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63日目 魔法生物学:フェデルタカーネの生態について

63日目


 砕けた魔法陣が顕在化し、天井に無数に突き刺さっている。魔法法則ガン無視してね?


 ギルを起こし、砕けた破片を集める。魔法陣がこうして普通に拾えることに驚く。こんな事が起こるなんて見たことも聞いたこともないけど、ギルだからしょうがない。拾った魔法陣の破片は闇の友陣片と名付けた。今度性質を探ってみよう。


 朝食の飲物はハーブティーをチョイス。やっぱりクーラスがお気に入りブレンドを勧めてきたので素直にそれに従っておいた。癖がないこともないけど、後味がいい感じ。なんか気分がさっぱりする。


 ふうふうしながらハーブティーを飲むロザリィちゃんがめちゃくちゃ可愛かった。ロザリィちゃんがブレンドしたハーブティーなら、樽二つ分くらいは飲み干せる自信がある。


 授業はイケメンなグレイベル先生と天使なピアナ先生の魔法生物学。今日のテーマはフェデルタカーネ。


 こいつ、パッと見はなんか気高い感じの強そうな犬。中型犬と大型犬の間くらいの大きさで、凛々しい瞳と気品ある紫の毛皮、あと額の三日月型の痣ちっくなやつがカッコイイ。


 魔法生物としての特徴はその強い忠誠心が挙げられるんだって。番犬としてなかなかメジャーで、金持ちの家には大抵数匹のフェデルタカーネが放たれているそうだ。以下に概要を記しておく。



・フェデルタカーネは忠誠心が強く、主人のために動くときに限って通常よりも大きな身体能力を発揮する。怒ると執拗に噛みついてくる。


・どんなに離れていても確実に主人を見つけ出すほか、空中を歩くことも出来る。また、特殊な魔力マーキングを発射することも確認されている。マーキングされると執拗に噛みついてくる。


・額の三日月型の痣は主人に対する忠誠心を示す。満月に近づくほど忠誠心は強く、個体の能力も高くなる。新月まで下げてしまうと主人は噛み殺される。


・主人のいないフェデルタカーネの額には痣がない。新たな主人を迎えると三日月型の痣ができる。


・調教するには生まれたてのものを親から引き離すか、認められるだけのなにかをする。認められないと執拗に噛みついてくる。


・敵対した際は牙と爪に注意する。一度捕まえた獲物は腹をくすぐられない限り絶対に離さない。やっぱり執拗に噛みついてくる。


・あまりにも強すぎる忠誠心の為、催眠系の魔法効果にコロッと騙される。洗脳されると例え主人でも執拗に噛みついてくる。


・まごころを込めて育てる。込めないと執拗に噛みついてくる。


・色んな意味で、最後はちゃんと愛情を捧げる。


・魔物は敵。慈悲はない。



 忠誠心があるうちはとても頼りになる上に可愛らしいものだけど、忠誠心がなくなると主人を噛み殺すんだって。なかなかのクレイジー。超怖い。


 グレイベル先生とピアナ先生は三匹ほどこいつを都合したらしく、実際に触らせてもらえた。現在の主人はグレイベル先生で、先生が命令しているから他人にべたべたされても怒らないらしい。


 牙は結構鋭いし、空中歩行もなかなか厄介そう。機動力が高い分魔法が当てにくいし、前衛をすり抜ける可能性も高い。しかも割とメジャーな魔法生物ってことは戦う機会も多いってことだろう。やんなっちゃう。


 敵対したら飛び立つ前に攻撃するか、催眠効果で逆洗脳するか、襲ってきたところでカウンター気味に攻撃を入れるかしろってグレイベル先生が言ってた。こいつ、忠誠心が高すぎるから命令されないと文字通りまっすぐ飛んできちゃうんだって。


 ピアナ先生は主人への忠誠心を下げて弱体化させたほうがいいって言ってたけど、実際の戦闘になったらそんな余裕はないと思う。


 そうそう、なぜかフィルラドがやたらと懐かれてた。あいつ、もともと動物に懐かれる天性の才能があるらしい。顔面を舐めつくされてふやけまくってた。


 フィルラドばっかりフェデルタカーネが懐くものだから、ロザリィちゃんがちっとも撫でられなくて『ぷーっ!』て頬を膨らませてた。そんなあなたが大好きです。


 ギルのヤツは頬ずりしようとして思いっきり噛まれていた。でも、ヤツの筋肉はフェデルタカーネの牙をまるで通さなかった。逆にフェデルタカーネのほうが涙目になってた。


 よしよしってフェデルタカーネを撫でるピアナ先生がマジ天使。俺も先生をよしよししたい。


 んで、夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。ふと思ったけど、魔法生物学って相手の生態を知ると同時に殺し方を覚える授業だよね。今まで植物だったから気にならなかったけど。


 魔法使いなんて商売をやる以上、そういうことをしなきゃいけないってのはわかるんだけど、優しい顔でフェデルタカーネを撫でているピアナ先生を思い出すとなんか申し訳なくなってくる。


 でも害獣駆除も魔法使いの仕事だし、もっと上の魔法生物学はむしろ殺すのを中心とした内容になってくるらしい。


 もうちょっとアレな魔法生物なら躊躇いなくぶっ殺せるんだけど、俺もまだまだ甘ちゃんだ。マデラさんなら目玉焼きを焼くような気軽さでぶっ殺すっていうのに。


 なんかセンチな気分になったので、バンシーの涙を雷髭魚のぬめり成分で固めたものをギルの鼻に詰めた。おやすみなさい。

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