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72日目 怒りの十連ケツビンタ

72日目


 邪魂の悪泥が熾天使の愛炎晶になっていた。なんだかギルに負けた気がした。


 ちょっとナイーブな気分を引きずりながら朝食をとる。無性に甘いものを食べたくなったので朝っぱらからピーチパイを貪った。トロッとした桃の食感と底抜けの甘さがマジ最高。おばちゃん、腕を上げたらしい。


 ギルのヤツはいつも通り『うめえうめえ!』ってジャガイモの大皿を平らげていた。異常事態が日常になっていることにもはや誰も突っ込みを入れない。そういう俺自身、その光景を見てどこか安心している。あいつ、今日はいつもの倍近く食べてたっていうのに。


 朝食後は栽培スペースでいつものやつの水やりを済ませる。ナエカやコケウス、ヤカツと言った魔法草はまた採取できたけど、カミシノとかはまた実をつけるのにはもう少しかかりそう。ポポルとパレッタちゃんが俺のリンゴを摘み食いしていたから怒りの十連ケツビンタをくらわしておいた。


 『一つくらいいいと思った。ギルに食べられる前に食べたかった』、『ヴィヴィディナへの愛に満ちていたから食べずにいられなかった』とか、あいつら理由がぶっ飛びすぎている。


 ケツビンタ後もなかなか気分が収まらなかったので草むしりを命じた。パレッタちゃん、『ヴィヴィディナへの愛が溢れる!』とか言って嬉々として害虫を虫かごに入れてた。接着剤づくりを命じたほうがよかったかもしれない。


 妙に体に疲れが残っていたので、その後は本を片手にロッキングチェアに揺られる。昨日の作業はやっぱり結構きつかったらしい。ずっと高い魔力を体に浴び続けていたし、細かい作業ばかりだったからか、目がショボショボして本がひどく読みづらかった。これが年ってやつだろうか。


 『ヤカツのアブナイ使用法~浮気察知の発火薬~』を読んでいたところまでは覚えてるんだけど、途中で寝ちゃったっぽい。前にもあったパターン。夢の中でそれに気づき、わくわくが止まらなかった。


 で、目覚める。あったかい毛布が掛けられていた。そして、俺の目の前に巨大なイノシシの頭があった。魔法をぶっぱなさなかった俺を誰か褒めてほしい。


 ゲラゲラ笑うフィルラドとジオルドに拳骨を落としてから事の経緯を聞く。なんでも、俺が寝ている間にこないだの化けイノシシの頭のはく製ができたからってグレイベル先生がやってきたらしい。仕事の早いグレイベル先生に惚れる。


 『クラスルームのどこに飾るか、一応組長に聞くべきだと思った』らしく、フィルラドとジオルドは設置をせずにわざわざ俺の目の前に置いておいたそうだ。いつの間にか組長になっていることに驚きを隠せない。そして性格の悪い友人に心底呆れた。さらに『お前よりかはマシだ』と言われて心に深い傷。


 俺だったら夜中にこいつをギルに被らせて襲撃させるけど、寝起きよりかはマシだよな?


 なお、俺に毛布を掛けてくれたのもグレイベル先生だった。うれしいんだけど、そうじゃない。あと『おつかれさま』ってメッセージカードと共にクッキーとマジック・ドロップも置いてあった。グレイベル先生の女子力が臨界点に達している。女子力高いイケメンとか超カッコイイ。


 で、夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。ミーシャちゃんは今日もリボンを見ては顔を崩していた。ギルは夕食でもモリモリジャガイモを食っていた。ロザリィちゃんをあまり見られなかったのが超残念。思わず舌打ちしてしまった。


 なんか妙に疲れた。羽ペンの調子も悪い。インクが掠れるわ染みるわで使い物になんねえ。ビューティフルな筆跡が震えたみたいになってる。壊れたのだろうか?


 手軽なものを探すのも面倒なので、ローブに引っ付いていた化けイノシシの毛玉をギルの鼻の穴に詰めた。イビキがちょっと小さくなった気がする。おやすみなさい。


※明日は燃えるゴミを出す。魔法廃棄物もぶちこんでよし。

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