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88日目 触媒反応学:集中魔力による裂界魔力とサークリアの分布

88日目


 ギルの鼻息が小鳥のさえずりになっている。笑うべきか怒るべきか、もう何もわからない。


 無駄にチュンチュンいい音を出すギルを伴い食堂へ。なんとなくそんな気分だったので朝食にポテトサラダを食べる。芋の甘みとどっしり感が活きてて実に美味。ギルは蒸かしたジャガイモを『うめえうめえ!』って喰ってた。あいつ、ジャガイモ好きなくせに派生料理を食べようとしないのが謎だ。


 ギルの鼻息が小鳥のさえずりだったから、目をつぶると飼育小屋で餌やりをしている気分になれた。妙に鳥臭さも感じると思ったら、ヒナどももギルのジャガイモを元気に突いていた。


 もうすっかりギル要素が体中に染み渡ったらしい。これでちょっとやそっとのことじゃ死なないだろう。あとは健康的に、かつ筋肉質にならずに成長することを願うばかりだ。


 そうそう、このヒナたちはポポルと俺により『ロースト』、『グリル』、『ソテー』、『ピカタ』、『ポワレ』、『マルヤキ』と名付けられた。実に鳥らしいグレートな名前である。なぜかフィルラドは大反対だったけど。これ以上いい名前ってあるか?


 ちなみに、親鳥は『ごろごろエッグ婦人』って呼んでいる。おいしい卵を産むように、との願いを込めて贈らさせてもらった。パレッタちゃんに『ヴィヴィディナでも吐き気を催すセンスの悪さ』って言われたのはちょっとショック。エッグ婦人自身も気に喰わないのか、俺とポポルのケツを執拗にくちばしでつついてくる。


 授業はヨキの魔法陣演算学……じゃない、触媒反応学。『なんかまたルマルマは面白いことやったんだって~♪』とか聞いてきたから、『先生の普段の行動のほうが百倍面白いですよ』っていったら、割とガチめな連鎖反応起動型円型魔法陣によるくすぐりの呪いをかけられて死にそうになった。教師って横暴だ。


 『先生のギャグ、死にそうなほど笑えただろ?』ってにやにやしながら言われた。いつか絶対復讐してやる。あと、俺に巻き込まれたギルは鼻をピーピー鳴らしているだけでちっとも効いていなかった。


 笑顔でポージングして筋肉を見せびらかしてたんだけど、あいつの筋肉の呪耐性どうなってやがるんだ?


 内容は前回に引き続き杖の強度計算について。今日はいくらか踏み込み、実際に練習問題を解いた。以下にその問題文を示す。



『先端からαの距離に集中魔力ノルンが加わっている杖の裂界魔力図と荒れサークリア図を作成せよ。また、この杖に生ずる最大荒れサークリアと最大裂界魔力はいくらか』



 任意の点での裂界魔力の式とサークリアの式をたて、境界条件をぶち込んで分布を出せばおしまい。まだこの程度の基礎的な問題だから計算も楽だし分布図も予想がつくけど、これがリアルに近づくほどに酷いことになっていくのは想像に難くない。


 杖も触媒とはいえ、マジで強度計算とかそんなんばっかやっているのが不満と言えば不満。そのことをヨキに言ったら、『徹夜と理不尽は魔系の華やで』って超いい笑顔で言われた。


 魔系はみんなクレイジーだ。この世に神はいない。


 でも、絶望しきった俺をロザリィちゃんが『元気出して!』って頭をポンポンしてくれた。神はいないけど女神がそこにいた。ロザリィちゃんマジゴッデスキュート。もちろん、ノートを快く見せ、丁寧に途中式の解説をしてあげた。


 風呂の時、せっかくだからとグリルたちをまとめてキレイキレイしておいた。湯船には浸からせなかったものの、水浴びする姿が気持ちよさそうだった。無謀にもエッグ婦人がギルの股間をくちばしでつつこうとしたので、風呂場にいた男子全員(ティキータ・ティキータとバルトラムイスも数人)の全力をもって止めた。


 もしギルがガチギレして暴れだしたら、俺たちじゃどうがんばっても止められない。エッグ婦人には『子供をおいしく頂かれたくなかったら二度とこんなばかなマネはするな』とガチに説教しておいた。フィルラドからも本気で怒られて、エッグ婦人はちょっとシュンとしていた。


 ちゃんと『つつくならケツにしろ』って言っておいたから大丈夫だろう。冗談抜きに、これはエッグ婦人のために言っていることだ。


 さて、股間のピンチを免れたギルは大きなイビキをかいて寝ている。快眠できるなんて羨ましい限りだ。今日は水槽の底に落ちてたコメットテールの鱗を鼻に詰めた。おやすみなさい。

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