69日目 基礎魔法学:光魔法の効率的運用による破邪実習
69日目
耳が焼けるようにジンジンする。でも、魔法陣の欠片を枕もとに発見。火の友陣片と名付けた。
どうやらギルは昨日遅くまで動いていたらしい。ベッドに土や草が確認できた。風呂も入らずそのまま倒れこんだのだろう。朝風呂……にはちょっと遅い時間だったので蒸らしたタオルで背中をゴシゴシしてやる。かれこれ一日以上ジャガイモを食べていないせいか筋肉の張りが悪い。早く手を打たないと。
食堂にて、各自の昨日の成果を確認。パレッタちゃんからはペーニュアルケニーの艶糸を貰う。ヴィヴィディナへの捧げものとして貢がれたことがあったので、足跡をたどって巣から取ってきたらしい。
ポポルからは奴の手にすっぽり収まるくらいのスタル魔鉱石を。『これだけしか見つからなかったけど、足りるかな?』と聞かれたので十分だと答えておく。
本当は製錬しなきゃいけないからもうちょっと欲しいところだけど、そこは俺の腕の見せ所だろう。細い縫い針にしか使わないから、なんとかなるはずだ。
フィルラドとアルテアちゃんは一緒に探索に行ったらしい。プリズム・ビーの尾針もちゃんと採れたそうだ。でも、レズン・エトワクルールは四色しか見つかんなかったんだって。残り三色分もなんとか工夫を凝らさないとならない。いや、四色見つかっただけマシか。
ギルのヤツはなんと、夢想紅とエラストム魔鉱石、そしてエンシェントワームの不朽糸にゼロ・レイの月美針を入手していやがった。どれも並大抵の努力で手にはいるものではない。クラス資金を全部ぶち込んでもこれだけ集めるのは不可能だ。
『一番質がいいのを選べば間違いないと思った。どれからやればいいのかわからなかったから全部やった』ってギルは言ってた。悲しみを糧に筋肉を覚醒し、全部殴り殺してきたそうだ。リボン一つにやり過ぎではある。
こっそり懐に収めたいのを必死の思いで耐えた。あいつ、これで半年は毎日ジャガイモフィーバーできるって聞いたらどんな顔をしたんだろうか。
ミーシャちゃんにはロザリィちゃんが付いていたからこっちの話は聞こえていない。さすがに今日はパレッタちゃんの口移しに気づいて『みぎゃーっ!?』って叫んでた。ちょっとは元気が出たのだろうか。
さて、このまま作業したいところだけど平日だから普通に授業はある。我らが女神のステラ先生による基礎魔法学。ロリロリしい体と大きなお胸に心が癒された。ステラ先生マジ大好き。
内容は光魔法の効率的運用について。光魔法ってのは基本的にアンデッドとか闇のものとか、ともかく不浄なるものにすごく効果的なんだけど、逆に普通に生きているものにはそこまで大きな効果が見込めないっていう弱点がある。一応光を一点に集中させることで発火現象やそれに近いことも出来るらしいけど、だったら火の魔法を使ったほうが早い。
で、中には生あるものを身に纏った不浄なるものもいるらしい。いかにも不浄なるものらしいやり方だけど、こうなると直接光魔法を当ててもあまり効果はないし、出力を上げると纏われたものにまで被害が出てしまう(纏ったっていうより憑りつかれたって方が正しい表現だと思ったけど、厳密には違うらしい)。
じゃあどうしようかってことで考えられたのが光の立体結界魔法陣なんかを利用した破邪の方法。こいつは対象を結界魔法陣に閉じ込め、そこから直接光魔法を作用させるのではなく、魔法陣に反射させ、その魔力波を対象に共鳴させる方法なのだそうだ。
魔力波そのものは微弱だから生あるものはそれを問題にしない。でもその体内では何重にも増幅された光魔法がその性質、法則に乗っ取り不浄なるものに集中する。共鳴することでピンポイントに、やりたいところだけに威力を集中できるのだそうだ。よくできているものだと思った。
実際にピクシーに低級のゴーストを取りつかせてみて実験したところ、たしかにピクシーを傷つけずにゴーストを殺すことができた。イメージ的には風呂に入って体の芯からホカホカしてくる感じだろう。体そのものが反射器と増幅器の役割を果たしているようだ。
ピクシーが狂ったように苦しんでバタバタするのが超怖かった。祓った後は俺の顔にツバはいてきやがった。その場ですり潰して接着剤にするべきだったと今は後悔している。
ただ、弱点も一つ。微弱な魔力波と共鳴を使うという性質上、長時間拘束する手段がないと狙うのは難しい。動き回られたり別の魔力波を出すやつだったら効果は激減する。やっぱやられる前にやった方がいろんな意味で楽そうだ。
自分の体にその光の魔法陣を刻んでおけば憑りつかれることもないんじゃね? って思ってステラ先生にそのことを聞いたら、『それは人道的な観点から表向きには禁止されているの』って言われた。
なんか先生のアブナイ一面を垣間見た気がする。なんで『表向きには』ってことを知っているのだろうか。
授業後、ステラ先生に呼び出しを喰らう。デートのお誘いかと思ったら、ギルとミーシャちゃんについて聞かれた。やっぱり気づかないはずないもんね。
で、一連の流れと現在の進捗を説明し、いざってときのフォローを頼む。一応はクラスの問題で、先生の手を煩わせるのは忍びないから、あくまで俺たちが解決するってことをちゃんと表明した。
ステラ先生、『困ったときはいつでも頼ってね!』って言ってくれた。ホントマジで尊敬する。
で、夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。ジオルドが一晩で机を作ってくれたおかげで日記を書くのがすごく楽。あいつには大工の才能があるのかもしれない。
やっぱりジャガイモを食べず、日に日にやつれていくギルが見ていて痛ましい。悲しみのイビキもやっぱりうるさいので、光と風魔法要素を含んだ立体結界魔法陣を鼻の穴付近に展開した。
イベントがあると日記が長くなって困る。なんとかすっきりまとめたいもんだ。




