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78日目 デート・オブ・マジ=プリティ・ロザリィちゃん!

78日目


 ギルの腹から熱いビートが迸っている。……中になにかいるのか?


 いつもよりちょっと早い時間に起きてギルを叩き起こす。いつもの倍近い時間をかけて歯を磨き、以前テッドが『モテる男はコイツで決める!』とか言って買ってくれた一張羅を着こんで身だしなみを整えた。あと、いつぞやの美容液をパパッと調整して香水代わりに軽く使っておくのも忘れない。


 で、朝食。休日だから人が少ない。あっさりめに、且つ途中で腹が鳴らないようにシーザーサラダとジャガイモをチョイス。ギルはやっぱり『うめえうめえ!』ってジャガイモを食ってたんだけど、『がんばれ、親友!』とか言ってラスト一個のジャガイモを震える手で渡してきた。ギルにとって最後のジャガイモは何か特別な意味を孕んでいるようだ。


 その後、クラスの男連中の嫉妬の眼差しを受けながら玄関ホールへ。ドキドキしながら待ってたら……超可愛いロザリィちゃんがやってきた! もうこれだけでテンションマックス!


 『ごめん、遅れちゃった?』って甘い声で囁いてきたので、『待つ時間も楽しかった』って答えた。俺の返し、超紳士的じゃね?


 そのまま二人で学外デート。オシャレ私服のロザリィちゃんがマジプリティ。外の町まで行って適当にぶらぶらとお店を冷かしたりする。ロザリィちゃんが俺の隣を歩いてくれるのがこんなにも幸せなことだなんて、想像すらできなかった。


 途中の雑貨屋でロザリィちゃんによく似合いそうな髪飾りを見つけたので、その場で買って即プレゼント。エンジェルなロザリィちゃん、その場でつけてくれた。


 恥かしそうに笑いながら『似合う?』って聞いてきたので首が千切れるほどうなずいた。ロザリィちゃんが可愛すぎて最強だった。何を言ってるかわからないだろうが、俺だってわからない。ともかくめっちゃ可愛かったの!


 そのあと喉が渇いたので屋台のお高めのトロピカルジュースを買った。もちろん俺が奢った。幸いにしてお小遣いはいっぱい稼いでいたし。


 ただ、天使なロザリィちゃんは『そんな、悪いよ』って言って可愛い鞄から財布を取り出そうとした。その時、鞄の中に杖と演算魔法触媒が入っているのがチラッと見えた。やっぱりロザリィちゃんも魔系学生だと再確認する。


 もちろん、俺も杖と演算魔法触媒は常に持ち歩いている。だってあれ魔系の必需品だし。デートのときであろうと持っていない魔系なんて一人もいない。いたとしたらそいつはモグリだ。


 お昼は町の噴水のところでロザリィちゃんの手作りサンドイッチを食べた! もうね、拙いながらも頑張ったかんじがいっぱいして心で愛が大洪水だった!


 『──くんよりは全然下手だけど、おいしい?』って不安そうに聞いてくる顔が超キュートだった。もちろん、おいしくないはずがない。『こんなおいしいサンドイッチは生まれて初めて食べた』って答えた。『よかったぁ……!』って嬉しそうにはにかむ顔に心を射抜かれる。あの子は何度俺を惚れ直させれば気が済むのだろうか。


 宿屋の息子的な観点で見ればまだまだ甘いつくりではあったし、味付けも大雑把で見た目もそれほどよくはなかったけど、サンドイッチ程度とはいえ料理のド素人だったロザリィちゃんがここまでやってくれたことに喜びを隠し切れない。ロザリィちゃんはきっといい嫁になるに違いない。もちろん旦那は俺だ。


 午後は流行の演劇を二人で見る。下調べはしていなかったけど、ちょうど恋愛ものの劇がやっていたのは運が良かった。


 結構面白い内容だったけど、愛する二人が身分の違いで引き離されるシーンで、ロザリィちゃんが涙ぐみながらいきなり手をぎゅってしてきたもんだから、劇を見るどころじゃなかった。やわらかくてあったかくてすべすべ。一生握っていたい。


 劇そのものはハッピーエンド。でも、ロマンティックな気分が収まらず、そのまま手をつないだまま歩く。もう心臓ドッキドキ。お顔は真っ赤っか。


 たぶん、俺の手は汗ばんでたと思うんだけど、ロザリィちゃんは気づいた様子もない。彼女も顔が赤かったからドキドキしてたんだと思う。


 すっごくクラクラして、すっごく体中が熱くて、すっごくロザリィちゃんが恋しくなったから、さっきの噴水のところでロザリィちゃんをくるりと回し、向かい合って肩をガッてつかんだ。


 ロザリィちゃんのおめめが真ん丸。その瞳に映る俺の背後の夕焼けがきれい。いいムード。なんかお互い黙っちゃって、そのまま抱きしめて赤い顔同士がなんとなく近づいて……


 ……ってなる直前に聞き覚えのある熱いビートが耳に届く。ほぼ反射的に杖を抜いて、いざってときのために仕込んでおいた裂造三連結立体円型魔法陣による生爪剥ぎの呪いを放つ。渾身の一撃はそいつの筋肉に弾かれ霧散した。


 杖を構えたまま慎重に近づくと、ある意味予想通り、そこにはヅラを被ったギルと各々変装したいつものメンツがいた。今までつけられていたことに気づかなかったらしい。内心で冷や汗をかく。マデラさんのところだったら死んでいた。


 ギルの野郎、『お、おほほ、私は通りすがりのフラワーピクシーですわよ?』とか言いやがった。俺の知っているフラワーピクシーはそんな筋肉質じゃないし、スカートから覗く足にスネ毛を生やしていたりしない。下手な魔法兵器より破壊力があって吐きそうになった。そもそもなぜ女装をチョイスしたのか小一時間ほど問い詰めたい。


 フィルラドはチャラいチンピラみたいだったし、ポポルはグラサンかけて大人ぶるマセガキになってた。アルテアちゃんはロングスカートで結構ちゃんとした変装だったけど、パレッタちゃんはなぜか道化師の格好。ミーシャちゃんに至ってはギルの服着て男装しているものだから、ぶかぶかすぎて目も当てられなかった。体格差は倍以上なのに、本気で行けると思ったのだろうか?


 関わり合いになりたくないという意味ではいい変装だったと思う。


 連中、ずっと尾行してて、いい雰囲気になって身を乗り出したところで俺に気づかれたらしい。ギルの腹から迸る熱いビートがなければ危なかった。やっぱ最初は知り合いの目がないところでしたいからね。


 もうデートの空気じゃなくなったので、クラスの連中へのお土産だけを買って帰った。あと、女子の目がないところでポポルとフィルラドにけっこうガチな腹痛の呪いをかけた。あいつらは明日はトイレから離れられないだろう。ギルにもかけたけど、当然の如く筋肉に跳ね返された。俺もうあいつのことが本気でわからない。


 で、夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。なんだかんだで楽しいデートだったと思う。また近いうちに誘ってみよう。イビキのうるさいギルの鼻には悪魔の粉末をリチャードスペシャル一号で固めたものをぶちこんだ。


 デートの最後の真っ赤になったマジプリティなロザリィちゃんを瞼の裏に浮かべながら眠ることにする。ロザリィちゃんの肩はめっちゃやわらかかった。明日も良い一日でありますように。

 こないだと同様、書き手の彼の実名は伏せました。もし私がこの日記(特にこのデートの記録)を見たことが彼にバレたら、どんな報復があるのか想像すらできません。

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