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345日目 ロザリィちゃんの至上のお昼寝(必要な物:ぬいぐるみ)

345日目


 やつの鼻から一輪の小さな白い花が。可憐だった。 


 ギルを起こした後は厨房へ。いつも通り今日の方針を聞いたところ、『一応は休みにしておこうかね』とマデラさんは言った。言われてみれば今日は(宿屋にはほぼ関係ない)休日だった。


 あと、花をどうしようか聞いたところ、『とりあえず机の上に活けときな』と言われたのでその通りにしておく。出どころさえ目をつむれば、実に素晴らしいものであったことをここに記しておこう。


 なんだかんだで朝食はみんなでとる。別に気にしなくてもいいのに、アルテアちゃんは『なぁ、本当に掃除しなくていいのか?』って何度も聞いてきた。どうやら、マデラさんが全部一人で仕事をすることに心を痛めているらしい。


 もちろん、全く持って心配する必要はない。マデラさんに『どうせもう終わっているんでしょ?』と声をかけたところ、『まあね』とだけ返された。


 マデラさん、杖の一振りで仕事を終わらせられるからすごい。俺もいつかできるようになれるだろうか?


 午前中は思い思いに時間を過ごす。パレッタちゃんはナターシャ用の毒杯を作り、アルテアちゃんはフィルラド(とエッグ婦人とヒナたち)と一緒にお散歩しに行き、ミーシャちゃんは意味も無くマデラさんに抱き付いて遊んでいた。


 『おもしろい?』って聞いたところ、『すっごくふかふかなの!』との答えが。せっかくなのでギルにも『抱き付いてみるか?』と勧めたところ、あいつは真剣な表情で『……いや、今の俺じゃ持っていかれる。もっと鍛えてからじゃないと』って言っていた。


 何をそんなバカな、と思っていたところ、『ほぉ、それを見抜ける程度の実力はあるみたいだね?』ってマデラさんはギルの頭をポンポンして褒めていた。


 ……なんかちょっとイラッとしたけど、なんでだろう?


 午後の時間、衝撃の事実が判明。俺の枕と毛布、どうも見当たらないと思ったら、ロザリィちゃんが持っていたらしい。


 いや、見つけたのは本当に偶然だったんだけど、ロザリィちゃん、ちゃっぴぃにせがまれてお昼寝しようとしていたんだよね。で、ちゃっぴぃのやつ、『きゅーっ♪』っていつものお昼寝セットを用意しだしたんだけど、自分のぬいぐるみ、俺の夢魔のぬいぐるみ、そして俺の枕と毛布を持ってきたんだよ。


 ロザリィちゃん、俺に見つかって『べべべ、別に変な意味じゃないよ? ちょ、ちょっとたまたまそこにあったのを見つけただけなんだからっ!』って真っ赤になってた。それが嘘だってことくらい簡単にわかる。嘘つきロザリィちゃんもマジプリティ。


 どうやら、リアにクーラスの情報を教える見返りとして、ベッドメイキングの際に俺の枕と毛布をこっそり回収してもらったそうな。なにそれちょっと興奮する。


 『──くんが良い匂い過ぎるのがいけないんだもん!』ってロザリィちゃんは超真っ赤。俺の枕に顔を埋めて恥ずかしがる。もちろん、埋めながらもめっちゃすーはーすーはーくんかくんかしていた。


 当然のごとく、毛布も頭からかぶってすーはーすーはーくんかくんかしていた。ああもう、なんでロザリィちゃんってこうもかわいくて愛おしいんだろう?


 しかも、それだけじゃ終わらない。何を思ったかちゃっぴぃのやつ、『きゅ! きゅ!』って俺から拉致った夢魔のぬいぐるみをロザリィちゃんに押し付けたのだ。


 さすがのロザリィちゃんもこれには慌てる。『い、今はいいからっ!』って戻そうとしたけど、俺はすかさず『どういうことかな?』と問い詰めてみることにした。


 ロザリィちゃん、首筋まで真っ赤になりながら、『これが一番──くんの匂いがするんですぅ……!』って白状してくれた。自分じゃ気付かないけど、このぬいぐるみって小さいころからずっと俺が使っているし、俺の匂いが強く移っていても不思議じゃない。


 『気にしないでいいから、いつも通り使ってよ』と俺は甘くロザリィちゃんの耳元で囁く。ロザリィちゃん、『……ホントに?』と涙目&上目づかいで聞いてきた。あんなかわいい表情を見せられたら、マデラさんに喧嘩を売ることだってためらいなくできるよね、うん。


 そして、ロザリィちゃんはそれを使った。


 ぎゅーっ! って抱きしめて。ぬいぐるみの胸に鼻を押し付けて幸せそうにすーはーすーはーくんかくんかして。『うへへ……!』って笑いながら思いっきりほおずりなんかもしちゃった。


 んで、ぬいぐるみの腕にかぷって噛みついたの。その状態ですーはーすーはーくんかくんかしていたの。


 ちょっとびっくり。なんか、口の中からも匂いが広まってすごくイイんだとか。『そんなに好きなら、こっちで直接嗅げばいいのに』って進めたんだけど、『そ、それは恥ずかしいの! あと、こっちはこっちの良さがあるから!』って真っ赤になりながらすーはーすーはーくんかくんかしつつ教えてくれた。


 何だろうコレ。すっごくドキドキしてくる。ロザリィちゃんが俺の愛用のぬいぐるみをすーはーすーはーくんかくんかしているだけなのに、どうしてこうも心臓が高鳴るのだろう?


 どうやら、ロザリィちゃんの中での至上の就寝スタイルとは、俺の枕に頭を埋め、俺の毛布をすっぽりかぶり、そしてぬいぐるみを抱きしめ、時折それに甘噛みしながらすーはーすーはーくんかくんかすることらしい。


 ここまで愛してもらっているとか、もう本当にロザリィちゃんが愛おしくてたまらない。あ、お昼寝の前にはおやすみなさいのキスもしておいたよ。いつもと違って『うぅぅぅ……!』ってめっちゃ恥ずかしがるロザリィちゃんがエキセントリックプリティだった。


 ちなみに、ちゃっぴぃは俺たちが気づかない間に寝こけてしまっていた。ヨダレ癖が相変わらずだったことと、腹がまるだし(いつも全裸だけど)だったことをここに記しておく。


 宴会して風呂入って雑談して今に至る。宴会中、なぜかテッドやチットゥと言った一部冒険者にドン引きされたんだけど、いったいどうしてだろう? ミーシャちゃんは意味ありげに『むしろドン引きしないほうがオカシイの……』って言ってたけど、今日俺なんか変な事したっけ?


 あと、ロザリィちゃんもなんか周りからぎこちない対応をされていた。アレットなんかは『その自分を曲げないところ、きらいじゃないわ!』ってなんかすんげえ親近感を覚えていたようだけど。


 マデラさんも『まともそうに見えたけど……やっぱり似た者同士……いや、性癖は人それぞれだし、実害がないだけいい……のかねぇ?』ってため息をついていた。マジで何のことだかわからんけど、マデラさんもつかれているのだろうか?


 ギルは今日も大きなイビキをかいている。なんかイビキが聞こえることに安心する自分に気づいていやになった。とりあえず、夜の軽い掃除のときに見つけたテッドの足の爪でも詰めておこう。ゴミをちゃんとゴミ箱に入れられない大人がいることに悲しみと憤りを隠せない。みすやお。

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