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79日目 パティシエと職人の誓い

79日目


 ギルの舌が真っ黒。すごくキモチワルイ。


 いつも通りの時間に起きて朝食へ。気分が良かったので朝っぱらからロールケーキを貪る。甘酸っぱいイチゴがゴロッと贅沢に入っていてなかなか美味。食べ応えもばっちり。ギルは当然の様にジャガイモを『うめえうめえ!』って喰ってた。


 ポポルは休日の豪華なデザートを楽しみにしているんだけど、なぜか今日はフィルラドともども食堂に姿を現さなかった。不思議なこともあるもんだ。


 モーニングを済ませた後は栽培スペースにて水やりと採取を済ませる。特記事項は特になし。あえて言うのならちょっと虫が多くなってきたかな? ってくらいだ。誤差の範囲だと思うけど。


 ここ最近ずっと忙しかったからか、手持ちのリチャードスペシャル一号が尽きかけていたので作成することにした。残念ながらリチャードは全部俺がすりつぶして肥料にしてしまっていたので、虫かごの中からベンジャミン(マジックバタフライ。おそろしいことにメスである)を取り出し擂り鉢にぶち込んだ。


 景気よくスリスリしてたら通りかかったパレッタちゃんがヴィヴィディナの虫かごをもって隣に座ってきた。『怨嗟の悲鳴がヴィヴィディナを高みに導くの♪』とのこと。相変わらずパレッタちゃんの考えていることはよくわからない。ヴィヴィディナの虫かごがカタカタしながら異臭を放つのもわけわかめ。呪いってレベルじゃねーぞこれ。


 なお、作成した接着剤はベンジャミングレート二号と名付けた。今度その性能を確かめてみようと思う。


 その後、時間もまだまだ余っていたのでいつもの薬づくりを始めた。腕が上がったのか、材料の質がよくなったのか、なかなかの出来。学生部に売り払ったらかなりの金額でウハウハ。儲けの二割をクラス資金の貯金箱にぶち込んでおいた。


 で、戻ってきたところでロザリィちゃんとアルテアちゃんに遭遇。二人して薬の材料と格闘していた。そろそろアルテアスペシャル美容液がつきてしまうから作るのだとのこと。


 大量に作ったはずなのに、もうなくなったのかと聞いてみると、『これでもちびちびケチりながらもたせたんだぞ!?』ってアルテアちゃんにびっくりされた。女子ってなかなか大変な生き物だと思う。


 ロザリィちゃんが『作って……くれないかなぁ?』って上目づかいて頼んできたのがマジプリティ。俺に仕事を頼みすぎると拗ねるから、最初は自分たちでどうにかしようって思ったんだって。健気なところがステキです。


 ギルの涙がなかったのでギル・アクアを使ったんだけど、小瓶の半分も残っていなかったはずなのに、なぜか満杯になっていた。魔法学の発展のため、あいつをガチで解剖にかけるべきかと葛藤する。


 作ったアルテアスペシャル美容液はそのままクラス財産に。あと、『ピアナ先生にプレゼントしてもいい?』ってロザリィちゃんが聞いてきたの快く承諾した。クッキー指導のお礼らしい。


 夕飯食って風呂入って雑談中、汗だくのジオルドが登場。満面の笑みで『プレゼントがある』とのこと。何かと思ったら、クラスルームの入り口でギルが見事なロッキングチェアを持っていた。まさかのジオルドの手作り。一日かけて完成させたんだって。


 『拗ねると面倒だからな。あと、こないだのカミシノ板材がちょっと残ってた』ってジオルドは言ってたけど、明らかにカミシノ以外の材料も使っている。熱い友情に感動を隠せない。


 しかも、肘掛のところに俺の名前がカッコよく彫られてた。俺専用のロッキングチェアとか嬉しすぎる。机の時も思ったけど、あいつの仕事早いし丁寧でビビる。


 あまりに座り心地が良かったので、いつぞやと逆パターンでジオルドを人気のないところに呼び出し、『ちょうど二人が仲良く座れるロッキングチェアを作ってくれ。対価は望むままに』と懇願する。ジオルドは、『……俺専属の秘密のパティシエになれ』と言ってきたので、熱い友情の握手を交わした。


 パティシエと職人の誓いがここに結ばれる。完成が超楽しみ。


 思いがけない収穫ににやにやが止まらない。今夜はいい夢が見られそう。イビキの煩いギルの鼻の穴にはベンジャミングレート二号を垂らした。おやすみずまほう。


※明日は紅蓮の炎に抱かれし愚者の嘆きを偲ぶモノの日。魔なるものに魅入られた聖遺物は来週。

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