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82日目 魔法演算学:積構可能性について

82日目


 ギルの動きがカサカサしている。もうなんて反応すればいいのかわからない。


 カサカサ動くギルを伴って食堂へ。ギルは廊下で誰かにすれ違うたびに反射的に杖を向けられていた。ヤツの神速の筋肉が生み出すカサカサはもはや例のアレのそれを凌駕しており、どこか本能的な恐怖を感じさせるものだった。筋肉が地味に黒光りしているのも悪い意味でポイント高い。


 朝食はなんか創作のスープ。野菜ベースでスッキリとした後味がいい感じ。ギルはカサカサした動きでジャガイモを『うめえうめえ!』って喰ってた。残像が見えるほどの速さとかどうなってんだこいつ。


 そんなギルをパレッタちゃんがヴィヴィディナの虫かごを持ちながらじっと見ていた。どうしたのだと聞いたら、『あの動きはいずれヴィヴィディナを助けることになる』って言ってた。悲劇が起きる前にヴィヴィディナを接着剤にした方がいいかもしれない。


 例のアレを連想したのか、ギルを見て涙目になっていたロザリィちゃんがマジキュート。一生アレから守っていたい。ロザリィちゃんの為なら、俺はあいつを一匹残らず駆逐して見せる。


 授業はカルブ先生の魔法演算学。『~ね!』の数は序盤で48回。コメントし辛い数字だ。


 内容は積構可能性について。術式ってのは積構の定義的に魔深が重要になってくるってのはどっかで書いたと思うけど、この魔深を無限大に大きくしたとき、または無限大に小さくしたとき、さらにはそれぞれの方向からゼロに近づけたときに術式がどういう反応をするかでその術式が積構できるかどうかたしかめるのだそうだ。


 もっとも、本当に魔深を無限にすることはできないけど、ここでやっぱり等価変形をすることで擬似的にそれを再現する。


 これらの操作をすることでそれが積構できるかどうかを確認し、できないのであればどこが問題でできないのかを割りだし、そのうえでそれを解消するようにうまく等価変形しなければならない。超面倒。


 詳しいことはノートの真ん中よりだいぶ後ろ、ゴブリンの落書きがあるらへんを見ておくこと。顎の角度がうまくキマった傑作だからすぐわかるはずだ。今度はオーガに挑戦してみようっと。


 カルブの『~ね!』は152回。やっぱりコメントに困る。


 午後のフリータイムはロザリィちゃんとお勉強……の前に、フィルラドが外に狩りに出かけるって言っていたのでコーラスバードの卵を頼む。いつぞやの魔力マーキングが切れないうちにやっておかないともったいない。


 『丸焼きにするから親鳥がいたら生死問わずもってきてくれ』って言ったら、フィルラドは『一番おいしいところはよこせ』って言って出かけて行った。


 俺の作るものは全部おいしい。”いちばん”おいしいところなんて存在しない。今度ぎゃふんと言わせてやろう。


 んで、ようやくロザリィちゃんとお勉強タイム。二人して肩を並べて(超至近距離!)ヨキの課題を進めていく。首をこてんって傾けるロザリィちゃんがマジプリティ。超いい匂いがした。あの女の子特有の甘いにおいってなんだろうね? ロザリィちゃんはそれの百倍いい匂いがするけど。


 男を見せるため、リードして教える。途中から割り込んできたポポルに予め予習しておいたノートを見られなければ完璧だった。


 あの野郎『お前のほうが見栄っ張りの子供じゃねーか!』って腹抱えてゲラゲラ笑いやがったので、ギルに押さえさせたうえで俺のミスリルハンドでくすぐり倒してやった。


 最後のほうはビクッ……ビクッ……! って死ぬ直前の魚みたいになってたけど、死にはしないから大丈夫だろう。『仲がいいんだねっ!』って笑いかけてきたロザリィちゃんがホント大好き。何度大好きって言っても全然足りない。


 宿題を片付けた後はロザリィちゃんと一緒にクッキーを作る。二人の愛の共同作業に心がときめきまくりんぐ。まだまだロザリィちゃんの腕は拙いものだったけれど、一緒に何かをするってのがたまらなく楽しい。一生懸命頑張るロザリィちゃんがマジ天使。


 味? 出来たてのが超あまあまでサクサクでおいしかった! ロザリィちゃんの愛情がたっぷり入ってて天にも上りそうになった! 幸せすぎるのもここまでくると逆に怖くなってくるよな!


 あと、いい匂いにつられてやってきたジオルドに泣く泣くロザリィクッキーをやった。死にかけのポポルの口にも突っ込んでおいた。ギルは焦げた失敗作をカサカサしながら皿かずら『うめえうめえ!』って喰ってた。あいつはヒトの形をしたアレだと言われても俺は信じるだろう。


 もちろん、俺だってロザリィちゃんの手作りクッキーなら魔法廃棄物と化していても腹いっぱい食べられる自信がある。


 夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。雑談中、クッキーを残しておいてくれなかったことをクーラスとアルテアちゃんに怒られた。貴重な甘いものだから食べたかったらしい。普通に買うとお小遣いちょっと厳しいし。


 ステラ先生のためにラッピングしたのがあるから、アルテアちゃんにはこっそりあげよう……やっぱ最初から作り直そう。その方がまたロザリィちゃんとイチャイチャできる。


 そういやフィルラドがまだ帰ってきていないけど、まぁなんとかなるだろ。さすがにそうそう面倒事ばかり起きるはずはない……よな?


 俺の不安をよそにギルはすやすやと大きなイビキをかいている。こいつにはもったいないくらいだが、ロザリィクッキー(と言う名の炭)を鼻に詰めた。おやす未知魔法要素。

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