80日目 基礎魔法概論:陣造の種類 【蝕造】について
80日目
窓に大量の羽虫がひっついていた。全部ヴィヴィディナの籠にぶちこんでおいた。
ギルを叩き起こしてから食堂へ。ふと思ったんだけど、なんで俺は毎日こいつを起こしてあげてるんだろうか? たまには起こされるほうになってみたい。できればロザリィちゃんの可愛い笑顔で起こしてもらいたい。んで、おはようのキスをしてもらいたい。
そんなことを考えながらハムエッグ(白身はギルに食べさせた)を食べているとバルトラムイスの組長のシャンテちゃんがやってきた。どこからか噂を聞きつけたのか、友想の守護布をゆずってほしいとのこと。
『なんならエレメンタルエッセンスを好きなだけ融通してもいいから!』って言ってきたけど、さすがにその程度じゃ譲れない。クラスの意思を確認して断ったら、今度はバルトラムイスのクラス財産全部を提示してきてビビった。
しかも、『バルトラムイスの女子とのデート権(五回)もつける!』と大きく出た。なかなか心が揺れる魅力的な提案。
でも、割とマジ顔でにこにこ(目は笑ってなかった)してるロザリィちゃんを見たらそんな気持ちは吹っ飛んだ。嫉妬してくれるロザリィちゃんがマジプリティ。
んで、何もしないのもちょっと可哀想なので材料の一部だけを教える。学生レベルじゃかなりキツイ魔物素材ばかりだったからか、シャンテちゃんたちはかなりビビってた。ちゃんと『ギルが全部殴り殺して取ったのだ』と教えたら、半裸でポーズを決めるギルから瞬時に三歩離れた。正しい判断だと思う。
『材料を教えてもらえるだけありがたい!』って喜んでくれたのは幸い。これから頑張って自分たちで作ってみるらしい。もし彼女らが真っ当な方法で再現できたとしたら、おそらくそれは魔法学界の歴史が変わる瞬間だろう。
授業はシューン先生の基礎魔法概論。ギルに命じて先生のズボンを引き摺り下ろそうとしたら、なんらかの魔道具が作用してギルに反撃の電流が走った。もちろん、ギルの筋肉にそんなものは効かなかったけど。
『こういう悪戯、先生も結構好きなんだ!』って、シューン先生は構ってもらってうれしそうだった。俺、ズボン脱がされそうになって喜ぶ人初めて見た。やっぱだいぶクレイジーな人だと思う。
内容は裂造の一種である蝕造について。裂造の定義(陣造前と後の魔力総量が等価でない)を見れば裂造であるんだけど、蝕造は細かいところがいっぱい違っているらしい。以下にその概要を示す。
『蝕造は本質的には裂造の一種である。その大きな特徴として魔法刃に砥魔石を用いられることが挙げられる。魔法刃の魔硬にあまり影響されることがないため、高魔硬の陣造も可能である。加工精度も非常に高く、加工効率も優れている。
また、一般の裂造に使用される魔法刃は陣造中に消耗するため定期的な交換、および魔力供給が必要であるが、蝕造に使用される砥魔石は後述する自生作用によりそのまま使い続けることができる。
しかし、陣造抵抗は他の陣造方法に比べて著しく高く、術者の負担は十倍近くになることもある。その際に生じてしまう高魔度の影響も受けてしまうため、何らかの対策をしないとならない』
なんかよくわからんけど、加工の仕方がちょっと違うってだけらしい。『基本的には何でも使えて便利だけど、負担がその分大きい』と覚えればいいってシューン先生が言ってた。
今日はあくまで概要だけだったけど、この蝕造の中で一番重要なのが砥魔石で、次回からはこれについて詳しくやっていくとのこと。これだけ言うのにシューン先生はどれだけ時間をかけたのだろうか。
ザントマンの砂は猛威をふるっていたよ。まともに授業を受けてた人は半分くらいだと思う。パレッタちゃんに至ってはポポルのローブをひっぺがして枕にしてたし。ヨダレあとがしっかりついてたけど、ポポルは気づいているのだろうか?
で、夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。雑談中に気づいたけど、もうハゲプリンのストックが尽きかけていた。今度ヒマな時にロザリィちゃんと一緒に作りたい。フィルラドにコーラスバードの卵を入手するように頼んでおこう。
今日は至って平常な一日だった。当然の如く、ギルも大きなイビキをかきながらスヤスヤと寝ている。ドリアードの頭花を鼻に詰めた。グッナイ。




