきました」

 生徒会室に視線を向ければ中に居たのは、暁様と安住様だけだった。

 「…光永愛斗か」

 「さし…れ、な、に?」

 安住様は甘い物とか好きみたいだから、少し期待したようにこちらを見てきた。

 「えっと、プリンです。あ、暁様に食べてもらいたくて、作ったので、食べていただければ…、嬉しいです」

 それにしても、こうやって普通に生徒会室に入れるようになった事が嬉しい。

 一学期に、あの転入生の一件で、暁様が、親衛隊への誤解が違うと信じてくれた。

 だからこそ、僕は此処にいれる。

 暁様、暁様、暁様―――。

 「ふん、俺様が受け取ってやる」

 何て言いながら受け取る、暁様。

 今日もかっこいいなぁ、と僕はおもう。

 ……暁様は、理人君に夢中らしい。

 何だか、その事に胸がモヤモヤする。

 とはいっても理人君が、暁様を嫌いなのは、僕も知ってる。

 理人君は、暁様が親衛隊に優しくしなくて、色々やった事もあって、暁様を嫌ってる。

 ……僕は、暁様が好き。

 だから、暁様に幸せになってほしい。

 理人君なら暁様と付き合っても許せるって思うけど、理人君は絶対暁様と付き合ったりしないんだろう。

 「……お、たべ、い?」

 「はい、安住様もぜひ食べてください」

 そう言えば、安住様は嬉しそうに笑う。

 僕は、入口にたったまま、渡したプリンを食べようとする暁様をじっと見つめた。

 「…なかなかうまいな」

 そう言われて、嬉しくなった。

 暁様、僕は暁様が喜んでくれるなら、きっと何でもします。

 暁様に笑っていてほしいから。

 暁様に幸せであってほしいから。

 ――僕は、生徒会親衛隊副隊長兼高等部生徒会長親衛隊隊長。

 僕は、暁様が、幸せである事を、誰よりも願っているつもりだ。






*篠塚響side




 …暇だ、と俺は思う。

 一学期に理人たちと友人になった。

 だけど正直、友達ってあんまり居なかったから、どう接すればいいか戸惑う事がある。

 放課後に特に意味もなくブラブラ歩く。

 「よう、お前理人のダチだよな」

 そうすれば、話しかけられた。

 …あの、寺口葉月に。

 この周辺地域最強と名高い、その存在――――

 寺口葉月が理人の友人――というより理人に惚れてると知った時、俺は心底驚いた。

 理人は、不思議だ。

 真希はまだ、『銀猫』でありあの菅崎組の息子だから、わかるのだ。

 そういう強者に怯えないのが。

 理人がどれくらい強いのかわからないけど、あいつは誰にも怯えない。

 「なん、ですか?」

 寺口葉月を前に声が震えた。

 それを見て、寺口葉月は笑う。

 「見かけたから話しかけただけだ

 理人の友人なら仲良くしたいからな」

 そういって笑う姿は本当に理人が好きなのだと、感じさせるものだった。

 …俺が、操に感じていたものとは全然違う、そんな思い。

 恋愛って何なんだろう、とか最近アホな事ばかり考えてる気がする。

 仲良い友人関係とか、そういうのも、作るのも苦手な俺って実は結構寂しい奴なんじゃないか、とか…。

 「どうした?」

 寺口葉月がそう言って顔を覗き込んでくる。

 「いや、何でもないです。

 葉月さん、って、理人の何処が好きなんですか?」

 ふと、気になった事を聞いてみる。

 「何処がって…、全部?」

 何て言いながら、寺口葉月は笑って、こちらを真っすぐ見つめてくる。

 「まぁ、一番初めに会った時に、俺が理人に一目ぼれしたんだけどな」

 一目ぼれをした、そういって、寺口葉月は懐かしそうに目を細めて言葉を続ける。

 「まぁ、当時は理人は千尋の恋人だったわけだけど、それでも俺は理人に惚れた。

 中学時代の理人は今より背低くて、可愛かったんだぜ?」

 そう言って笑って、今も十分可愛いけどな、と寺口葉月は付け加える。

 「俺、理人に会うまで自分が男もいけるって思ってなかった。女としかヤった事なんてなかったし、男同士なんて考えもしてなかった。

 だけど、理人にあって、正直抱きてぇって思った」

 …本当にこの人素直だな、なんておもう。

 そういう台詞を普通に誰かに言うあたり。

 「はじめは一目ぼれ、だったけどな。今はもちろん、中身も好きだ。

 なんつーの、すがすがしいほどの暴れっぷりとか、あんだけ容赦ないくせにお菓子作りとか得意だったり、毒舌な所も、全部好き。

 基本的にあいつ本音ばっか口にするからなぁ、本当、そんな理人の口から、俺が好きだみたいな言葉聞けたらどんだけ、幸せだろう、なんておもう」

 好き好き好き好き――その思いが、寺口葉月から、物すごく伝わってくる。

 「まぁ、好みじゃないとかいってふられてるけど。俺、理人に出会ってから、理人以外正直どうでもよくなってる。

 まぁ、千尋もそんな感じなんだろうな、とは思う」

 他の人はどうでもいい。

 そんな強い思い、自分は持った事ない、と俺はおもう。

 ……大切な人とか、そもそも俺には居ない気がする。

 「理人が、俺を好きになってくれるのが一番うれしいけど。

 俺は、理人が満足して自分で決定した相手と付き合うのは、うん、ちょっかいは出すけど、納得できると思う」

 そんな事を言いながら、寺口葉月は続ける。

 「まぁ、そんな事になったら、すげぇ悔しいだろうけど。俺は理人が理人らしく生きてんのを見るのが一番好きだからな」

 そう言い切れる寺口葉月が、眩しく見えた。そして彼は続ける。

 「…千尋は、そんな事になったら暴れるだろうけどな」

 「千尋って、理人の元彼、ですよね?」

 あんまり話した事はないけれど、一番初めに”りーの事狙ってないよね?”って睨まれた。

 ゾクッとするような、殺気を放つ見た目に似合わない、男――。

 「そう。ついでに言うとあいつは元『クラッシュ』の幹部で近々復帰予定だからな」

 「そう、なんですか」

 それを聞いてますます、理人って凄いと思ってしまう。

 『クラッシュ』はこのへんで一番強いと言われている暴走族。

 そのトップの人間達と対等な、理人。

 友人関係も、恋愛感情も正直よくわからない。

 だけど、本当、そういう感情は羨ましく、そう思えてしまう。

 「葉月さん…」

 「何だ?」

 「俺も、いつか葉月さんにとっての理人みたいに、大事な奴、出来ますかね?」

 「そりゃ、できるだろ。

 生涯恋愛しない人間なんて居るなんて思えないしな」

 そう言って、寺口葉月は笑った。







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