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96日目 魔法演算学:重積構の演算法則について(あとキャンディ)

96日目


 葉っぱの形をした細かい魔晶が、儚く幻想的にギルの鼻息に煽られている。小瓶に集めたそれを、妖精の葉星晶と名付けた。


 ギルを起こして食堂へ。フィルラドが何か騒いでいると思ったら、今日もエッグ婦人が卵を産んだらしい。しかも複数個。


 『今度はスクランブルエッグにしようぜ!』とポポル。ヤツの腹巻に潜むポワレ、ロースト、ピカタ、ソテーも賛同の鳴き声をあげる。しかし、パレッタちゃんとミーシャちゃんが『ハゲプリンにしてほしい』、ロザリィちゃんとアルテアちゃんが『お菓子の材料にしたい』というので保冷庫行きとなった。


 なお、朝食はホビロンを選択。なんでこんなものが食堂にあったのかわからないけど、味そのものはなかなか美味。エッグ婦人に執拗にケツを突かれたことを除けば割とよかった。


 書くまでもないけど、ギルはジャガイモを『うめえうめえ!』って喰ってた。ヒナどもも一緒になって食ってた。ギル・コーンを配合した特製調整餌を食べているところを最近見ないけど、大人になったということなのだろうか。


 授業はカルブ先生の魔法演算学。『~ね!』の数は最初の数分で13回。ペースが悪いと思ったら、最近風邪気味でノドが痛いらしい。以前おばちゃんから貰ったキャンディがまだ残っていたので一つあげたら、なんか無茶苦茶感謝された。


 内容は重積構の演算法則について。やっぱり重積構にもそれなりの演算法則があって、単純だろうが複雑だろうがそれに則って演算しないと正しい答えは出ない。


 ぶっちゃけ書いててもつまらないから省く。演算法則って言ってもいつもと大して変わらないし。ノートのフェデルタカーネの落書きがあるところを見ておくこと。胴体はイマイチだけど、顔の凛々しさはうまく表現できていると自負している。


 午後のフリータイムはふと思いついたのでキャンディつくりをすることに。ロザリィちゃんを誘ったら快く参加してくれた。『むしろこっちが頼みたかったくらいです!』ってにっこり笑う姿に惚れ直す。なんでロザリィちゃんはあんなにかわいいんだろう。あ、ロザリィちゃんだからか。


 暇そうだったミーシャちゃん、アルテアちゃんも交えて四人でキャンディづくりに入る。材料だけは無駄に豊富だったのでいろんな種類のキャンディが作れた。店売りレベルのクオリティを求めなければ、初心者でも結構いろんなものを作れるんだよね。


 ロザリィちゃんががんばってキャンディを作る姿がマジプリティ。一生懸命な姿が眩しい。手とり足とりいろいろ教えてあげた。密着しすぎたらアルテアちゃんとミーシャちゃんからケツビンタを喰らった。以前より威力が上がっている。超怖い。


 でもまぁ、みんな頑張ったおかげで普通のものから魔力的要素を含んだものまでいろんなキャンディを作れた。ついつい楽しくなって歯止めが効かなかったんだよね。


 中でもすごかったのはレザン・エトワクルールを使ったキャンディだろう。もうね、マジで宝石みたいだった。いや、宝石よりすごかったかもしれない。気高きアルテアちゃんが一粒食べただけで顔がゆるゆるになっていたと言えば、味のすばらしさもわかってもらえるだろう。


 ロザリィちゃんも飛び切りの笑顔で『おいしーっ!』って言ってくれた。心が癒される。そのままぎゅってしてくれたら最高だったのに。


 ただ、いいことばかりでもなかった。カラフルなキャンディの一つ(適当にポッドに詰めていたからどの材料で作ったキャンディなのか一切不明)を口にしたミーシャちゃんが『みぎゃーっ!?』って言って倒れる。幸い意識は失わなかったものの、『体中がびりっとするぅ……!』って涙目。なんかヤバい魔法材料を使っちゃったキャンディっぽい。


 通りすがりのギルにそのポッドの中身を全部食べさせるも特に変化はなし。与えてから食べさせた相手がギルであることに気づく。


 甘い香りに誘われてやってきたジオルドに何も触れずに別のキャンディを食べさせたら、『なんか行けそうな気がする』って言って具現魔法で天使の翼を構築し、クラスルーム内を飛び出した。天使の羽ってグランウィザードレベル一歩手前の難易度なのに。


 そんなバカなと思いつつ、騒ぎを聞いて駆け付けたクーラスにまた別のキャンディを与えたら、『俺がこの! 腐った学園をラブで包んでぶっ壊す!』とか言って性格が豹変し、夥しい邪気をまき散らしだした。しかも罠魔法をハートマーク型に設置しまくる始末。


 それに触れてしまったジオルドは魔力ショックを食らって墜落した。大丈夫かと駆け寄ったら、なぜか目がハートなドクロの絵が額に浮き出ていた。本格的にワケわかんねえなこれ。


 どうやらこのキャンディ、適当なものを詰め込み過ぎたせいで食べた人にランダムで変な効果を及ぼすようになったらしい。とりあえず男子数人でクーラスを取り押さえ、ギルの腹パンによりキャンディを吐き出させ、事なきを得た。


 クーラスのヤツ、ピクピク蹲っていたけどあのまま暴走するよりかはマシだろう。あと、クーラスを倒したらジオルドの額のドクロが涙目になっていた。消えはしないのが超怖い。


 なお、キャンディはルマルマキャンディ(珍しく割とまともな名前)と名付けられ、保冷庫に保管されることになった。なんか面白そうなことに使えそう。


 そうそう、動けないミーシャちゃんは寝るまでずっとギルにおぶさっていた。あれほど安心感のある背中もそうそうないだろう。邪気にあてられたのか、ギルの首筋に小さな歯形もあった。噛み応えのありそうな首しているし、正気を失っていたのならしょうがない。


 夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。雑談中、あのキャンディをパーティーグッズとしてティキータ・ティキータの連中に送ろうかと言う話が持ち上がった。シューン先生ならノリノリで食べるに違いない。


 キャンディの色と症状のデータを集め、その相関を取れればあとでいろいろ役に立つだろう。魔法学界(と俺)のため、彼らには是非とも全部のキャンディを制覇してもらいたいものだ。


 もし『誰彼かまわず抱き付きたくなるキャンディ』があったら、ステラ先生とピアナ先生とロザリィちゃんにプレゼントしようと思う。いや、成分解析して量産手法を確立したほうがいいか。


 ギルはいつも通り大きなイビキをかいている。ルマルマキャンディをそのまま突っ込むのはあまりにも芸がないので、ちょろまかしたジオルドの天使の羽を鼻に詰めた。みすやお。

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