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352日目 付き合ってくれてありがとう! (名探偵ステラママ)

352日目


 昨日は変な事に巻き込んで本当にごめんなさい。言い訳みたいだけど、もう頼れるのはみんなしか思いつかなくって、気づいたらここに来ちゃったの。


 でも、誰でもよかったってわけじゃないよ? これ以上はちょっと恥ずかしいので、ここまでにしておきます。


 わざわざ付き合ってくれて、本当にありがとう!




 これを書いているのは夜ね。本当はいつも通り朝の一言を書きたかったんだけど、ステラ先生に『あ、あとにしようよ!』って言われちゃったんだよ。


 起きたのはいつもと同じくらい。今日はギルが部屋にいなかったため、いつになくすっきりとした心地よい目覚め。どことなくステラ先生の匂いもして、まさに幸福の絶頂って感じ。


 で、気づく。俺、椅子に座って机の上につっぷして寝ていたはずなのに、なんでか普通にベッドで寝ていた。『あ、おはよ?』って、俺の椅子に座ったステラ先生(すでに身支度を整えていた)の可愛いお顔を朝から見られて超ラッキー。


 『ごめんね、昨日そのまま寝ちゃったみたいで……』ってしゅんとするステラ先生。どうやら早朝……というか真夜中に目覚め、自分だけがベッドで寝ていることに気づいてだいぶ焦ったらしい。んで、慌てて俺をベッドに寝かせたそうな。


 ……今だからこそ思うけど、その後先生はどうしたんだろう? 俺が起きた時間だって普通の人ならまだ寝ている時間だし、まさかずっと起きていたのだろうか?


 ともあれ、いつも通り日記に一言を書こうとしたところ、上述の通り止められる。おおかた、また読んでいたのだろうとあたりを付けた。どうせいまさらと言うか、ステラ先生なら読まれても問題ないしね。


 『こんなに早くに、やっぱりお仕事?』と聞かれる。『宿屋ですから』と答えた。『ちょっと見学してもいいかな?』とステラ先生は仕事に興味を示したので、そういうことに。


 とりあえず、マデラさんの元へと赴く。ステラ先生、『昨日は本当にご迷惑をおかけしまして……!』と頭を下げた。マデラさん、いつもより高い声で『いいえ! こちらこそ愚息がお世話になりまして……! それより、まだ終わってないんですから、最後まで気を抜かないように!』って笑顔で挨拶していた。


 なんでマデラさん、先生と話す時だけワンオクターブ声が高くなるんだろう。いつもはもっとドスが効いているというか、王者の風格が漂っているのに。


 んで、お仕事風景を見せつける。アルテアちゃんとのお風呂掃除と、ロザリィちゃんとの朝餉の下ごしらえと、パレッタちゃん&ミーシャちゃんの洗濯ものね。先生、『みんなお手伝いしてるの!? えらいなぁ……!』って目を輝かせていたよ。


 書くまでもないけど、男連中はぐっすりすやすや。いや、リアが『なんかあのお部屋、うめき声とすごく大きなイビキが聞こえるの……!』って震えていたことから、みんなギルのイビキでダウンしていたんだろう。


 気絶だけで済むとか、みんな成長したと実感せざるを得ない。あと、白目をむいて泡を吹いていたので、優しい俺は瞼をすっと閉ざしてやりつつ、口周りを拭いてやった。


 前々から思っていたけど、やっぱ魔系って口の締まりが悪いやつ多くね?


 そんなこんなをしているうちに朝餉の時間に。お義父さん&お義母さんもやってきた。『焼き立てパンはおかわり自由ですよ!』と殊更に明るい声で接客する。『まぁ、豪華な朝ごはんね!』、『毎日こんないいものを食べられるのか……!』と二人ともご満悦。


 もちろん、ギルは『うめえうめえ!』ってジャガイモを食べていた。『なんか、すっごく久しぶりな感じ!』とステラ先生もにっこにこ。


 ほかの男連中? 食欲がないのか、ミルクだけだったよ。


 午前中は一応普通に仕事をこなす。ステラ先生はなにやらお義父さんたちとお話をしていた。正直非常に内容が気になったけど、仕事中に聞き耳立てるわけにもいかない。


 一応、ちゃっぴぃが俺の意思を汲み、さりげない動作で先生の膝の上にすっぽりと収まってぎゅってしてもらっていたけど、あいにくあいつは人語をしゃべることができない。


 が、『きゅーっ!』って頭を撫でろと言わんばかりに甘えてきたので、とりあえず撫でておいた。


 んで、お昼を済ませた後くらいにお義父さんとお義母さんは帰ることに。もっとゆっくりしていけばいいのにと思ったけど、『気持ちはうれしいが、仕事もあるのでね』とお義父さんが言うのだからしょうがない。

 

 そしてちょっとだけ衝撃の事実が。帰り際、お義母さんが『ねぇ、ちょっと?』って俺を手招きしたの。何かと思って耳を貸したら、『──あの子のワガママに付き合ってくれて、本当にありがとうね!』って囁かれた。


 バレてた。表情が強張ったのはしょうがないよね。


 『何の話でしょう?』と、努めて平静を保って聞き返す。お義母さん、『あっちの女の子と、あなたのそのイヤリングは隠しておくべきだったわね。……女の子の表情ってねぇ、同じ女ならよくわかるものなのよ?』ってちょいちょいととある方向を指さす。


 そこにいたのはロザリィちゃん。言われてみれば、クリスマスの時にもらった恋人の証のイヤリング、つけっぱなしだった。


 でも、表情なんかはいつもと同じように見えたんだけど、もしかして男じゃ気付かないくらいに微妙な変化を女の人は感じ取れるのだろうか?


