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84日目 魔法生物学:フロウウィングの生態について

84日目


 異常魔力波を放出する種芋が数個ほどギルの枕もとにあった。成功なのか失敗なのかよくわからない。


 とりあえずジャガイモ(ギル・ポテトと命名)を個人ボックスにしまって食堂へ。フィルラドのヤツはコーラスバードの親子の飯をここで調達するつもりだったらしく、ポポルに腹巻を着せてその間にヒナを入れて運んでいた。ぶすっとしながらもそれを受け入れているあたり、ポポルもいいやつだと思う。あいつの腹はぷにぷにだから、ヒナがそれを気に入ったらしいんだよね。


 朝食はミルク粥をチョイス。優しい味に胃袋も心もほっこりとする。ギルはいつも通りジャガイモ。『うめえうめえ!』ってバクバク食ってた。それと、フィルラドがヒナにミルクを与えようとしていたのでぶん殴っておいた。


 鳥にミルクは厳禁だ。あいつ、飼いたいっていう割には肝心なことをわかっていない。魔物だから普通の鳥が食えないものでも食えるだろうけど、ヒナのうちは気を付けたほうがいいに決まっている。


 天使なロザリィちゃんがおばちゃんからなんかの穀物を貰い、ヒナに『あーん♪』ってやってて超プリティだった。俺も急いでジョージとファットウォームをすりつぶしてそれに混じった。愛の共同作業って超楽しい。


 親鳥? あいつ、ギルの大皿からジャガイモ突いていたよ。鳥ってジャガイモダメな気がするけど、やっぱアレは魔物だ。


 授業はピアナ先生、グレイベル先生の魔法生物学。ポポルの腹でピーピー鳴いているヒナを見てにっこり笑うピアナ先生がマジ可愛い。あの笑顔を俺にも向けてほしい。


 内容はフロウウィングについて。何の因果かこいつも鳥。尾羽と風切羽、そして嘴がちょっと特徴的な形をしていて、空を飛べるし泳ぐことも出来るというすごいやつ。以下にそのメモをまとめておく。



・フロウウィングは基本的に空を飛ぶ。泳ぐときは餌をとるときだけであり、その場合は空中から水面に向かって浅い角度で突っ込んでいく。その際、羽を水面にビンタするように動かす。


・水中に潜ったフロウウィングはその特徴的な羽を活かして水中を飛ぶ。潜水時間は長く、嘴の先に餌(主に魚)をひっかけて空へと飛び立つ。このとき魚を落とすことがまれにあるが、落とした瞬間、腹いせに魚をビンタする。


・集団のフロウウィングは特徴的な鳴き声で空中、水中を問わず連携を取る。油断していると四方からビンタされる羽目になる。


・フロウウィングは卵を水中に産む。殻から飛び出したヒナは呼吸をするために水中をじたばたと飛び、水面に飛び立つ。これが出来ないものは溺れて死ぬ。親鳥が失望したと見せかけてビンタをし、ヒナを水面にぶっ飛ばす姿がしばしばみられる。


・フロウウィングの羽は二対ある。外側の一対は非常に軽く、空を飛ぶためのもの。内側の一対は非常に重く、水中を飛ぶためのもの。こちらは空を飛ぶ際は体にぴったりと張り付かせている。どちらも魔力的性質が高く、フロウウィングは飛行に魔力を使っていることが知られている。なお、ビンタの時にも魔力が使われており、目的に応じてビンタする羽を使い分けていることも知られている。


・風切羽や尾羽に傷、またはそれに類する切れ込みが入ると全ての飛行能力を失う。生物として致命的であるが、最後までビンタで抵抗してくる。


・まごころを込めて育てる。込めないとビンタされる。


・いろんな意味で、最後は愛情を捧げる。


・魔物は敵。慈悲はない。



 とにもかくにも、見た目の面白い鳥だった。全体的に流線型なんだけど、鳥と魚の良い所取りをしたって感じ。鳥だけに。


 襲われたときは効果範囲や連射速度のよい攻撃手段で翼にダメージを与えろってグレイベル先生が言ってた。水中に逃げ込まれるとまず追えないから、できれば空中にいる間に仕留めたほうがいいらしい。水面からくるのをカウンターしてもいいけど、大きな個体が船底をぶち破って攻撃してきた例があるから、あまりオススメできないそうだ。


 ちなみに、調教することができれば漁に使えるんだって。ちょっと難しいけど、猟にも運用できなくはないとのこと。ピアナ先生は『愛情を注いだ分だけ応えてくれるんだよ!』って言ってた。俺も先生の愛に応えたい。


 みんながフロウウィングの羽を実際に触ったりして観察したんだけど、ギルだけは触らせてもらえなかった。アイツはバカ力すぎるから、フロウウィングのほうが恐れて近づかなかったんだよね。たぶん、ギルなら握力だけで重い羽を砕けると思う。


 授業後、ポポルが涙目になりながらローブを洗っていた。腹巻に入れてたヒナが漏らしたらしい。フィルラドに擦り付けようとしたんだけど、フィルラドは先生たちにコーラスバードの飼い方を聞いていたから未遂に終わった。


 夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。風呂後、女子たちがヒナをめっちゃ可愛がってた。『かわいーっ!』って戯れるロザリィちゃんがマジキュート。あと、親鳥は俺のケツを執拗に突いてきた。『丸焼きにするぞ』って言ったらポポルの股座に逃げやがった。『ギルに抱っこさせるぞ』って言えばよかったと後悔している。


 明日から休日。どうせあの鳥たちについて動くことになるんだろう。今日も元気に大きなイビキをしているギルの鼻にちょろまかしたフロウウィングの羽を詰めた。おやすみなさい。

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