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83日目 基礎魔法学:実戦訓練に向けたガイダンス(それと鳥)

83日目


 実においしそうなクッキーのかほりが部屋を包んでいる。久しぶりにいい感じの目覚め。


 いい感じの目覚めは良かったんだけど、食堂へ行こうと部屋を出たらやたらクラスルームのほうが騒がしかった。クッキーのかほりを漂わせるギルを引き連れ、念のため杖を構えて突入したら、そこには綺麗な土下座を決めるフィルラドと、七匹のコーラスバードの親子の姿があった。


 そのうち六匹が子供。たぶんまだ生まれたてなのだろう、親鳥とフィルラドにぴったりとくっついてぴーぴー鳴いている。親のほうは丸々と太っていて実にうまそう。速く捌かせろと俺の中の天使が囁いていた。


 で、土下座するフィルラドに一匹捌かせろと声をかけたら、『後生だから勘弁してくれ!』と泣きつかれた。ガチ泣きしてて若干ビビる。起きだしてきた女子たちがアレな目で見てきたので、素早くギルに引っぺがしてもらった。


 話を聞くと、フィルラドは昨日の狩りでコーラスバードの孵化に立ち会ってしまったらしい。ちょうど親鳥が産まれかけの卵を温めているところに出くわしてしまい、狩るに狩れなかったそうな。で、産まれたばっかのヒナが最初にフィルラドを見てしまって親だと刷り込まれたっぽい。


 あの野郎、情に絆されてそのまま親鳥ごと連れ帰ったわけだ。『何でもするからこいつらをここで飼わせてくれ!』と言われたので、『ウチにはそんな余裕はない』とばっさり切り捨てる。


 餌代をフィルラド一人で賄えるはずもないし、あいつがずっと面倒を見続ける事だって現実的に厳しい。だいたい、このルマルマ寮のどこで飼うというのだろうか。言動と行動がガキのそれと全く一緒で少し呆れた。


 『さっさと元の場所へ捨ててくるか、丸焼きにしておいしく頂くか、さもなくばヴィヴィディナの捧げものにするか、好きなのを選べ』って言ったら、マジ泣きのまま悔しそうに歯を食いしばって黙ってしまった。


 何でこの年で生き物関連のしつけ(?)をする羽目になったのかイマイチわからん。このままだと埒が明かないし授業に遅れるため、次の休みまでには結論を出せときつく言い聞かせ、二日間だけの滞在を許した。


 授業は女神のステラ先生の基礎魔法学。今日もロリロリしい体と大きなお胸が眩しい。いつか思いっきりぎゅってしてもらいたい。むしろぎゅってしたい。


 内容は次回以降の実習についてのガイダンス。基本的な属性魔法の実習は一応終わったから、今度は実戦形式の訓練をやるらしい。一対一のタイマンから複数対複数の部隊戦まで、いろんなシチュエーションで経験を積んでいくとのこと。


 注意事項と対戦テーブルを話しただけだったのであっさり終わった。『ホントは座学を少しやる予定だったんだけど、みんな優秀だから今日はお休みだよ!』ってニコニコしながら宣言したステラ先生がマジキュート。なんであの人はあんなに女神なんだろう?


 時間がいい感じに余ったので、ステラ先生も交えてコーラスバードの件について話し合う。フィルラドの野郎、すっかり父性に目覚めたようで飼うことを認めてもらおうと熱弁をふるっていた。


 が、ポポルは猛烈に反対する。もし飼うことになったらヤツはコーラスバードと寝床を共にしないといけなくなるからだ。だってそこしかフィルラド個人のスペースないし。


 女子たちはおおむね賛成。彼女らは実害がないから可愛いものがみれて嬉しい程度に思っているのだろう。金銭的な面も俺がどうにかすると勝手に思っているらしい。言われてみれば、クラス資金に一番金を入れているのは俺だった。


 パレッタちゃんは消極的な反対。飼うことそのものは別にいいらしいけど、『ヴィヴィディナの虫かごに万が一があったら呪いをかける』って言ってた。


 餌代と飼うスペースさえどうにかすれば、みんな飼うことに否はないらしい。面倒を見るのに割と積極的だったのに驚く。ステラ先生とロザリィちゃんに『なんとかしてあげられないかな?』とお願いされては、俺も動かざるを得ない。


 つーか、話し合いの段階でギルやミーシャちゃんがヒナと戯れていたから、飼うことはほぼ決定しているようなものだった。クッキーの甘い香りがよかったのか、フィルラドに目もくれずにギルに群がるヒナたちがちょっと可愛かった。親鳥はやたら俺を威嚇してきて可愛くなかったけど。ヒナと戯れるロザリィちゃんがマジプリティでした。


 そのまま甘えられてもフィルラドのためにならないので、ヤツに今後の見通しと餌代、飼育スペースと言った問題の解決案を書いて提出するように言っておいた。俺もなかなか甘ちゃんになったと思う。昔の俺なら、夜中のうちに丸焼きにして、翌日に『逃げてしまった』とうそをついていたはずだ。


 なんか今日は一日中ずっとコーラスバードについて考えていた気がする。ギルの大きなイビキに混じって隣の部屋からピーチクパーチクと鳴き声がかすかに聞こえた。


 今日は日記を書くのもひどく面倒だった。文章が若干変な感じのところもあるけど、直す気もない。ロザリィちゃんと全然話せなかったのが致命的。


 餌代問題の解決策の一環として、いつぞやの特殊栄養剤とジャガイモの種芋をギルの鼻に詰めた。グッナイ。

20150619 誤字修正

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