 『これだけ先生想いの生徒に囲まれているんだもの、しばらくお見合いなんてする必要ないわね! あの人には内緒にしておくから安心して!』と、お義母さんは俺とステラ先生のケツを叩いてさっそうと出ていく。正直生きた心地がしなかった。


 ともあれ、これでなんとか危機は去った。『疲れたぁ……!』ってみんなが息をついたのは書くまでもない。『お義母さんにはバレてましたよ』って言った瞬間のステラ先生の表情、めっちゃプリティだった。


 落ち着いたところで事のあらましを聞く。最近になってようやく休暇を取ることができたステラ先生は、いつも通り実家に帰省したらしい。が、そこでやっぱり例のお見合い問題が勃発し、ついつい『彼氏がいるからする必要ないもん!』と言ってしまったそうな。


 もちろん、(未来の彼氏は省くとして)ステラ先生に彼氏なんているはずがない。追い詰められたステラ先生は、自身のギャンブラーとしての豪運を信じ、両親を連れてこの宿へとやってきたわけだ。


 『みんながここにいるって話だったし、みんなならとっさに話を合わせてくれるかなって思って……』とのこと。


 ちなみに、あの時恋人役に選ばれたのは俺だったけど、先生的にはジオルドかクーラスに頼む予定だったそうな。あいつらの明日の晩飯にヴィヴィディナをぶち込んでおこうと思う。


 理由を聞いたところ、『──くんにはロザリィちゃんがいるし、フィルラドくんにはアルテアちゃんがいるし、その、問題なさそうなのはジオルドくんとクーラスくんかなって』とのこと。


 ただ、あの時二人はだらけながらカードゲームをしており、とても恋人で通せるような状態ではなかった。逆に俺は仕事中でキリッ! ってしていたため、話せばわかると思ってとっさに俺にしたのだとか。


 『あのとき……あのとき腑抜けていなければ……!』、『なんて……なんて馬鹿なことを俺は……!』ってクーラスとジオルドは血涙を流していた。


 なお、冒険者連中の男はそれなりの有名人なため、面が割れる可能性を考慮して最初から期待していなかったとか。『ちっくしょぉぉぉ!』、『あんまりじゃぁぁぁ!』ってテッドとルフ老が嘆いていた。こいつら終わってんな。


 そうそう、アルテアちゃんが『学校の先生で誰かいい人いなかったんですか?』って聞いたんだけど、『大抵の人は奥さんがいらっしゃるから……それに、独身のグレイベル先生はピアナ先生の関係でもうパパもママも知っていたの』とのこと。


 ちなみに、『キート先生はまだ若くて独身じゃない?』ってパレッタちゃんが聞いたんだけど、『キート先生、フィアンセがいるよ?』ってステラ先生は答えた。キート先生のこういう話ってなんかちょっと意外。


 当然のごとく、ミラジフの話はまるで出てこなかった。そもそもあれ、選択肢として機能していないしね。


 宴会して風呂入って夜の見回りして今に至る。だいぶはしょった感があるけど、なんか今日は疲れた。あ、ステラ先生は女子部屋で寝るらしい。今限定で俺も女子になりたい。


 部屋で思い出したけど、宴会の時、ステラ先生にちょいとお酒の入った所を見計らって、ルマルマ寮の俺とギルの部屋割りの関係についてちょっと聞いてみた。


 ほら、あいつの寄生魔法普通じゃないから、あえて吸収魔法の俺とペアにさせたんじゃないかってあれね。


 が、『──くんとギルくんがルマルマになったのは確かに意図的なものだけど、部屋割りはけっこうランダムだよ~? その程度の問題を抱えている子は少なくないし、魔系ならこの程度自分たちで対処できるものという前提で話を進めているからね~! もちろん、なにかあったら先生が対処できるようにしている……それこそ先生がルマルマの担任で、二人がルマルマになった意味なんだよ~!』って教えてくれた。


 いろいろ考えたけど、やっぱ考え過ぎだったらしい。自分の慎重な性格が時折恨めしいぜ。


 寝る間際、日記を開いて冒頭の文章を見てちょっとドキッとする。特に『これ以上はちょっと恥ずかしいので~』の件が最高。なんだろうこのドキドキ。なんかちょっとクセになりそう。


 寝よう。ギルは今日もぐっすりと大きなイビキをかいている。今日はちょっぴりのジョークとして疲労の芽を鼻に詰めてみた。グッナイ。

20160320 誤字修正

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