91日目 魔法生物学:ロックスパイダーの生態について
91日目
何もない……と思ったら、奇妙な木片が俺の杖を侵食しているんだけど。なんかピクピク脈打ってる。使い勝手はよさそうなのでジャガイモの破片を与えておいた。あと、地味に昨日は日記三か月記念だった。
いつも通りギルを叩き起こして食堂へ。昨日のことがみんなに知れ渡ったのか、食堂に入った瞬間に他クラスの連中の視線にさらされた。とりあえずウィンクしておいた。ギルはポージングしてたけど。
ルマルマのメンツは至っていつも通り。あの程度魔系じゃよくあることだ。ステラ先生の魔法のほうが何倍もすごいし、ギルの筋肉は今更。俺がちょっと珍しい魔法を使ったに過ぎない。
だけど、バルトラムイスのシャンテちゃん、ティキータ・ティキータのゼクト、そして憎きアエルノチュッチュのラフォイドルが詰め寄ってきた。授業中の彼らも外の様子を見てたんだって。みんな意外と不真面目だ。
『てめえなにやりやがった!?』ってラフォイドルが聞いてきたので、『ギルの筋肉に打ち勝つために浮気デストロイした』って正直に答えたら呪いをかけられそうになった。けど、俺の杖が一瞬筋肉質になってヤツの呪いを弾き返してくれた。
超便利だけど超怖い。確実にギル要素に寄生されている。ジャガイモを切らした時、果たして俺は無事でいられるのだろうか?
シャンテちゃんたちには適当にはぐらかす。時間もないから休日にしてくれって言ったら『絶対逃げるなよ!』との捨て台詞。『逃げないからお土産を一人一品持ってこい』っていっといた。休日はパーティーを開けそうだ。
にしても、みんなあの程度でビビるなんて器が小さい。あんなのマデラさんのところでは割と日常茶飯事なのに。オリジナルはともかく、テッドの悪戯とかで俺のレプリカ程度の惨事はしょっちゅう起こっているんだよね。
話している間に、いつものメンツが俺抜きでスペシャルホールケーキ~季節の果物を添えて~を食ってた。ポポルとジオルドなんか二人で半分以上も食ってた。でも、天使なロザリィちゃんが俺の分をきちんととっておいてくれた。
『はい、あーん♪』って朝からやってくれて鼻血が出そうだった。なんであの子はあんなにプリティなの? あと、クーラスが『バカップルめ……!』とか呟いたので『褒め言葉をありがとう』って言ったら接触感知型罠魔法陣で顔面を挟まれた。解せぬ。
『解せぬのは俺のほうだ!』と言ってケーキを口に突っ込まれたのもわけわかめ。あいつ、もっとミルクを飲んだほうがいいと思う。
授業はグレイベル先生、ピアナ先生の魔法生物学。『キミ、さすがルマルマの組長だねぇ……』ってピアナ先生に褒められた。ちょっと照れる。もっと褒めてほしい。
内容はロックスパイダーの生態について。こいつ、文字通り岩っぽい見た目をしていて、普段は足をたたんで岩に擬態し、獲物が通りかかると襲うっていう山道で会いたくない魔物ベスト17くらいに入る嫌なヤツ。
以下に要点をまとめておく。
・ロックスパイダーは山や砂漠に生息する。腹が岩のようになっており、触っても気づかないことが多い。割れ目のようになっている場所から鋭いかぎ爪を出して獲物を捕らえる。
・ロックスパイダーを見抜くのは難しい。それっぽい岩があった時はすぐさまそこを通り過ぎるか、こっぴどく蹴るほかない。
・ロックスパイダーの殻は防具に使われる。また、魔法要素として然るべき処理を用いて抽出される成分は土魔法要素を強化できるほか、幻覚の魔法薬に使われることもある。
・魔物は敵。慈悲はない。
グレイベル先生がスコップでぶっ潰して、ピアナ先生が植物魔法で相手の動きを封じていたのがすごかった。ほぼ見た目は岩だからか、虫の嫌いなロザリィちゃんもちょっとは大丈夫そうだったけど、割れ目っぽいところから足がもぞもぞと出てきた瞬間に『ひゃあぁぁぁああんっ!』って杖を落として俺に抱き付いてきた。ちょう幸せ。
ほかにもいろいろあったけど、風呂場で他クラスの連中にもみくちゃにされまくったから疲れた。みんなギルを嗾けたら逃げてったけど。あいつが全裸で迫って(普通の意味)くると、男としての本能的な恐怖感が湧き上がるんだよね。
疲れているからか、文章がちょっとおかしいかもしれない。日記の内容も後半で力尽きた感が否めない。まぁ、困るのは未来の俺だからどうでもいいか。それに復習と言うピアナ先生に会いにいく大義名分ができるし。
風呂場おいかけっこを満喫したギルはぐっすりと大きなイビキをかいている。シンプルに石鹸を鼻に詰めた。今日はよく眠れますように。




