表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/368

59日目 基礎魔法概論:陣造の種類 【裂造】について

59日目


 ギルの体からそよ風。あいつどうなってんだ?


 涼やかな風を頬に感じ、意外と爽やかな目覚め。これが奴の鼻息であると気付かなければどれだけ幸せだったことだろうか。


 朝食はサラダをチョイス。なんか自信作のドレッシングができたっておばちゃんが一押ししてたんだよね。味は酸味が強めで食欲をそそるかんじではあったけど、イマイチ好みのタイプじゃなかった。せっかくの新鮮野菜の繊細さが上書きされちゃってたのがもったいない。


 『こういうドレッシングはしなびたサラダのほうがよく合う』って言ったら、『……そういや完成したのは夜中だった』っておばちゃんが言ってた。みんなにおいしくサラダを食べてもらうために一日中研究していたらしい。おばちゃんも一度マデラさんのところで修行すればいいと思う。


 どこからかそよ風を生み出すギルは『うめえうめえ!』ってジャガイモを平らげていた。ポポルと一緒に風上にドレッシングを垂らしてジャガイモにあてるゲームをした。ギルのヤツ、ドレッシングがかかっていても相変わらず『うめえうめえ!』って喰ってた。


 フィルラドの飲んでたミルクに波紋がずっと浮かんでた。ギルのそよ風マジすげぇ。


 あと、そよ風でめくれたローブを慌ててバッ! って押さえるロザリィちゃんがめっっっちゃ可愛かった! あの可愛い仕草は反則過ぎるって! きょろきょろ見渡したあと目が合ってふしゅぅぅ……ってなるのも鼻血でそうになった! 


 俺、今までで一番ギルに感謝したかもしれない。今日一日すっげぇハッピーだったよ。


 でも、その直後にアルテアちゃんとミーシャちゃんにケツビンタされたのは納得できない。パレッタちゃんに『女難の呪いをかける』って脅されたのもわけわかめ。別に見ちゃったわけじゃないのに。見てたら今頃幸せすぎてあの世にいるってーの。


 あの恥じらいと清いドキドキがいいのに、女の子ってその辺がわかっていないと思う。フィルラドとポポルにそのことを話したら、二人とも黙ったまま、超いい笑顔でサムズアップしてくれた。聞き耳立ててたジオルドもこっそりサムズアップしてた。ギルは笑顔で筋肉を見せつけていた。


 授業はシューン先生の基礎魔法概論。今日から新しいところに入る。そしてやっぱりローブはズボンにイン。本気を出すときしか解放しないらしい。


 内容は流造、撃造に続く第三の陣造方法である【裂造】について。流造は魔力を流し、撃造は魔力を無理やり変形させたのに対し、裂造は魔力の塊を文字通り裂くことで魔法陣を形成する手法とのこと。


 やっぱりいつも通り、以下に概要を示す。



『裂造とはなんらかの魔力的手段(多くは概念的な魔法刃)を用いて魔塵を出しながら魔力の塊を所定の形状の魔法陣を形成する陣造方法の一つである。裂造には魔法刃の種類や加工方法の分類がかなり多く、様々なオーダーに対応することができるため、特に魔道具加工の分野においての重要性が高い。


 他の陣造に比べて精度が高く、柔軟性を持った陣造を行うことができる。超複雑・精密形状のベースパターンや微小要素を多分に含んだファンクションパターンも比較的容易に陣造できるのが大きな強みである。


 反面、陣造に関して莫大なノウハウが必要であり、充分な知識がないとその強みを生かしきることができない。また、撃造は魔力を等価変形させていたのに対し、こちらは魔力そのものを裂いて陣形を形成するためいくらかのロスがある。その際に生じる魔塵の処理も考慮せねばならない』



 シューン先生曰く、彫刻を掘るのと似たようなイメージらしい。根気はいるが時間をかけて極めれば、粘土細工の撃造や垂らし絵の流造に比べてはるかに精密で美しい魔法陣を作ることができるとのこと。


 なんか珍しく超自慢げだと思ったら、シューン先生の使っている魔道具は全部裂造の魔法陣が刻まれているんだって。


 話を自分なりにまとめると、これは完璧に研究、制作用の陣造方法なんだろう。陣造時間も他に比べて長いらしいし、実践ではあまり役に立ちそうにない。その分出来る範囲や規模は大きいのだろうけど。


 あと、コストも高いっぽい。でもギルなら指で直接魔力塊をほじれると思う。こないだ地面に逃げたファットウォームを深追いして一家もろともほじくりだしていたし。


 交尾直前に引っ張り出されたあまりにも哀れなファットウォームの震えを、俺は生涯忘れることはないだろう。


 眠気に負けず一生懸命メモを取るロザリィちゃんが超キュートで可愛かったです。あの子見てると眠気なんて吹き飛ぶよね、うん。


 で、夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。書きたいことがいっぱいあるのに時間的にもページ的にも書けないのが悩みどころ。ロザリィちゃんのプリティさとか、この日記一冊丸々使っても表現しきれないと思う。


 なんかいい気分なので、イビキのうるさいギルの鼻に奮発してアンジェロディスペットを詰め込んでおいた。夢の中でロザリィちゃんとステラ先生とピアナ先生に会えますように。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