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51日目 打ち上げ超楽しい

51日目


 夜明け前の早朝とも呼べない時間、うつらうつらしていたギルがいきなり目をカッと開いて警戒態勢に入った。何事かと思って杖を構えていると、低い地鳴りのような音が断続的に聞こえるのが分かった。


 さすがにヤバそげな雰囲気だったのでクラスの連中を慌てて叩き起こし、数名の女子をステラ先生の元へ向かわせる。男子全員が杖を持って玄関付近に陣取り、女子は窓辺で遠距離攻撃の態勢に。


 ギルの筋肉が瞬時に警戒態勢を取ってしまうレベルの脅威に緊張感が高まり、ガラにもなく冷や汗をかいたものの、朝霧(ぶっちゃけ暗くて霧か闇かよくわかんなかった)から現れたのは大きな大きな化けイノシシを二匹も引きずってきた気高きアルテアちゃんとクーラスたちだった。


 なんでもアルテアちゃんたちは近くの山で獲物を探していたらしいんだけど、帰り際になってこのバカでかい大きさの化けイノシシのつがいに出会ってしまったらしい。


 獲物を捨てて逃げ去ることも出来なくはなかったらしいけど、それはアルテアちゃんたちのプライドが許さなかったし、なにより道をその巨体でしっかりふさがれてしまったため、安全のためにも倒してしまおうということになったそうだ。


 ただ、戦闘終了後にイノシシ二匹を引っ張ってくるのが大変でこんなに遅くなっちゃったんだって。そもそも倒したのも夜遅くて、休憩を取りながらなんとかかんとかみんなで引っ張ってきたようだ。


 『これだけの成果があれば、みんな喜ぶと思ってな!』とアルテアちゃんたちは笑った。確かにクラス全員がいつもの倍食べたとしてもこのイノシシは食べきれないと思う。


 でも腹が立ったので、軽くチョップをしておいた。気持ちは嬉しいけど、無駄に心配させるのはアカン。せめて連絡係を一人よこすべきだった。そうすれば手伝いにいけたし、あんな不安になることもなかったのに。


 アルテアちゃんが『心配かけてごめんなさい』って言ってくれたのでねぎらいの意味を込めて肩をポンポンしておいた。微妙に涙ぐみながら笑ってたっぽいけどあれなんだったんだろう?


 男子にはもちろん拳骨をお見舞いした。ついでに待つ方の事も考えろ、万が一があったらどうするんだとしっかり説教しておいた。拳骨だけでわかりそうになかったので、マデラさん仕込みのケツビンタも喰らわせておいた。


 クーラスに『お前は優しいんだかふざけているんだか本気でわからない』と言われた。無駄口を叩く余裕があったので、ジオルド、ポポルに命じて風呂場の中にぶち込んどいた。ついでに昼頃まで自室に監禁するようにも言っておいた。俺ってば超悪い人。


 アルテアちゃんもパレッタちゃんたちに風呂場に連行された。一晩中頑張ってくれた彼女らには感謝してもしきれない。『おとなしく休まないと……の呪いをかける』ってパレッタちゃんがアルテアちゃんに呟いてたけど、なんて言ってたのかは聞こえなかった。気高きアルテアちゃんが顔面真っ青になるくらいだから相当ヤバい呪いだと思う。


 んで、朝飯のサンドイッチをつまみつつ化けイノシシの解体作業に入る。ルマルマ寮の目の前とはいえ、さすがに目立ち過ぎたのかグレイベル先生がやってきてくれたので、先生と一緒にやることに。


 グレイベル先生、なんか特殊な魔法処理ですぐに肉を扱える状態にしてくれた。皮のはぎ方や内臓の摘出も鮮やか。牙や骨の処理もばっちり。さすがは魔法生物学の先生。化けイノシシも魔法生物のはしくれだから基本さえ押さえておけばどうとでもなるんだって。グレイベル先生マジイケメン。


 馬鹿力のギルもいたから作業が捗ること捗ること。肉以外の毛皮や牙は全部クラス財産に回すことに。お頭をはく製にしてクラスルームに飾ろうと思ったけど、脳天に弓矢の貫通痕があったのがちょっと残念。今度グレイベル先生にごまかしかたを聞いておこう。


 お礼ってことで再度グレイベル先生を打ち上げに誘ったけど、やっぱりやんわりと断られてしまった。『クラスの楽しみに先生が参加したら気を抜けないだろ?』だって。無粋なまねはしたくないらしい。


 このままでは俺の気が収まらなかったので、ブロック肉を無理やり押し付けて、次回の打ち上げには絶対参加してもらうことをどうにかこうにか取り付けた。俺の根気の勝利だ。グレイベル先生、イケメンすぎるのもちょっと問題だと思う。


 でもって、夕方近くまでひたすら調理。解体したブロック肉をさらに使えるように用途ごとにバラす。ギルとジオルドとパレッタちゃんとポポルの熱い希望で丸焼きを急遽作ることになったため、その準備にもかなり時間をかけた。


 下準備していた料理がなかったらなかなかきつかったけど、ロザリィちゃんが配膳とか簡単なことを手伝ってくれたおかげでなんとかなった。このまま嫁にしたいくらいプリティだった。


 狩猟組も起きてきたところで『第一回ルマルマお疲れ様パーティー』が開かれる。思わぬ獲物のおかげで食卓が超豪華。サラダ、スープ、サンドイッチ、串焼き、揚げ物、そして肉。ただただ肉。ひたすら肉。マジで肉。


