54日目 魔法演算学:テスト返却(カウント忘れてた)
54日目
ベッドの周りに花が溢れていた。このくらいなら驚かなくなっている自分が怖い。
食後のプリン(ハゲプリンじゃない。最近おばちゃんが対抗心を燃やしてプリン作りを頑張っている)を楽しんでいる途中、ロザリィちゃんを見かける。ぶんぶんって手を振ってくるロザリィちゃんがマジプリティ。
せっかくなのであまりまくっているスプリングフラワーを使った簡単な花飾りを渡した。『かわいーっ!』ってその場で付けてくれたロザリィちゃんに心がときめく。
でもアルテアちゃんたちからは冷たい目線。どうしたのかと聞いたら、『ギルの頭に刺さっている花飾りはなんなんだ』と聞かれた。
何なんだって言われても、朝からせっせと作ってギルの頭に飾っただけだ。ギルの暑苦しい筋肉もこれですこしは爽やかになったというものだろう。二十個近く括り付けたからきっと効果も高いに違いない。
夢のペアルックにしようと俺の頭にも飾ったら、通りがかったティキータ・ティキータのゼクトが吹き出してくわえていたクロワッサンを落とした。拾おうと屈んだすきにヤツの頭にも飾っておいた。
で、晴れてロザリィちゃんと花飾りペアルックが出来ると思ったら、アルテアちゃんもミーシャちゃんもパレッタちゃんもちゃっかり装備して防いでしまった。よく考えたらギルに使っている段階でペアルックじゃない。
なんだか悲しくなったので、花飾りを作りまくって無差別に男子の頭につけてやった。ポポルもジオルドもフィルラドも、しくしくと泣いて喜んでくれた。クーラスに至っては血涙を流していた。そこまで喜んでもらえると作り手として気分がよくなる。
今日はカルブの魔法演算学のテスト返却。クラスの大半が花飾りをつけていたのにカルブはスルーしやがった。あいつのスルー力マジぱねぇ。
肝心の結果は計算ミスが三ヵ所。微解の公式で符号をつけ間違えたのと、単純な計算ミス。ギリギリ九割超えたくらい。
今回はフィルラドも参戦してなかなか盛り上がると思ったけど、ヤツは俺にもクーラスにも負けていた。自信満々なくせにあっけなかった。『行けると思ったんだ……』とか言ってたけど、思うだけで何とかなるなら世の中そんなに甘くない。
最終的な得点はクーラスのほうが上だった。クーラス、俺、フィルラドでトップスリー。
クーラスはミス一個。どうしても解けない問題があったとのこと、先生曰く、その問題はクラスで一人しか解けた人いなかったんだって。クーラスは解説中もうんうん唸って解こうとしてた。
もちろん俺が解いた人だ。俺がヘマしたのなんてすっげぇ単純なうっかりミスだけだったし、実力的にはあきらかに俺の勝ちだ。
でも潔いから甘んじて運命を受け入れる。とりあえず保留とのこと。フィルラドには明日の朝にギルにジャガイモの『あーん♪』をするように命じた。ちゃんと新妻らしくやれといったら、がっくりとうなだれていた。
午後のフリータイムは適当にゆっくりして過ごす。ふと思い立ったので、ジオルド、ギルと一緒に化けイノシシのお頭を持ってグレイベル先生の下へ。
グレイベル先生、いつもの部屋にいないと思ったら外のハンモックで本を読むという優雅な昼下がりを過ごしていた。ギル以上のマッチョな見た目から想像できないくらいエレガント。グレイベル先生マジイケメン。そしてやっぱり俺たちの花飾りに動じない。
んで、化けイノシシの頭をはく製にしたいとお願いした。グレイベル先生、業務時間外なのに嫌な顔一つせずに引き受けてくれた。
おまけに貫通痕のごまかし方を教えてもらった。しかも、あとは普通のはく製と一緒だからって細かい諸々の処理はやってやると言ってくれた。グレイベル先生がイケメン過ぎて惚れそう。
しかも、『きれいだな……』なんていいながら、俺の作った花飾りをその場でつけてくれた。グレイベル先生ちょっとおちゃめなのを初めて知る。ジオルドがなんか嬉しいような悲しいような複雑な表情をしていた。ピアナ先生にも渡してくれますかと聞いたら、『必ず渡す』と約束してくれた。俺グレイベル先生になら抱かれてもいい。
なんか微妙に日記が長くなった。あいかわらずうるさいイビキをかくギルの鼻に、今日は拾った小石を詰め込んだ。ちょっと反応が楽しみだ。




