61日目 魔法演算学:積構について
61日目
ギルが猫ひげ。どう反応すればいいのかわからない。
朝食は焼き魚をチョイス。卸されたばかりの新鮮なものらしく、ほろ苦い内臓がちょうデリシャス。この焼き加減を極めるのはなかなか難しいと思う。頭からバリバリ食べることができた。
猫ひげなギルは魚に反応せず、やっぱり『うめえうめえ!』ってジャガイモ食ってた。横からポポルとミーシャちゃんが猫ひげを引っ張って遊んでいたので、俺もひっぱったらブチッて切れた。
で、なぜか授業前に猫ひげの供養をすることになった。シクシクと泣くギルが本気でわからない。埋めに行くのも面倒なのでヴィヴィディナの籠にぶち込み、『猫ひげの意思はヴィヴィディナの中で生きていくんだ』と適当にごまかした。もちろん猫ひげはすぐに食われた。
ギルのヤツ、超笑顔になって虫かごにキスしまくったからパレッタちゃんに呪いをかけられてた。でも、ヤツの筋肉は呪いをいとも簡単に弾きまくって結局意味がなかった。そしたら『ヴィヴィディナに変なもの食べさせるな!』って俺が怒られた。解せぬ。
結局ヴィヴィディナってあの籠のどの虫なんだろ? まだ半分くらいしか減ってないから特定できないんだよね。速いところすりつぶして接着剤にしたいのに。
今日はカルブの魔法演算学。『~ね!』の数は最初の数分で60回を超える。今日はテンション高いらしい。
内容は積構について。今までやってきた微解ってのは術式をごくごく小さな要素にバラしてその性質を解析する作業だけど、こいつは逆にその小さな要素をどんどん積み上げて全体の性質を解析する作業。微解ってのが術式の細かい性質を知るためのものだとすれば、積構ってのは残された魔法残滓(細かい性質)から元の術式を知るためのものだ。
積構の際はその要素を魔深のどこからどこまでで再現するのかってのを決める必要があって微解に比べて計算がだいぶ面倒になっていた。壊すのは楽だけど復元するのは難しいってことなんだと思う。
授業はそんなかんじで定義と軽く練習問題をやっておしまい。『~ね!』の数は248回。良い記録。
頭にたくさんハテナマークを浮かべていたロザリィちゃんがベリーキュート。マンツーマンで愛の特別講義を開きたい。むしろ恋の家庭教師になってほしい。
午後のフリータイムはクラスルームで読書。なんだかんだでドタバタしてて読めなかった『びっくりドッキリ調合大百科~コケウスの逆襲・発火してでも奪い取る~』を読む。ステラ先生の本だけあってなかなか興味深い内容がぎっしり。いい意味でタイトル詐欺で思わず夢中になってしまった。
粉爆花と呼ばれるファイアハッピーな魔法植物や身近な素材で作るびっくり薬──髪色変化や筋肉増強剤(見た目のみ。効果は数時間)なんかが特に面白かった。魔法薬の可能性に心が躍る。今度簡単そうなのを作ってみよう。
あと、本自体からステラ先生の匂いがしてすっごく幸せな気分になれた。ずっと大事にしていたんだろうってのが伝わってくる。しかも、ページの間にステラ先生の髪の毛を発見。ひゃっほぉぉぉう!
家宝にするかお守りにするかでめちゃくちゃ心が揺れる。なんかすっげぇ背徳的でドキドキしてきた。とりあえず小瓶に入れて個人ボックスの奥の方に隠してく。どうやって使おうか今から超悩む。
相変わらずギルのイビキはうるさい。こいつも読書でもすれば少しは落ち着くのだろうか。今日は無難にカミシノの葉を丸めて詰めた。みすやお。