 俺が作っただけあって料理はいい感じ。コストを押さえた割には量も質も悪くない。さすがにマデラさんの料理にはまだ敵わないけど、串焼きの焦げ目のところだけは勝負できると自負している。


 ミーシャちゃんが魚にまるまるかじりついていた。

 ジオルドは骨付き肉をワイルドに貪っていた。

 パレッタちゃんは掟破りの開幕ハゲプリン。

 クーラスはサラダドレッシングを混合して悪性魔素雰囲気を形成。

 ポポルが禁断の両手サンドイッチで案の定むせていた。

 アルテアちゃんカルボナーラを貪り鼻の頭にホワイトソース思いっきりつけてた。

 んで、それを見たフィルラドが口と鼻からミネストローネ吹いてた。ばっちぃ。


 ギル? 俺特製のふかし芋を『うめえうめえうめえ!』ってバクバク食ってたよ。『親友の手料理マジうめえ! 一生喰いてえ』って言われたときはちょっと引いた。


 あの野郎、せっかく気合入れて作ったフライドポテトはいつものじゃがいも大皿三枚分くらいしか食べなかった。俺のフライドポテト、宿の客にはめっちゃ好評なのに。いつか泣いて欲しがるくらいにポテト漬けにしてやる。


 歌ったり踊ったりする女子が出てきたり、脱ぎだす男子が出てきたりで盛り上がりがすごかった。みんなテスト明けで頭のねじが緩んでいたんだと思う。


 丸焼きなんてミーシャちゃんとギルが一緒になってかじりついてた。どっちのほうが多く食べるかみんなで賭けをしたけど、当然のことながらギルのほうが早い。


 あの野郎、肉とミーシャちゃんの区別がついてなくてミーシャちゃんの唇まで(文字通りの意味で)貪りそうになったけど、『みぎゃーっ!?』って真っ赤になったミーシャちゃんがとっさにギルの鼻に噛みついたおかげで事なきを得た。


 涙目&真っ赤になりながら延々とギルの親指をカジガジするミーシャちゃんがちょっとこわかった。ギルのヤツは、『うめえうめえ!』って言いながら指から垂れた血を飲んで、直後にミーシャちゃんにケツビンタされてた。


 丸焼き、俺も食べてみたけどなかなかいい感じ。あの大きさの割には火の通りもよく、グレイベル先生の腕が良かったのか臭みも皆無。イノシシはちょっと硬めなことも多いけど、こいつはそんな硬くなくて食べやすい。肉汁が半端なかった。


 まさに肉らしい肉で非常にデリシャス。変に味付けせず、シンプルに焼き加減と塩コショウだけで勝負したのは正解だった。マデラさんに出しても通用するんじゃないかって思ったくらい。それとも楽しい場面だったからあんなにおいしく感じたのかな?


 みんながみんなめっちゃ食うものだから料理の減りが半端なかった。あいつら冒険者よりもガッツリ食べるんだもん。酔っぱらいがいないだけはるかにマシだけど。あいつら暴れると宥めるのが面倒なんだよね。


 しょうがないから追加料理を作りにクラスの厨房に。みんなが食ってる中一人フライパンを振うのはなかなかきつい。汗だくもそうだし作業量がヤバい。なまじっか俺の料理がうますぎるせいで代役もいない。


 でもでもでもでも! 見かねたロザリィちゃんとステラ先生がずっとそばで『あーん♪』ってやってくれたのぉぉぉぉぉ!


 もうね、マジね、天国過ぎて意識が飛びそうなくらいだった! 肉も魚も全部全部あーんってやってくれたの! 恥かしそうに照れ笑いするロザリィちゃんと余裕がある風に強がって見せるステラ先生がめっっっっっちゃプリティ! 恋人&新妻過ぎて俺もうどうにかしちゃいそう!


 俺、この学校卒業したらロザリィちゃんとステラ先生と一緒に宿屋を開くんだ……!


 まだまだ書き足りないけど、日記が長くなりすぎるのでこの辺にしておこう。ちょっと言葉では表せないくらい今日は楽しかった。ロザリィちゃんもステラ先生も超キュートでまた別の素晴らしい一面が見えた。この日記を読み返せば、今日の気持ちを思い出せるものなのかな?


 ……今思ったけど、期末の打ち上げはもっと盛大にしないといけないんじゃね?


 一応書いておく。クラスルームはいま結構悲惨だ。食べかすなんかがめっちゃ落ちているし、換気も出来ていない。マデラさんがみたら発狂してあたりかまわず雷を落とすレベル。激昂の竜王も腹を見せて媚びを売るくらいヤバい。


 明日の朝、時間があったら掃除しておこう。ゲ○がないから楽なはずだ。俺は寝起きに床一面に広がる○ロの海を雑巾がけさせられたことだってあるのだ。この程度で根を上げるわけにはいかない。


 気持ちよさそうに大きなイビキをかく親友の鼻の穴に、感謝と友情を込めてなぜかフードに入っていたフライドポテトを詰め込んだ。おやすみなさい。


※燃えるゴミ。魔法廃棄物はまた今度。揚げ物はもっと多めでもよかった。フライドポテトとか特に。主食系は最後ちょっと余りがちだったから、次はそのへんをいくらか加減してもだいじょぶそう。あと飲み物のバリエーションがもっとあるといい。次回はその辺気を付けよう。

書き手の彼が後半に汚い表現を使っていたので一部を伏字としました。

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