89日目 魔法演算学:重積構について
89日目
手のひらサイズほどの鱗が天井に刺さっていた。大きさも手ごろだったので、鍋敷きとして使うことにした。
せっかく鍋敷きを手に入れたので、朝から贅沢にグラタンを食す。なんでグラタンが朝食に用意されているのか不思議だったけど、おばちゃんに聞いたら『生徒が最高の状態で授業に臨めるようにするのがアタシたちの役目だ』と凛々しく宣言された。望めば大抵のものは作ってくれるらしい。その姿がちょっとだけマデラさんと被る。
ロザリィちゃんが『ふーっ、ふーっ』って唇で熱さを確かめてからグラタンを食べるのが超かわいい。アルテアちゃんに『あーん♪』ってやっているところにも母性を感じる。アルテアちゃんは恥ずかしがるけど、いつも乗ってあげるあたり優しいと思う。
授業はカルブ先生の魔法演算学。なんだかんだで一番退屈な授業かもしれない。『~ね!』の数は最初の数分で27回。数字もどうでもよくなってきた。
内容は重積構について。今までやってきた積構は対象となる変数は一つだけど、それが二つになったってだけ。偏微解の積構バージョン。
一応真面目に書くと『多変数術式の積構の定義は変数が一つの場合と本質的には変わらない。不定積構が存在し得ないので、演算はある一つの要素に着目して行う。このように、二つ以上の要素が含まれた積構を重積構と言う』ってかんじ。
もちろん、演算に当たっていろいろとルールや処理することなんかがあるけどそんなに難しくない。積構が出来ているやつならみんな楽勝。
ギルができなかったのはともかくとして、フィルラドとパレッタちゃんが途中で演算魔法触媒を落っことして最初からやり直しになった以外は特筆することはなし。パレッタちゃん、触媒に向かって『呪ってやる!』って言ってた。
カルブの『~ね!』は125回。なんで俺こんな真面目に数えているんだろ?
午後のフリータイムはいつぞやのロザリィちゃんとの約束を果たすためにクラスルームの厨房に籠る。お腹にたまりつつも太らず、かつみんなでつまめるものってなかなか難しい注文だ。
とりあえず、少しでも条件に引っかかるものを作ろう……としたところでロザリィちゃんもやってきた。ひゃっほう。
『一緒にがんばろーっ!』っておーっ! ってやるところがマジプリティ。ロザリィちゃんはやっぱ女神だ。
で、ギル・ポテトがいっぱい余ってたので(ミーシャちゃんのリボンがあればマジでいくらでもとれる)、フライドポテトとポテトチップを一緒に作ってみた。つまめる、腹にたまるって条件はクリア。でも食いまくったら太る。
『──くんのいじわるぅーっ!』って言いながらもおいしそうにポテトチップを食べるロザリィちゃんが可愛い。よく食べる娘ってステキだよね!
もちろん、マッシュポテトを作らせていたギルは『うめえうめえ!』って言いながら全部の芋料理を平らげていた。途中で参加したエッグ婦人やフィルラド、ジオルドもうまそうにポテトチップを貪っていた。
んで、夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。雑談中はロザリィちゃんの料理の練習で作った大量のフライドポテトとポテトチップがあったからなかなか豪勢だった。アルテアちゃんもミーシャちゃんも太るのを気にしてたから、また何か考えないといけないだろう。
さて、ジャガイモを誰よりも愛するギルは今日も大きなイビキをかいている。エッグ婦人の抜け羽を鼻に詰めておいた。いい夢を見れますように。




