8日目 栽培と図書館
8日目
ギルの鼻に立派なカミシノの苗があった。俺はもうこいつを人間とは思わない。
さりげなく、今日で日記も一週間続いたことになる。案外やればできるものだとかいてて感心した。
さてさて、一週間ってことは今日は休日ってことでもある。朝起きて慎重にカミシノを抜きがてらギルを起こし、身支度を整えてから二人で食堂に向かった。いつも通りの時間に向かったのに人が半分くらいしかいなくてなかなかゆったりすごせた。おばちゃんの話によると休日はゆっくり寝て過ごす生徒が多いからこんな状態になるらしい。
朝食は平日よりもちょびっと豪華。微妙に種類が増えていて、デザートも凝ったのがあった。サントノーレなんて俺生まれてから一回も食べたことがない。アエルノチュッチュの連中への腹いせにギルにしこたま食べさせておいた。
天使のロザリィちゃんはにこにこしながらサントノーレを食べてた。癒される。あとおばちゃん、休日なのにおいしいご飯をありがとう。あの人たちいつ休んでいるんだろ?
朝食の後は栽培スペースで植えた植物の水やりをした。あと、引き抜いたカミシノの苗も植えた。自分のカミシノの種も植えた。カミシノってコケウス並みに汎用性が高くて、おまけにメジャーどころの薬ならただ混ぜるだけで効果が跳ね上がるからすっごく貴重なんだよな。その分育てるのが難しくて流通量が少ない……っていうか買うと高いんだけど。頑張って育てよう。
ナエカもコケウスもヤカツも芽が出てた。思ったより速いペース。これなら来週中にも量産体制ができるに違いない。自分で使う用の薬のほかにも学生部に売りに出せば小遣いがまるまる手に入る。マデラさんのところにいたときは稼ぎの四割を徴収されてたからうれしい。
リンゴはもうちょいかかりそう。でも元気はよさげ。栄養剤マジすげぇ。
畑いじりを終わらせた後は図書館で本を漁る。興味深い本がたくさんあって面白い。中でも『魔法の味』という普通は口にしない魔法生物や鉱物を調理して食べるエッセイが面白かった。マンドラゴラの根っこのバター炒めっておいしいのかな?
とりあえず、実験台として何も知らされずにオルゴイ・コルコイの幼体の練り団子を食べさせられた著者の奥さんに祈りを捧げる。アレはマジでやっちゃいけないだろう……。
そんな感じで午後を過ごし、夕飯を食べた。夕飯もやっぱりちょびっと豪華。肉がゴージャスになってた。ギル、ポポル、フィルラドその他数名と仲良く机を囲んで楽しいひと時を過ごす。連中はもっぱら眠りこけるか外の湖で釣りをして遊んでいたらしい。今度一緒についていこうと思う。
風呂上がりのさっぱりしたところでギルを捕まえ、クラスルームで今週の分の授業の復習をさせる。今のうちにちょこちょこやっておかないとテスト前に悲惨なことになるからだ。見てて思ってたけど、あいつ、間違いなくテスト直前にこっちを頼りにしてくる。つーか『テスト前にお前に教えてもらうから授業出る意味なくね?』って真顔で言われた。殴りたい。
一応、ギルはバカだが呑み込みは速い。そしてそれ以上に忘れるのも速い。同じことを十回繰り返してようやく脳ミソに定着したようだ。たぶん明日になったら忘れてるだろうけど。
夜更かしもしたかったけど生活習慣を乱したくないために今日はもう寝る。ギルは遊びに行ってまだ帰ってきてない。まだ静かだとはいえあと十数分もしないうちにうるさくなるのは確定なので、今日は趣向を変えてカミシノの枝で作った耳栓をすることにする。
すっげぇサイレント。熟睡できそう。ひゃっほう。