7日目 魔法生物学:コケウスの栽培について
7日目
ギルがぷるぷるうるおいお肌になっていた。もうワケわかんねえなこれ。
朝飯は基本に立ち返りオニオンスープ。昨日の反省を生かしたのか、今日は誰もギルを見ようとしない。ポポルも、フィルラドも、アルテアちゃんもミーシャちゃんもだ。ルマルマ組の全員が不自然に顔を反らすものだから奇妙な空気が食堂の一角に流れてた。
それに気づかないバカは嬉しそうに自分の耳たぶをぷるぷるしてた。なんか背筋がゾッとした。でも、我らが天使のロザリィちゃんだけは普通にしてくれてた。つーか、ギルの隣に(何故か決定事項になっている)いた俺に向かってこてんって首を傾けてくれた。
もうね、眼と眼で心が通じ合ったよ。ひらひらって手を振ったら振り返してくれた。うっひょう!
で、口パクで『あとでうるおいお肌の秘密、教えてね!』って言われた。……ナエカが育ったらテレシア魔鉱石とヴィーラアクアでも使って美容液を作ろう。
んで、都合のいいことに今日の授業は魔法生物学だった。実技担当のおっかない大男の先生と解説役のようなちみっこい助手の女の先生が担当だ。おっかない大男がグレイベル先生でちみっこいのがピアナ先生。
ピアナ先生、なんとステラ先生のいとこだそうだ。マニアックな業界でそこそこ名前が知られているらしい。あと、胸はぺったんこだ。でもスレンダーでいい感じ。
この魔法生物学は主に野外で活動するそうだ。俺の十八番のマンドラゴラをはじめとした魔法材料になりうる魔法生物の知識を実践を通して学ぶほか、薬草栽培や危険な魔物への対処、魔物の生態についてやっていくらしい。一年次は総合的に学んで二年次以降は細分化するんだって。
今日は施設の説明もかねて薬草栽培の実践だった。つーか、まさにこないだナエカとかを植えた場所に連れてこられた。もしかしてフライングしちゃったかなと思ったけど、ピアナ先生は『興味を持ってくれる子がいてうれしい』って褒めてくれた。
実際に育て方をレクチャーしてくれたのはコケウスだった。こいつ、大半の魔法薬のベースとして使えるからすごく便利。困ったらこいつ入れておけばだいたい安定してくれる。正直俺は使い慣れているから今更だったけど、必死に説明するピアナ先生が可愛かった。
具体的には『土を柔らかくして種を埋め、乾燥に気を付けながら灌水。総合的な魔法的要素を高めたいならフェアリードロップを、繁殖力を高めたいならゴブリンモールドを、ちょっぴり刺激が欲しいならピスカスライバを』って感じだ。
他の魔法植物は育て方に細かいルールがあったりあげちゃいけない材料や組み合わせがあったりするけど、コケウスに限ってはほぼ普通の植物と同じで育てやすい。あげちゃいけないものもよほどの劇物でない限りは大丈夫だし、もともとの組み合わせが悪いものを除けば何を混ぜても大丈夫だし。
グレイベル先生は顔はおっかないけど、俺たちが植えるのを男女の隔てなく優しく助けてくれた。寡黙なナイスガイだ、見た目通り力が強くて、たぶんギルでも敵わないと思う。ありゃたぶんモテる。
ちなみに、グレイベル先生は魔獣との実戦訓練でも活躍するらしい。ピアナ先生はみての通りちんまいし、適材適所ってやつなんだろう。グレイベル先生、行動で示すけど返事もろくにしないから座学とか説明とかには完全に向いていない。でもそういうところがマジかっこいい。
初回記念ってことでピアナ先生とグレイベル先生がカミシノの種をくれた。……マジで極上レアものだった。あの人たち何者なんだ……?
今も元気にイビキをかく友人はいらねーからってそのままカミシノの種をくれた。なんか嬉しいやら可哀想になるやらで複雑な気分だ。
とりあえず、ギルの分の種はヤツの鼻に突っ込んでおく、さすがカミシノ、この段階で消音効果が半端ない。今日はぐっすり眠れそうだ。おやすみ。