あー。ため息吐きたくなってくる。
親衛隊隊長~の続きです
しばらくはエブリスタで公開していた分の移行になります。
「はぁ……」
俺、佐原理人は、大きくため息を吐いた。
今日から四宮学園は二学期に突入する。それで、始業式に俺は出てる。
それで、俺は舞台裏に居る。
「…理人、ため息吐くなよ」
「いや、だってさ、隗。何で俺が、こんな…」
「理人が直哉さんと義彦さん潰したからだろ」
そう言って面白そうに俺を見る隗は、きっとこんな俺の状況を楽しんでいる。
ちなみに言うと隗は、結局学園では猫かぶったままだ。
そんな中で、会長の声が響いた。
『―――新、副会長を発表する。会計は居ないが、とりあえず副会長だけ、補充する
新副会長―――佐原理人』
そうだ、俺のため息の原因は、これである。
俺の名前が呼ばれ、ざわめきだす、生徒達。
そりゃあ、俺は親衛隊だから、驚くよね。俺もなんでだよってなっているけれどさ。
というか、こんなことになったのも、一学期―――俺が毛玉君潰しの際に、副会長と下半身会計を学園から追い出したのが理由である。
…四人じゃ生徒会が回らない。貴様が潰したんだがら、生徒会入れと、会長に言われたのである。
もちろん、嫌だったが、俺が副会長と下半身会計を潰したせいなのはわかってたし、結局了承してしまった。
面倒な事になりそうだが、それと同時に楽しそうとも思っている。
しかしまぁ、少しため息が出るのは仕方がないと思う。
…生徒会とか、めんどくさそうだ。
しかも、全校生徒の前で就任挨拶しろって、何?
目立つのって、めんどくさそう。だけどまぁ、副会長と下半身会計追い出したの、実際俺だからな。
会長に見つめられ、俺ははぁとため息を吐いて舞台へと上がる。
そうして、マイクを手にとった。
…というか、会長が熱い目で俺を見てくるのに、ぞわっと来た。いい加減諦めてくれないかな、と思う。
舞台から、生徒達を見れば、生徒会親衛隊の子達はにこにこ笑ってたりするんだけど、それ以外の生徒達の目が怖い。
そして、麻理ちゃんは教師席で面白そうに笑いながら俺を見ている。
『不本意ながら、生徒会副会長に任命された、佐原理人です。…一応学園のために頑張って行こうと思います』
俺はそれだけ言って、マイクを会長に渡し、舞台裏へと向かっていく。
そういえば、今学期は転入生が二人も来るらしい。
前回の転入生が毛玉君だったから、面倒な人間じゃなきゃいいけど。
後で、真希に調べてもらうか…。
うちの学園は結構山奥にあるから、転入生達が到着するのは明後日らしい。それまでに情報集めておこう。
「理人もこれで、生徒会の仲間入りだな」
「そうだねぇ」
「理人さ、親衛隊の奴らに反感持たれたりしないのか?」
…そういえばそうだった。俺自身が親衛隊隊長だって事、隗にも話してなかった。
隗は俺が一介の親衛隊メンバーでしかないと思ってるんだろう。
ふふ、いいね。隠し事するのは楽しいし、ばれるまで隠しとこう、俺はそんな事を考えながら、隗に笑って返事を返す。
「大丈夫。俺親衛隊の子達と仲良いから」
皆俺が愉快犯だってことも知っているし、俺の事を慕ってくれている。俺が生徒会を好きじゃないのも知っているし、俺が生徒会入っても特に反感はないと思う。
「そもそも、隗。
俺が、俺に反旗を翻す人間に黙ってやられるままだと思ってる?」
そう言って、笑ってやれば、隗もまた面白そうに笑う。
「ありえないな。お前ならやられたりやり返す。いや、やられる前にぶっ潰すが正しいかな」
「まぁ、その通りだね。俺は、嫌いな奴に容赦する気なんてないし」
これから、色々と大変だろうけど…生徒会親衛隊の子はともかくとして、他の生徒達にとって、俺はよく見られてないはずだし。
どうやって、刻み込んであげようか。
俺を敵に回したら、どうなるかって事を。
それを思うと妙にわくわくしてきた。
*
始業式が終わって、今俺は生徒会室に居る。
此処まで来るのに、ジロジロと色んな人間に見られて、少しうんざりした。まぁ、仕方ないことだってのはわかっているけど、なんかやだよね。
「佐原理人! こっちに来い」
「いやです。用事があるなら自分で来てください。それと、転入生についてのプリント見せてくれませんか?」
「…まだ俺様も見ていないのだ。一緒に見よう。佐原理人」
「うわ、俺と一緒に何かしたいって雰囲気が気持ち悪いです」
「……貴様っ」
何だか、会長が悲しそうな顔していて、本当に気持ち悪い。
というより、会長って俺様で通ってたはずなのに、やっぱり隠れドMだと思う俺である。
「隗、会長からプリント奪って来て。俺会長に近寄りたくない」
「俺もやだ。理人に暴言吐かれて、それでも理人と喋れて嬉しそうな会長キモイ」
「だよねぇ」
隗と二人でそんな会話を交わす。やっぱり隗も気持ち悪いって思ったが。でも仕方ないよね。会長本当気持ち悪いし。
「……貴様ら、俺様に向かって!!」
「俺様って、何て言うか、本当恥ずかしくないんですか、会長」
「き、貴様っ…」
「理人の言うとおりです、会長。貴様とか俺様とか聞いててうわーなんですけど」
「……うっ」
俺と隗に、色々言われて会長は泣きそうに顔をゆがませた。
どうでもいいから、転入生のプリント渡せよ、としか言いようがないよね。
ちなみに言うと、俺と隗と渕上君と安住君はソファに居て、会長は一人、会長席と呼ばれる少し離れた椅子に座ってんだよね。
「佐原も、隗も、会長いじめちゃめーだよ?」
渕上君が困ったように笑ってそういえば、
「螢は優しいなぁ、流石俺の弟。あんな会長を庇うなんて、本当優しい」
隗は頬を緩ませて、優しい瞳を渕上君に向けている。
本当、隗って基本的に人に容赦ないくせにすげぇ、ブラコンだよね。まぁそこも面白いけど。
「かい…ちょー、プリ……ト」
安住君は椅子から立ち上がると、会長に近づき、そう言った。
安住君は会長からプリントを貰うと、俺に向かって差し出してくれた。
どうやら、転入生についてのプリントをもってきてくれたらしい。
「ありがとう、安住君」
「ん……さは…り…と、ぎ…ねこ……しんゆ、だか…ら」
相変わらず途切れ途切れの言葉に少しわからない所があるけど、俺が真希……安住君と仲良くしてる『銀猫』って情報屋と仲良いから持ってきてくれたらしい。
てか、安住君って真希に恋愛感情あんのかね?
真希って好きな奴居るけど、とちょっと気になってみた。
「……俺様は、俺様は」
何だかへこんだようにブツブツいってる会長は気持ち悪いので放置して、俺と隗、渕上君、安住君はプリントを覗いた
そこに書かれていたのは、1-S転入予定 吉井千尋、3-S転入予定 寺口葉月という、文字とその詳細だった。